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憂いいろ

かたちのない恋心も忘れて
君のいる街並みも薄らいでいく
君を縁取る夏の風も匂いも
君が一緒に連れ去ってしまったんだね

あの日の雲はどんなんだっけ
日が沈んだ空の匂いはどうだっけ
君の目は何色だっけ


憂いに眩んだ
花火に見惚れた
夏の夜に君が去った
そのあとの花火は水の中にいるようだった



空に沈んで
涙色にすら気付けない
空に眩んで
「また明日」なんていなくなる

君の声ってどんなんだっけ
「世界でいちばん好き」なんて簡単に言ったくせに
いつのまにか思い出せないようになった

記憶を辿らせて
君の声を追いかけた


憂いに消えた
思い出も記憶も
夏の夜に君が去ったことだけが君の残り香だ


また同じ花火に見惚れる
君がいない夏の夜に
未練なんてひとつもない
ただ君の存在が消えないだけだ

憂いに消えた
思い出も記憶も
夏の夜に君が去ったことだけが君の残り香だ

憂いに眩んだ
花火に見惚れた
見惚れた花火は水の中にいるようだ