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Midnight Blues

彼女の写真を見つめながら、グラスに注いだウイスキーをゆっくりと飲み干す。氷が溶けるように、思い出も溶けていく。

コーヒーテーブルの上には、かつて彼女が残していった小さな写真立て。二人の笑顔が、今は苦い追憶でしかない。壁掛け時計は午前零時を指し、部屋全体が深い青色に染まっていく。

サックスの哀愁を帯びた音が、レコードプレーヤーから流れ出す。ジャズの旋律は、私の心の痛みそのものだった。メランコリックな音色が、失われた愛を追悼するかのように部屋に響く。

「最後の恋」と彼女は言っていた。私たちの関係の終わりに。別れの理由は、すれ違いと諦めと、愛が冷めていく儚さ。静かに、しかし確実に。

携帯の通知音。彼女からのメッセージかと思ったが、違う。空しいため息をつく。深夜、部屋に響くのは、サックスの音と、私の孤独な鼓動だけ。

雨は窓を叩き、夜の街は青い影に包まれている。失恋の痛みは、まるでこの雨のように絶え間なく降り続く。けれど、いつかは晴れる日が来るはずだ。

サックスの音が変わる。哀しみの中にも、希望の光が微かに輝いている。新しい朝が来る。新しい恋が待っているかもしれない。

午前零時。私は再び、グラスに氷を落とす。夜はまだ長い。

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