中秋の名月
9月29日。夜空を見上げる。真ん丸な月が夜を照らし、いつもより明るい闇に出会う。心なしか模様すらいつもよりはっきり見える気がする今日のそれは、「お月様」という呼び名がぴったりだ。
ついこの前夏が終わったところだと思っていたのに、気付けば空に広がる雲は完全に秋のものになっていた。そんな変化にも気付かなかったことに少し落胆しながらも、少し安心する。今気付けて良かった。せっかく今年は夏まで季節についていけていたのに、秋まで来てやられちゃったな。また置いてけぼりだ。まあそういうのが、秋という季節のような気もする。
「秋の夜長」という言葉がある。あまりその内容を意識して使ったことはないけれど、秋の夜に外に出てみると、それが理屈としてではなく感覚として分かってくる。この涼しくて心地の良い夜は、どこまでも続くような気がする。爽やかに響く虫の声、夏の間の暑苦しさなど消え去ったような過ごしやすさ。あ、そうだ。僕は夏を生き延びたんだ。
少し眺めるつもりがやっぱり写したくなってカメラを取ってくる。スマホというアイテムもあるし、最近はカメラを持ち出すタイミングも減ったけれど、相変わらず大切な場面ではカメラを構えたくなる自分に、まだ"自分"がいるのだなと安心する。そう、これでいい。好きなものを見て、好きなものを残して、持っておければ。そこに意味なんてなくても。
月を撮る度に思うのだけれど、全てのものが一番綺麗に写るレンズ「肉眼」の中でも、やっぱり月が何よりも綺麗だ。撮りたいもそうだけれど、より見続けていたいなと思う。残すより何より出会い続けていたい。できれば毎日見ていたい。
大した訳もなくどうしようもなく、月を愛している。
また来年も会おうね。
読んで下さってありがとうございました☽𓂃 𓈒𓏸◌
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