アイヌ語輪読会レポ #10
こんにちは、北大言語学サークルのfugashiです。本記事は、サークルで行われたアイヌ語輪読会第7回のレポとなっております。過去のレポについてはこちらを参照してください。
第10回では、アイヌ語文法の基礎第28課「抱合」、第29課「分離動詞」、第30課「使役」を扱いました。
学習レポ
第28課 「抱合」
アイヌ語は、抱合を行う言語の中でも比較的珍しく、自動詞主語や他動詞主語の抱合を行う言語です。しかし、全ての自動詞主語や他動詞主語が抱合の対象となるわけではなく、佐藤(2008)はその条件として、動作主性の低さ、特定性の低さを挙げています。この、動作主性が低くて特定性が低い項ほど抱合されやすい、という条件は、通言語的に見られる傾向のようです(Bugaeva, 2014)。また、他動詞主語が抱合された際に、他動詞目的語だったものが主格で標示される「昇格」という現象についても扱いました。
第29課 「分離動詞」
アイヌ語には、「第三類の動詞」と呼ばれてきた、意味的には一語のようなまとまりを示しながら文法的には二語として現れる形式があります。これらの形式について、その構成要素と人称変化や膠着が起こった際の変化に着目して学びました。
第30課 「使役」
アイヌ語の使役は、動詞に使役接辞をつけることで実現され、また、許可と強制のいずれの意味についても用いることが可能です。さらに、使役性が低く、単に他動詞化であると解釈できるような場合も存在します。ここでは、それぞれの使役接辞とそのつく動詞の分類についても学びました。
参考文献
佐藤 知己. 『アイヌ語文法の基礎』, 大学書林 (2008).
小林 美紀. 「アイヌ語の名詞抱合」, 人文社会科学研究, 17 (2008).
Anna Bugaeva.「北海道南部のアイヌ語」, 早稲田大学高等研究所紀要, 6 (2014).
佐藤 知己. 「アイヌ語千歳方言の「第三類の動詞」の構造と機能」, 北海道立アイヌ⺠族文化研究所紀要, 7 (2001).