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△自然に学ぶ〜 #旅する日本語 に寄せて〜

 下界はなんて雑多なのだろう。
 家族で上高地に泊まったのち、一日ぶりに車の往来を見た感想だ。日本アルプスの山々が連なる上高地は、想像を絶する自然美を魅せてくれた。「綺麗」という言葉と「わあ」という感嘆詞以外に、何を以てすればあの感動を言い表せるのだろうか。ただその二語だけが、何度も口をついて出た。
 旅を終えて、母は言った。「あの自然に人間が踏み入ってはいけなかった」と。開拓地に住む人間は、美を求めて自然界を彷徨う。しかしいくら美しくとも、そこには観光のための木道や看板が打ちつけられ、マイカー規制があろうとも、タクシーやバスは乗り入れる。
 自然界は、「すばらしい」と讃えられながらも、確実に拓かれていく。紛れもなく、人間の手による環境汚染の第一歩だ。この矛盾に、ある種の必然性を感じる私もまた、哀しいかな、開拓地の人間なのである。

数年前の今ごろ、避暑を兼ねて計画した家族旅行のあとに書いたもの。今回の公開に合わせ、当時を振り返りながら加筆修正しました。
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七志野さんかく
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