冬の音食み
透明な繭玉を凍らせて、一面に敷き詰めたような景色だった。
フロントガラスの両傍に、ずっとずっと向こうまでまっさらな雪原が続く。その中をときどきぽつぽつと、丸屋根の倉庫や赤白の路肩標識が、視界をすべっては消えて行く。ハンドルの向こうの外気計をちらりと見ると、マイナス十七度の表示。だろうな、と思った。冷え込んだ日はなぜか、空気の見え方がいつもと違う。なんていうか、引き締まっていて蒼い。
ふと、耳がかすかな揺れを捉えた。ああそうか、この辺りはたしか。
直後、いきなり頭上に飛行機が現れた。近い。けれど妙だ。音が無い。
無音の飛行機はあっというまに遠去かって、くしゃみをしている間に消えた。きっとこういう朝だから、雪が音を食んだのだろう。
#日常感覚
「冬の音食み」
words & photo - @_sasabune