心失すとき(3)
警察が来た
病院以外で倒れて亡くなった場合
事件性を疑い、捜査が必要なのだと言う
『ご遺体を預からせてもらえますか』
聞けば捜査をして、母が家に帰れるのは翌日の日中もしくは夕方だという
『今日中に帰してください』
それは難しいと言う警察
そんな時間まで一人ぼっちにさせるのか?
寂しがり屋で、誰かといないと不安になる
一人をとにかく嫌がった母を
そんな時間まで晒されるのを
私は承諾することができなかった
『今日中に帰してもらえないなら連れて行くことをさせません』
警察相手に通るとも思わない言い分を
震えながら訴えた
あなたも人ならばわかるでしょう?
親がいるのならわかるでしょう?
警察の決まり通りにしなければいけないとしても
不可能ではないならそれをどうにかしようとは思ってもらえないんですか?
覚えてはいないが、もっと色んなことを訴えたように思う
担当の警察の人はどこかと連絡をとって戻ってきた
『わかりました。早急に始めさせてもらい、終わり次第連絡させてもらいます。夜中になる可能性がありますが夜中でもかまいませんか』
もちろんすぐに連絡がほしいと伝え
母を見送った
私と妹には子供がいる
私たちが仕事をしているとき
面倒をみていてくれたのは母だ
子供たちにとって母の存在は大きい
その母が死んでしまったということを
受け入れることはできるのだろうか
子供たちに説明をしなくてはならない
子供の心を守ってあげなくてはいけない
学校から帰ってくる子供を迎えに校門前で待つ
明るく帰ってきた娘にそのままを伝えた
『は?何言ってんの?え、なになに?』
信じられないというように話してた娘も
話を聞いていくうちに事実として受け止めた
抱きしめて2人で泣いた
娘は母とよくケンカもしたが
母のことが大好きだった
母と映画に行ったり
母と買い物に行ったりしていた
きっと思い出が溢れて苦しくなり
苦しさを吐き出すように
声を上げて泣いたのだろう
もう2人で時間を過ごすことはないということを
深く理解したのだろう
ひとしきり泣いて
母を待つために実家へ向かう
*過去に書いたものになります
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