ユーザーセグメントからニーズを抽出し、ゲームの新機能を検討するには
株式会社リーン・ニシカタの西方智晃(にしかたともあき)と申します。
先日、「ゲーム内のユーザーの行動分析をする方法」というnoteを書かせていただきました。エンゲージメントマトリクスを活用し、ユーザーの認知と熱量を可視化する方法をご説明させていただきました。
https://note.com/_nishikata/n/n1f0a93e08f0b
今回のnoteでは、前回のユーザーの行動分析の結果をもとに各セグメントのニーズを理解し、新機能の仕様を決定するまでのフローについて解説していきます。
前提条件
今回は以下のようなケースを想定しています。
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前提:
・もともと1パーティ = 5人のキャラクターで構成されるゲーム
・SSR(スーパースペシャルレア)の種類も増え、ユーザーのパーティ編成も充足してきた
新機能の仕様・ねらい:
・SSR3パーティ分(5×3=計15キャラ)を使って戦うバトル追加する
・これまでユーザーが育成したSSRの活躍の場をつくりたい
・各セグメントのSSR所持数から、新機能の需要度を探りたい
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新機能を実装する際には、この機能が実際に実装されるとユーザーはどういう気持ちになるのかをセグメントの考え方を使って定量的に判断していくことになります。
ユーザーをセグメントにわけてニーズを把握
まず、全体のKPIとしてSSRキャラ所持数・初期レベル上限・レベル上限MAXを見ることで、ユーザーのキャラの育成深度を俯瞰できます。
全体平均でSSRキャラをひとりあたり36.17人持ってるので、SSRを15人使うゲームを提供してもみんな遊べそうだ、という想定をすることができます。また、初期レベルの平均が8.56なので、最大レベルが仮に50だとしてもまだ36人全員を育成し切っているわけではない、ということもわかります。さらに、レベル上限MAXまで達している数が1なのでほとんどレベル上限を解放するまでは至っていないということもいえそうです。
つまり、SSRをたくさん持ってはいるが、育成深度には伸びしろがありそうだということがこのゲームの全体傾向として言えます。
ただし、これだけだと少し落とし穴があるので、セグメントに分解して見ていきましょう。
今回の新しい仕組みでは、キャラクターを15人使います。現時点でどういう人たちがこの機能を遊べるかというと、SSRキャラ所持数の平均値を見ます。
セグメントDに関しては、SSRキャラの所持数が11.28と15人を下回っており、セグメントD以下のユーザーは今回の新機能をリリースしたとしても、遊ぶことはできません。ただ一方で、セグメントDに限ってはあと4人SSRを集めれば参加できるので、そういったニーズを生み出すことができるかも知れない、とも考えられます。
一方で、セグメントBやCのSSR平均所持数を見ると、18.34と16.08であり、このセグメントの人たちは今持っているSSRをフルに使うことができ、まだ育成の伸びしろもあるので、今回の機能開発でよりアクティブ化できる可能性があります。
さらにセグメントSやAを見ると、平均のSSR所持数が30.32や22.58と、15の枠に対して余るぐらいSSRを持っています。ゲームではよくありますが、15人の枠に対してどんなSSRでも15人だけ持っていればいいというわけではなく、その15人の中でもいろいろな役割があり、役割に応じて15人の内訳を入れ替えるニーズを喚起できる可能性もあります。
なので、今回の新機能では、例えば15人中10人ぐらいはこの属性のSSRを使った方が良い、といったことがあってもセグメントA以上のユーザーは割と対応できそうです。一方で、セグメントB以下の人たちに関しては必要なSSRキャラ数のギリギリしか持っていないので、そういったギミックが求められると対応ができなくなってしまいます。
以上から、今回の新機能が一番刺さりそうなのはSやAの人たちになりそうですが、本当にそれでいいのか?はゲーム全体のバランスを見ながら考える必要があります。
主要KPIと照らし合わせてゲームバランスを調整する
ここで他のnoteで紹介した、主要KPIに立ち戻ってみると、セグメントSSSやSSの人たちは、ほとんどのユーザーが課金をしていて、MARPUも高いので、今回の機能追加がそこまで売上に寄与することはなさそうです。
一方で、セグメントSやAの人たちはちょうど課金率が半分を切っており、この層に向けた施策を行うことで売上に寄与しそうです。
セグメントBやCのMAUのボリュームゾーンを占める方々にとっては、今回の新機能には参加はできるが、使用するSSR内において特別な組み合わせ等を要求するような複雑なギミックを入れてしまうと、このセグメントが離脱する要因にもなりかねません。
このように、新機能の追加の際には、一番影響を与えそうなセグメントに対してどのようなポジティブな影響を与えるかだけではなく、一番ユーザー数が多いセグメントに対してネガティブな影響が出そうかもあわせて検討し、新機能のバランス調整やルール設定を行う必要があります。
例えば、ゲーム自体に「上級」「中級」「初級」などの難易度を設け、「初級」であれば10キャラ(5キャラ*2パーティ)で参加可能にする、「上級」であれば敵に対して有利な属性でパーティを組む必要がある(SSRのキャラの選択が必要になる)といったルールを検討することができそうです。
このような判断の根拠もユーザセグメントをわけることで得ることができるので、データアナリストとして積極的に示唆を出していきたいポイントであると言えるでしょう。
今回は、ユーザーセグメントからニーズを抽出し、新機能・追加仕様を検討するまでの流れをお伝えしました。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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