試作1 無題

見回り中に梟を見つけた。持ち帰って世話をすることにする。


今日は何度かサーバーに異変があり、忙しかった。走り回っている間に一日が終わった。何もないのに、この世界は忙しい。


楽しいだけの人生なんてないから、楽しいだけの時間があれば心酔するのは避けらない。大賛成だ。


不安定な通信の中で不可解な現象が起きていた。記憶が混線しているというか。複数人の走馬灯が流れたような状況だ。こちらに実害はないが、調べておく必要がある。


梟は数日後に死んでしまった。サーバー上の設定で生き物が生きていけないとあるからだろうか。摂理というものが誰かに定められたものなら、抗いたくもなる。


エンドロールが流れたときに自分が何者であるかが分かると思う。そもそもにエンドロールは私達の目にするものではなく、異次元の誰かが目の当たりにするのかもしれないけど。


異常気象の為、この部屋を諦めなくてはならなくなった。荷物をまとめる必要はないが、ずっと不調の冷凍庫に入れていた梟だけは何処かに移動させなくてはならなかった。水の流れを避けて辿り着いた山頂からはくすんだ太陽が見えた。余り好きな場所ではない。でも、今この瞬間、彼を埋める場所は此処にしかなかった。


水が引いていく。すべてを飲み込んだあと、好きな物だけ持って去っていった。好まれなかった物たちは見る影もなく。ただガラクタとして散乱している。まだ降りるのは危険だろうか。

眠りたいな

梟の眠る場所で、私はそう呟いた。

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