一般化固有空間への射影行列を用いた行列の指数関数を求め方
射影行列を用いた、行列の指数関数を求める方法を書いていきます。
行列の指数関数は求め方を書いているのが、基本的に対角行列 or Jordan標準形を用いた方法しか書いていないし、あったとしても求め方をわかりやい形で書いていないものが多いので。
とりあえず、求め方を示すと以下の通りです。
$${\alpha_iはi番目の固有値、m_iは\alpha_iの重複度とする。nは固有値の個数}$$
行列の固有方程式$${\Phi(x) = |xE -A|}$$を求める。 この時の式を$${\prod_{i=1}^n (x-\alpha_i)^{m_i}}$$とする。
$${\frac{1}{\Phi(x)}}$$を部分分数分解する。この時の式を、$${\sum_{i=1}^n \frac{f_i(x)}{(x-\alpha_i)^{m_i}}}$$とする。
$${P_i = f_i(A)\prod_{k\neq i}^n(A - \alpha_kE)}$$を求める。
$${e^{At} =\sum_{i=1}^n e^{\alpha_i t} \sum_{j = 0}^{m_i - 1}(A -\alpha_i E)^j P_i}$$となる
検算方法としては、t=0を代入したときは単位行列$${E}$$になることや、要素ごとに微分した行列が、$${Ae^{At}}$$となることを利用する(かなり面倒)などです。
例題
$$
A =\begin{pmatrix}
1 & 0 & 4 \\
2 & 4 & -3 \\
-2 & -1 & 6
\end{pmatrix}
$$
の$${e^{At}}$$を求めたいと思います。
$${\Phi(x) = (x - 3)^2(x-5)}$$となる。
$${\frac{1}{\Phi(x)} = \frac{x-1}{4(x-3)^2} + \frac{-1}{4(x-5)} よって、f_1(x) =\frac{x-1}{4},f_2(x) = -\frac{1}{4} となる。}$$
$$
P_1 = f_1(A)(A - 5E) = \frac{(A - E)(A - 5E)}{4}=\begin{pmatrix}
2 & 1 & -1 \\
1 & 0 & -1 \\
1 & 1 & 0
\end{pmatrix}\\
P_2 = f_2(A)(A - 3E)^2 = \frac{-(A - 3E)^2}{4}=\begin{pmatrix}
-1 & -1 & -1\\
1 & 1 & 1\\
-1 & -1 & 1
\end{pmatrix}
$$$$
\begin{array}{}
e^{At} &=& e^{3t}[E + (A - 3E)t]P_1 + e^{5t} *E *P_2\\ &=&
e^{3t}\begin{pmatrix}
2 & 1 & -1\\
1 & 0 & 1\\
1 & 1 & 0
\end{pmatrix}+te^{3t}\begin{pmatrix}
0 & 2 & 2\\
0 & -1 & -1\\
0 & 1 & 1
\end{pmatrix}
+e^{5t}\begin{pmatrix}
-1 & -1 & 1\\
1 & 1 & -1\\
-1 & -1 & 1
\end{pmatrix}
\end{array}
$$
答え
$$
\begin{pmatrix}
2e^{3t} - e^{5t} & (1+2t)e^{3t} - e^{5t} & (2t-1)e^{3t} + e^{5t} \\
e^{3t} + e^{5t} & -te^{3t} + e^{5t} & (1-t)e^{3t} - e^{5t} \\
e^{3t} - e^{5t} & (1+t)e^{3t}-e^{5t} & te^{3t}+e^{5t}
\end{pmatrix}
$$
証明(適当) 詳しくは、参考文献参照
$${P_i}$$はAの$${\alpha_i}$$に属する一般固有ベクトル空間への射影行列である。ここでは、$${j \ge m_i}$$の時、$${(A - \alpha_i E)^j P_i \bf x = 0}$$
であるので、
$$
\begin{array}{} e^{At} (P_i {\bf x} )&=& e^{\alpha_i tE} e^{t(A-\alpha_i E)}(P_i {\bf x})\\
&=& e^{\alpha_i t} \sum_{i=0}^{\infty} \frac{(tA - t\alpha_iE)^i}{i!} (P_i {\bf x})\\
&=& e^{\alpha_i t} \sum_{i=0}^{m_i -1} \frac{(A - \alpha_iE)^i t^i}{i!} (P_i {\bf x})
\end{array}
$$
ここで、$${{E = P_1 + … + P_n}}$$であるから、$${{\bf x} = P_1 {\bf x}+… + P_n {\bf x}}$$となり、
$$
\begin{array}{}
e^{At} {\bf x} &=& \sum_{i=1}^n e^{At}P_i {\bf x}\\
&=& \sum_{i=1}^n e^{\alpha_i t}\sum_{j=0}^{m_i - 1} \frac{(tA - t\alpha_iE)^j}{j!}P_i {\bf x}
\end{array}
$$
参考文献
ジョルダン標準形 韓太舜 伊理正夫著 東京大学出版会 140p
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