【エッセイ】ドイツで学んだ冬の過ごし方
ドイツの冬は日本と比べると本当に長い。
夜10時を過ぎてもまだ明るかった6月。
外は緑がいっぱいで、歌どりたちが奏でる合唱に耳を澄ませながら、マロニエの下を散歩する。ピンクや白の花がひらひらと落ちてきて、命の息吹を感じる。
爽やかな風が吹いてはいるのだけども、ときどきとても暑くなって、エアコンもないので逃げ場所もなくなる7月。
そしてバカンスの季節が終わったかと思うと、突然、秋がやってくる8月末。そこからは、日が沈む時間もだんだんと早くなっていき、
特に、北ドイツのハンブルクは、ずっと霧雨がふったり、
強風がふいたりする。
それでも、9月、10月、11月に、だんだんと黄色やオレンジ色に紅葉した街路樹によって色づいていく街はすごく美しい。雨でぬれた道を色とりどりの葉っぱが埋め尽くし、空からも黄色の嵐のように葉が落ちてくる。そんな瞬間にはどうしても目を奪われてしまう。
日の長さは日に日に短くなっていく。
寒さもまし、風も冷え込んでいく。色鮮やかだった葉も落ち切って、街はどんよりと暗くなっていく。そんななか、クリスマスの飾りつけが始まる11月末。今度は、街がイルミネーションで包まれ、優しいオレンジ色のライトに染まる。そうやって、最も日が短くなる期間をやり過ごす。
クリスマス休暇が終わってからは、あとは、ひたすら春がくるのを待つ。
春はなかなかやってきてはくれない。3月だって、日は徐々に長くなっていくものの、寒さは健在。ダウンを着ているのに、桜の花を眺めるという変な季節だ。だからこそ、時々みせる晴れ間は最高のご褒美となる。
こんなに長い長い、ドイツの冬でかかせないのが、キャンドルだと思う。
16時には真っ暗になってしまう。そんな冬に、家や店のいたるところでキャンドルの火がともされる。ゆらゆらと揺れる優しい火の光は、心を落ち着かせてくれる。そんな不思議な魅力がある。そしてキャンドルの火のなか、ジャズをかけて、あたたかいココアやハーブティーを飲みながら、読書にふける。こんなに贅沢な時間はない。
雪のなかだって、ちゃんと重ね着をして、ニット帽をかぶり、あったかいブーツをはけばへっちゃらだ。夜になって雪道を街灯が照らしだし、ほんのり反射して朧気な感じで明るくなったなか、孤高を貫くように月が湖のうえに顔を出す。それを眺めながら、走るのもすごく好きだった。澄んだ空気は、肌を刺すけれど、頭がさえていくのが分かる。
1年目の冬は、過ごし方が分からなくて、ただただ早く沈んでいく太陽と寒くてどんよりとした曇り空と霧雨が続く冬に嫌気がさしていた。でも二度目の冬は、冬なりの楽しみ方や美しさに気づき、十分に楽しむことができたし、なんなら、「夏よりも冬が好きかも」と個人的には思ったり。これを言うと、ドイツ人にですら、「あなたは変わってるわね」って言われてしまうんだけれど。そんなときに、説明をする。「あなたたちが普通に行っている冬の過ごし方や文化が私にはとても新鮮だったし、心地よかった」と。それでもドイツ人は訝し気な顔をして私を見つめていた。
日本に帰ってきてからも、そこで得た経験を無駄にしたくなくて、クリスマスマルクトで買ったシュテルネランプ(星の形をしたランプ)を飾り付けて、アロマキャンドルを灯し、ハーブティーを飲んで一息する。
リラックスすると、自然と、さぁ、仕事するぞ!っと思える。
今日のように薄暗い空の、雨が降る日には、ぜひ昼からでもいいのでキャンドルを灯してみてください。癒しの時間になること間違いなし!
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