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ゲーム分析において最も大切なユーザーセグメントを理解する方法

株式会社リーン・ニシカタの西方智晃(にしかたともあき)と申します。

先日、データアナリティクスの観点からゲーム分析がおもしろい3つの理由というnoteを書かせていただきました。

本noteでは、スマホゲーム分析の特徴とユーザーセグメントの大切さをお伝えした上で、実際のゲーム分析の運用事例を解説していきたいと思います。

ゲーム分析の特徴

ゲーム分析の運用事例を解説する前に、まずはゲーム分析の特徴を他業界と比較しながら説明します。

比較対象としてよく上げられるのは、「EC(ネット通販・ネットショップ)」やサブスク(サブスクリプション・月額課金・定額制で契約するサービス)です。

これらの産業は、コンバージョンが明確なことが特徴です。

例えば、ECであればどのようなECサイトであっても、ユーザーがカートに商品を追加することであったり、ユーザーがチェックアウト(商品購入を完了すること・支払いを完了させること)がコンバージョンであることは変わりありません。また、サブスクであれば、ユーザーが有料会員契約をすること、がコンバージョンです。どちらも明確なゴールがあり、わかりやすい指標を置いて追いかけるということが可能です。

こういった産業と比較した際に、ゲーム産業は必ずしもコンバージョンが1つに定まらない・コンバージョンが不明確という特徴があります。

1つのゲームタイトルをとってみても色々なユーザーがそれぞれの遊び方をおり、例えば他のユーザーとの競争が好きな人もいれば他のユーザーと協力してNPC(Non Player Character)を倒すことが好きな人がいる、そういった場合に両者にとってゲームをやる意義や楽しみ方は大きく異なります。この場合、1つのゲームタイトルに対して複数のコンバージョンを考える必要があります。ここが他の産業との大きな違いであり、ゲーム業界がデータアナリストにとって面白い理由であるといえるでしょう。

ゲーム分析において、この複雑なコンバージョンをうまく定義するために、まずはユーザーのセグメントを定義するといいですよというお話がこの後のメインテーマになります。この前提を踏まえた上で、ユーザーセグメントを用いたゲーム分析の運用事例について読んでもらえると嬉しいです。

ユーザーセグメントを定義しないと何が起きるか

ここでは、ゲームでよくあるアップデートである「報酬効率のアップ」を例に説明します。

あなたは、あるゲームタイトルを運用をしており、報酬効率をアップしてユーザーにより遊んでほしい、という意図をもって全員に同一のアップデートをしたとします。

しかし、同じアップデートをどう受け止めるかはユーザーによって異なります。

ヘビィユーザーにとってはその報酬の獲得効率のアップは物足りない・今よりもそのゲームを遊ぶ理由にならない、ミドルユーザーにとってはちょうど必要としていたアップデートで報酬を獲得するために運営の想定通りにゲームでより遊ぶようになる、ライトユーザーにとってはそもそもその報酬の獲得効率が上がっても何に使うかがわからないので変わらない。


同じアップデートを全員に実施した場合

このように、1つのアップデートをとってもユーザーのレスポンスや、アップデートを通じて喚起できる感情はさまざまです。

したがって、全員に対して同じ施策をするのではなく、このアイテムはミドルユーザーがよく実施するコンテンツ上で報酬として配布するなど、ターゲットを絞って施策を実行するのが理想です。

なので、ゲーム分析を進める際には、まずはここでいうヘビィユーザー、ミドルユーザー、ライトユーザーとはどのような人なのかを可視化し、各セグメントの特徴を理解することが必要になります。

ユーザーセグメントの特徴を理解するには

どのゲームタイトルを運用するにおいても、売上をMAU(Monthly Active Users)とMARPU(Monthly Average Revenue Per User)に分解したり、課金UU数(Unique User)や課金率、MARPPU(Monthly Average Revenue per Paid User)から収益構造をみていたり、タイトルによっては平均プレイ日数といったKPIを設定したりすると思います。

