「お久しぶりですね」
「お久しぶりですね」と、言われた。
普通だと思われるだろう。
だが、こう言われたらどうだろうか。
「お久しぶりですね」と、ミスドで、店員に言われた。
なんのことか。
そう思われたのではないか。
私は、航空大学校という、パイロットの訓練学校に合格することを目指し、受験勉強に取り組んできた。
大学1年生と大学2年生は、走っているか、勉強しているか、食べているか、寝ているか、基本このどれかだったと思う。
受験生にとって、カフェインは、生命線だ。
朝起きて、冷蔵庫からモンスターを取り出し、一気に飲む。これがルーティンになるほど、異常な生活を送っていた。
あの頃があったから今があるのだが、振り返ると、なんだか恐ろしくなる。
当時、私が愛用していたのが、ミスタードーナツだった。
お目当ては、コーヒーの飲み放題である。
ミスドでは、ブレンドコーヒーとカフェオレだったと思うが、温かい飲み物はおかわりが自由なのだ。
いくらでも、カフェインを取ることができる。
10杯飲むことも、珍しくなかった。
また、カフェで勉強する機会が多かった私にとって、「居座れる」ということは、それだけで大きな価値だった。
ミスドのあの赤いマグカップは、「私はまだここにいていい」という、いわばチケットのようなものだ。
もちろん大混雑になれば、遠慮して店を出ることはあるが、基本的には、延々とミスドで勉強する日々だった。
いつも、同じ店舗で勉強していた。
長い時は1日8時間くらい、週6日はいたのではないか。
どの人が社員で、どの人がバイトか、その関係性さえもわかるようになってきた。
しかし、スタバとは違い、個人的な会話をする雰囲気ではないのが、ミスドである。
お互いに「あの人だ」と思いつつ、純粋な客として、ひたすら通い詰めていた。
試験前日も、最終確認は、ミスドでコーヒーをすすりながら行った。
そんな、思い出の店が、ミスドである。
さて。その試験から1年以上が経過した。
その店舗の前を、久しぶりに通りかかった。
今日の午後は、読書をしようと決めていた。
しばらく、ミスドのコーヒーを飲んでいない。飲むことに決めた。
レジに向かう。
態度の悪い社員さんだ。当時からいた。完全なる流れ作業で処理するのが特徴だ。
特に気にすることなく、商品を受け取る。
コーヒーをすすりながら、読書を続ける。
3分の2ほど飲み終えた時に、ある店員さんが近くに寄って来た。
少し歳を召した女性店員、少し白髪まじりで、学校の先生にいそうな雰囲気だ。いつも優しく接客をする方だ。
「コーヒーのおかわり、いかがですか?」
イヤホンを外して、応じる。
「あ、お願いします!」
次の瞬間、驚くことがおきた。
こう言われたのである。
「お久しぶりですね」
びっくりして、声が出なくなった。
「覚えていらっしゃったんですね」
などという、意味のわからない返しをしてしまった。
その店員さんは、笑顔で応えてくれた。
気の利いたことは言えなかったが、素敵な瞬間だった。
1年以上経っていても、客の顔を覚えているのは、実際すごい。
それだけ自分が特徴的なのかもしれないが、それにしても、すごい。
高級レストランなどではあるかもしれないが、ミスドである。
なんだか、逆にとても嬉しくなった。
しかも、とっさに反応できず、余計なことを言わずに済んだのも、むしろ良かったかもしれない。ベラベラと語っても仕方ない。
今自分が、元気に生きていることに対し、「お久しぶりですね」と言ってくれたことが嬉しかった。
なんか、こういう出会いって素晴らしい。
生きるエネルギーになる。
また次に会った時に、元気に挨拶できるよう、必死に生きたいと思う。
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10月19日(月)
○掃除おバイト、色々と思うところがあった
○本を読めた!
○散髪できた!すっきり
○部活のタスクかなり進めた!
●英語は結局手付かず…
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では、また。
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