桃から生まれる装置を作る
桃太郎。”桃”から生まれたという信じがたい生い立ちは、おそらく彼だけだろう。
生まれた時の衝撃はどのくらいだったのだろうか。そもそも大きい桃の時点で震えおののくかもしれない。IT技術が発達した現代なら、パカッと爽快に桃から生まれるシーンを再現できるんじゃないだろうか。
桃を作る
とりあえず桃を購入した。
約25cmの巨大スクイーズ。思ったよりでかいし、ふわふわパンケーキくらいやわらかい。ほぼ小学生のお尻である。しかも桃みたいな甘い匂いがするし。
このままずっと触っていたいくらい立派な桃だが、心を鬼にして半分に切る。おばあさんもきっとこんな気持ちだったのだろう。
中にはぎっしりスポンジが詰まっていた。これでもかと甘い匂いが部屋を充満し、まるで桃の中にいるような錯覚に陥いりそうになった。調子に乗って外側まで穴をあけてしまわないよう、まるで我が子を扱うかのごとく慎重にスポンジをちぎっていく。
調子に乗った。やってしまった。スポンジ千切りが快感で外側キワキワまで攻めたせいだ。もうお嫁にいかせてやれない。
また5000円で購入する気力もないくらい落ち込んだので、これまでのことを一旦忘れて、桃を作り直すことにした。
桃を作るパート2
3Dプリンタやレーザーカッターなどのハイテク機械もないので、スタイロフォームと紙粘土を削って作る。
出だしでスタイロフォームと発泡スチロールを間違えるという凡ミスをおかしたが、なんとか手に入った。
ここからひたすらスタイロフォームを削る日々が始まる。とにかく毎晩夜なべして桃を削っていた。カッターで削るのは意外と体力が必要で、何度も心が折れそうになった。深夜に響くモキュモキュ音はちょっとしたホラーになっていただろう。
だんだんサマになった。この時点ですでに10日ほど経っている。桃から生むために、ここまで日々を桃に侵されるとは思わなかった。
絵の具でピーチピンクに塗って、なんとかそれっぽいのができた!
桃を動かす
パカッと開閉する仕組みを作る。複雑な機構はお手上げなので、サーボモータを使ったシンプルな機構でどうにかしよう。
桃の両側にサーボモータを取り付ける。固定方法が分からなかったので、ホットボンドとガムテープで強行突破する。
格闘して2時間。ついに桃がパカパカするようになった!やったー!
桃太郎を桃から生む
まずはこの人がいないと始まらない。石粉粘土をこねくって桃太郎を作った。現代に合わせて引きこもりニート風(スウェット姿)にしてみた。もう鬼もいないので、ヒマで引きこもってしまったのだろう。
さっそく桃から生まれてもらおう。パッカーン
さすが元祖だ。しっくりくる。目の前にキビダンゴも置いてみた。何かを成し遂げてくれそうな勢いを感じる。
他のものも桃から生んでみよう
せっかくなので、他の動物も桃から生んでみる。桃太郎以外の生物が、初めて桃から生まれる奇跡の瞬間である。
ちょっと可愛くなりすぎてしまった。生命の神秘的なものを感じるかと思ったが、キュートすぎて感動が薄れてしまった。おそらく最初で最後であろう「桃ひよこ」が生まれた。
こんな使い方もできるんじゃないだろうか。冷蔵庫に入れておくと兄弟喧嘩になっちゃうプリン。桃に隠しておけば見つかることはないだろう。まさか桃の中にプリンがあるなんて思うまい。
もし万が一食べてしまったとしても大丈夫。桃に入れて謝れば、キュートな雰囲気でつい許してしまうだろう。
桃から生まれる装置を使うと、通常よりキュートさが増して場を和ますことが分かった。桃から生まれた桃太郎は、それはそれは可愛く育てられたのだろう。
今は大きい桃の置き場所に困っています。
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