こういった各種KPIを、さらにセグメントごとにわけることで、ユーザーセグメントの特徴を掴むことができるようになります。

※架空タイトル想定、数値は実在しないものです。
※セグメントは架空タイトル内での階級(SSSランク〜Fランク)を利用しています。


主要なKPIを分解し、各セグメントの特徴を理解する

このように、分解すると色々なことがわかるのですが、まずは一番わかりやすい平均プレイ日数に着目します。


平均プレイ日数から、各セグメントの特徴を理解する

SSSの人は月間平均プレイ日数が28.49日とほぼ毎日このゲームで遊んでいます。
一方、Fの人は3.21日なので、これは10日に1回ぐらいしか遊んでいませんね。階級が下に行くほど月間平均プレイ日数が少なくなっていますが、特筆すべきはDとEの数値です。ここで大きく数値が下がるポイントがあることがわかります。

まずここに着目して、Dに関しては30日中19.97日遊んでいれば、大体3日に2日はこのゲームで遊んでいることになり、かなり熱心に遊んでいるユーザーということになりますが、Eになると7.68日。大体4日に1回ぐらいですね。一旦ここでは運営が想定している遊び方ではない層と定義して、EとFに関しては非アクティブ層とします。

非アクティブ層の中にも色々なユーザーがいますが、ゲームをダウンロードしてみたが、思っていたゲームとは違った、ゲームを始めてみたがあまり続ける意思がないといったユーザーは、運営が何か施策を実行して救済するのが極めて難しいユーザーです。なので、一旦非はアクティブ層とし、Dまでを運営の想定通り遊んでいるユーザーとして他の数字を見て施策を検討していくことにします。

非アクティブ層を除いたSSSからDまでのユーザーに対するKPIに対してヒートマップで色分けをすると以下のようになります。


ヒートマップで色分けし、各セグメントの特徴を理解する

まずはMAU。MAUで見ると、ボリュームゾーンはA・B・Cであり、非アクティブ層を除く全体の70%ぐらいがここに属しています。一方で、売上を見ると、一番売上が大きいのはSからSSSまで。売上だけを見ると実はこのゲームの75%の売上は、この上から3つのセグメントで作られていて、その人数は先ほどのABCに比べるとだいぶ少ないということがわかります。

次に、売上のボリュームゾーンであるSからSSSをさらに細かく見ていきます。売上を課金率×MARPPUに分解をするとSSSとSSはほとんどが課金ユーザーです。一方でSになると課金率は4割程度にまで下がります。要は2人に1人以上は課金していません。

さらに、SSSのユーザーは課金率が高いだけではなく、課金しているユーザー1人あたりの課金額も13万4305円と月間10万円を超えています。SSSのユーザー数は385人と少ないですが、1人が離脱すると売上に影響が大きいということも言えそうです。

ここまでをまとめると以下のようになります。


各セグメントの特徴まとめ

このゲームタイトルの売上構造・KPIの構造は、まずS〜SSSのユーザーが売上の75%を生み出す課金層です。A〜Cのユーザーは売上はそこまで大きくないものの、この層だけで非アクティブ層を除くユーザーの70%を占めるのでUU層として分類をします。EとFは非アクティブ層でDはどっちつかずなので一旦分類せずに置きます。

このように定義をすると、例えば現在のこのゲームの課題は売上なのか、継続率なのかといった際に、継続率が課題だと思ったらUU数のボリュームゾーンであるA〜Cのユーザーに対して施策を検討する方が施策のインパクトが大きいでしょう。

逆に、売上が課題の際はSからSSSのユーザーに対して何か施策を検討すべきです。ただし、SSSやSSとSでは課金構造が違っており、SS以上のユーザーは課金率も単価も高いが、Sのユーザーは必ずしも課金率が高くはないので、そこはさらに細分化して施策を考える方が良さそう、ということが言えます。

このように、ゲーム分析をする際に、各種KPIに着目してユーザーセグメントを細分化していくことでより適切な施策を検討することができるようになります。

次の記事では、このように細分化したユーザーセグメントについて、各セグメントのゲーム内における行動理解をする方法を解説していきます。

最後までお読みいただきありがとうございました!

さいごに

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