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himigraph
夏の戯れ
ニューヘブンって町の隣には
人々が楽園だと信じてる町がある
みんなこぞって電車で乗り込んで
海を目指すんだ
そこには砂浜はなくて
あるのは丸い石ころ
それでも
酒と海があれば
パラダイス
白い桟橋を渡っていけば
恋人たちはベンチに腰掛け
愛を語りあう
潮風ではげた水色の手すりの塗装のように
ひと夏の恋も
すぐにさび付いて剥げていく
ウミネコの鳴き声と
ローラーコースターに叫ぶ人の声の二重奏は
騒がしく
目の前の無人のメリーゴーランドの調べと
不協和音を起こし
人々は地響きとともに浜辺で踊り狂う
日が沈み
ピンクと紫のネオンに照らされた
トンネルを抜ければ
1823年
怪しげなタージマハルがお目見えだ
虚構が入り混じった場末のこの町で
人々は
水と戯れ
太陽に目をくらませ
酒に酔い
最後の夏に別れを告げる
お祭りのあとの秋風は
一層冷たくて
夢から覚めた人々は
また電車に乗って日常へと帰っていく