会社の人
私は、日本で誰もが知る大手企業で営業をしている。ゴリゴリの営業会社なこともあり、比較的に人格的な人が多く、またエネルギーがあり、なぜかみんなビジュアルも良く、営業なのでもちろんコミュ力が高い。そんな皆さんと共に働いている。
会社の人は好きだ。なんていうか、どの人もコミュニケーションにバグがない。基本的に頭がよく、ロジカリーなのでストレスを感じない。性格もいい。「文句言ってる時間無駄じゃね?どうしたらよくなるかの議論しない?」というコミュニケーションが好まれるおかげで明るくポジティブな雰囲気になりやすく、そういう性格の人が世間一般より多い。
私は、流行りのわかりやすくMBTIで言うと「広報運動家型」の性格。(なんでもMBTIで語るのをよしとは思わないが、現に共通言語としてわかりやすいのでそれで説明した)
明るくいいやつだが軽薄、自分の世界がある、コミュニケーション力に長けた人種らしい。営業会社の中でも「コミュニケーション力高いね」と言われるので、私のコミュ力はどうやら水準よりかなり上らしい。
3人兄弟なのだが、6つ下の弟はもっとコミュ力が高い。先日妹と話をしていたら「私はこの家族の中でコミュ力が低い認定されているし、自分でもそう思ってたけど、社会に出てみたらコミュ力高いって言われるんだよ。あんたたちがコミュ力化け物なせいで、家族の中だと目立たないけど。」と言われた。妹はコミュ障だと思っていたので、超びっくりした。
が、そんな私も嫌なものがある。会社の飲み会が嫌いだ。
私の今の立場もある。私は今年部署異動があり、「超仲良しキラキラ陽キャグループ」のなかに1人アウェイで異動になったのだ。このグループには仕事のできるギャルが多く、「なんでこのGだけ顔採用なの?」と思うくらい人員に偏りがある。みんなで写真を撮ると、めちゃくちゃ映える。
私は超薄っぺら人間なため見た目の良い女子が好きなので、女であるという特権を利用してギャルの匂いを嗅いだりおっぱいを触らせてもらったりしている。みんな元気いっぱいで、今のGが好きである。
ただ、飲み会となると別だ。たまにならいいがギャルだからなのか飲み会の回数が多く、かつたまらなく話題が明るい。通っているジェルネイルのネイリストの手際の良さを共通の話題にできる人たちだ。端的に言うと話が合わない。話が合わなくて、会話と会話の狭間でどちらかに混じろうと体を傾けている時間や、私のエピソードトークの時間が訪れ全員の集中力が持つようにどこにオチをつけるか、どこを大袈裟に伝えるかなど考え緊張感が漂う時間。ストレスだ。飲み会は何かをすごく頑張った後だけでいい。
独身女性とは思えないくらい早寝早起き人間なので22時には眠くなってしまうということもある。こんな時間を過ごしてお金を払い、お酒によって増強された食欲で食べてしまったご飯に翌日の体重の心配をし、電車で寝落ちしてしまった結果タクシーで家に帰るなんて、愚行の極みだ。
と思う私がいる一方で、決めつけも良くないと思う。行ってもどうせ楽しくないから行かない、なんて、社会人として結局カッコ悪いと思う。全部に参加する必要はないと思うが、断る理由の100%が「乗り気じゃない」ということだったらチャレンジした方が良いのではないかと思う。何か発見があるのではという観点と、相手にとって不誠実だという観点と、理由はその2つ。
ということで、つまり今日、飲み会に誘われた。
しかも今回は、私を入れて4人のメンバー。誘ってくれたのは他Gの男の子で、「今日21時からみさきち(仮名)とゴウシ(仮名)と俺の3人で飲むんだけど来れない?」という内容だった。誘ってくれたまなぶ(仮名)は、こないだ部会で一回喋っただけの年下の男の子。前述した私のコミュ力で初対面とは思えないノリで明るくまなぶと会話していたら「てか何歳なん?」と聞かれ、「30だよん」と言ったら「え!!!すいません」と謝られた。年下だと思ってたらしい。
