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ミッドサマーとの闘い ※ネタバレなし

人生で初めて劇場でホラー映画を見に行った。
ホラー映画は唯一見たのがキューブリックのシャイニングのみ。なぜならそれはキューブリックだから。
しかも怖いどころかジャック・ニコルソンの顔芸が素晴らしく、個人的にはアイズ・ワイド・シャットの方がよっぽど怖かった。
それでも好んでホラー映画を見る事はなく、驚かそう、びっくりさせよう、暗闇、イメージカラーは黒と赤!みたいな
恐怖感に対する表現の安直さが気になってしまい、見るに至る事はかった。
(それにしても我ながら偏見がすざまじい。自分でも分かってます。きっとそうじゃないものも沢山あるはず。)

ビビリな私には怖いものが沢山ある。でもそれは暗闇で起こる事なのか、振り返ったら幽霊が居る事なのか、いつも疑問に思っている。
むしろ明るい場所で起こった怖い思いの方がより記憶に残る事だってある。
私はビビリのくせに日常の中で見つけた”怖さと結び付けられないけど何故か恐怖を感じるもの”を見つけるのが好きで
そのアイデアを駆使したホラー映画を作ったら面白いんじゃないかなぁといつも勝手に妄想して楽しんでいる。

そんな折、2019年に映画サイトで見たミッドサマーと言う映画が話題という記事。
日本でのコピーはフェスティバル・スリラー。おぉ。これはちょっと今までのと違う感じがするぞ、と一気に興味を持った。
ビビリはオカルトサイトの閲覧が大好きである。その中でも一つのカテゴリーに土着信仰系の物もあるので、映画の内容は大まかに想像は出来た。
人それぞれの正しさの行き違いって結構怖いのよ。興味はとてもある。でも、手放しで見に行ってもいいのだろうか。


ミッドサマーの初めての記事を見てから恐らく半年近く経過していた今年の2月。
上映が開始されて早々、想像以上にネットで話題になり探せば数多くの感想や考察が出ていた。
早く見たい。しかしもしかしたら映画館で気分が悪くなってしまう事もあるのではないかと思い、まずは入念に予習をした。
未だかつて新作映画の映画の予習をして劇場に見に行く事があっただろうか。もはや映画を見る意味を自分に問う。

ルーン文字がキーらしい。あぁメガテンとかで知ってますよ。北欧神話のね。アレ。
おや、ベニスに死すの彼が出るんだ。へぇ。

・・・・・・・


某日、満を持して平日の昼間に見に行く事に決めた。しかも2時間50分の長丁場。

近所の映画館で満席になった経験がないのできっとすっからかんだと思っていた。
しかし劇場へ行ったら超満員だった。しかもヤンキーっぽい人しかいないし。タイトなジーンズにねじ込まれる長財布な人。
後ろのカップルなんてグロい映画の前に平気でポップコーン食べてるよ。ポリポリ音がするよ。
私はそれなりに繊細(自称)なので勿論ご飯は食べて行きませんでした。みんなメンタル強くて羨ましい限り。
そんな状態でも、昼間に空席で空間に余白がある方が怖かったかもしれないので、満席であることには少しホッとした。


上映中、まずはその瞬間がいつ来てもいいように様子見で薄目。
薄目で見ると視力よわよわの私には序盤の夜のシーンは何が何だか分からず、つい眼を開けてしまった時に見たシーンが初っ端からグロかった(笑)。
しかも見た目がグロいとかならまだ分かり切ってたけど、彼女の泣き声が・・・・・気味が悪いぞ・・・・序盤から・・・耳が気持ち悪い・・・・・。
あとはなんとなく「来るぞ」という時は察しがつくのでそのタイミングで薄目準備をしていたのですが、一か所間に合わなくて白目向いてしまった。
この時はさすがに心の中の声で「ワァ~オ」と呟いてしまった。ずるいですよ、シーン転換で突然のグロは。

話としては思った通りの内容で、でもそれが元々興味を持ってたテーマだったので一つの作品としてまとめて見る事ができてとても面白かった。満足。
あの村の人々はとんでもねぇ事やってるけど「私たちが行っていることは理に適っているのですよ」と言われると「あぁ・・・・確かにそうかも」と思わせる感じがした。
主人公のダニーに対しての心の入り込み方も「上手いことやってるなぁ」と思ったし、過去に日本で起こったとある事件のWikipediaを読んでる時のような気味悪さがあった。
ただ、森の中に妹が見えた時は「あれ?私の頭がおかしくなってしまった・・・・?」とヒヤっとしたが、パンフレットを読んで心底安心した。
話の大筋に絡まないところで突然の”心霊写真のようなもの”が見えるのは意外と怖いのかもしれない。ネタバレがなければより一層気味が悪い。
あと私が一番苦手な幻覚系恐怖がちょっときつかった。衝撃シーンを見てパニックになる所がパニック発作経験者にはちょっとクるものがある。

最後の辺りになって、背後に居た会場前にポップコーンを食べてたカップルの一人がすすり泣く音が聞こえ始めた・・・・・。
「えっ・・・・それは何泣き・・・・!?」
さっきまで彼氏と楽しそうにポップコーン食べてたじゃないですか。上映から2時間以上経ち繊細(自称)の私も流石に慣れてきた所でしたが。
一気にすすり泣きに気持ちが持っていかれてしまった。
そこは明らかに泣くところではないし、彼女の事が気になってしまったまま上映は終わった。

彼女は元気ですか。あれから彼氏と気まずくなっていませんか。


それから明るいうちに帰路へついて、もう一度見れるか見れないかを考えたりもした。面白かったけど初のホラー映画鑑賞は当然後を引きずった。
その後web記事でミッドサマーの写真を見ただけで「うわっあの村の人達じゃん・・・・・。」と一瞬思ってちょっと気持ち悪くなってしまうくらい引きずった。


そして帰りに気が付いた。私、何も考えずにデビルマンのトートバックで来てた。普段使ってないのにわざわざ棚から出してまで。
ミッドサマー見に行ったデビルマンバッグの女。それは完全に”何か”に魂を捧げちゃったやべぇやつ

「これも悪魔のシナリオ通りと言うことですか。」

薄ら笑いを浮かべた私は恥ずかしそうにさっさと劇場を後にした。

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