まなぶはどうやらいいやつらしい、というのは社内の他の人の会話から知った。そんなまなぶからの誘い。当日のお誘いだし、全然断れる。けど、先程まで語ってた「私の飲み会嫌だな」が、本当に飲み会が嫌なのか、それともただ拗ねているだけなのか、私にはまだ判別がついていなかったので、悩んだ。悩んで、行くことにした。
私は私が社内で演じたいキャラがあって、その中の一つに「いいやつ」というのがある。飲み会を断りつつもいいやつを演じられるならそれが1番なのだが、今のところその段階に行き着いていないので、飲み会に二つ返事で参加しといた方が「いいやつ」を演じられると思った。そんなこんなで、行くことにしてみた。
ちなみに、みさきちとゴウシというのは今私と同じG所属で、付き合ってるんじゃないかと社内で噂されてるにも関わらず、飲み会後に一緒に消えるという、匂わせたいのか隠したいのかよくわからないで有名な男女コンビだ。みさきちはぶりっ子で可愛くてスタイルが良くて明るくて男好きで、何よりおっぱいを触らせてくれたので好きである。ゴウシのことは私はよく知らない。
みさきちとゴウシがイチャイチャする場に使われるだけだったらちょっと嫌だなと思いながら、でもみさきちは好きなので、それも参加した理由のひとつ。
ちょっとドキドキしながら、21時を待った。
当日、みさきちは有休をとっている日だったので、私服で来てくれるだろうというところにも期待していた。みさきちはギャルだ。ギャルの私服って可愛いじゃん。あと、近づくといい匂いがする。今日はギャルの服で来てくれるのかな、と楽しみにしていた。
場所はまなぶに飯田橋の鳥貴族を指定され、それも嬉しかった。腹ペコだったので、たくさん食べたかったからだ。
行ってみると、まなぶだけが先に到着しており、みさきちとゴウシは遅れるとのことだったので、ほぼ初めましてなまなぶとたくさん話した。「とろろの鉄板焼き」が大好きなんだということを伝え、1人で一個食べたいから、まなぶも食べたいなら自分で頼んで欲しい、ということを伝えたら「俺も好きなんだよね」とまなぶも同じものを注文した。どうやらまなぶは私を浮かさないための気遣いができるらしい。いいやつ認定証に私からのハンコも押された。ビールよりも先に二つの鉄板焼きが届き、乾杯もせず食べ始める飲み会のスタートとなった。
まなぶはいいやつで、会話を切らさないようにたくさん質問してくれた。私は親しくない人と話をする時、自分の話すターンで何かオチを作らないとと緊張するので、なるべく相手が話すターンにしておきたいと思う性分があるのだが、多分話してた比率が半々くらいだったので、まなぶもかなり質問してくれたのだと思う。いいやつだ。多分ちょっと天然も入っている。
最近いった結婚式で1番良かったものは、なんていう話題で盛り上がっていたところ、みさきちとゴウシが45分遅れで到着した。おいおい一緒に来んのかよ。
おそらくだけど、みさきちとゴウシは私のことを警戒していない。この2人が揃う場面かつ怪しいことがあると、みんな大体「2人は付き合ってんの?」という話題を振ってしまう。で、「いやいやそんなわけないじゃないですか〜」とゴウシがいなす。だるい。そんな聞き方で言うわけないし。匂わせてきてるのに対して「付き合ってるん?」という誰でも言えそうなことを言いたくないというのもある。誰が言ってやるか。
だから私は、「ただ仲の良い同僚の2人」として爽やかに接する。
そしたら天然まなぶが、ゴウシに「ゴウシは今彼女いるの?」と突っ込んだ。「いるよ〜」とゴウシ。「1ヶ月前くらいに付き合い始めたんだ」と。まなぶに便乗して、アホなふりしてガンガン質問した。「へ〜どんな人?」「年上で身長の大きい人かな〜(みさきちやん)」「前の彼女とは一週間に1回くらいしか会わないって言ってたけど、今はどうなん?」「今はまあ付き合いたてなんで…結構頻繁にあってますね(みさきちやん)」などなど、めっちゃ答えてくれる。面白い。
ゴウシは、最近別れたばかりだということ、そこからすぐ彼女ができたことを話した。私はまたアホのふりして「みさきちも最近別れたって聞いたよ」と聞いた。みさきちは「はい、それで私も彼氏できました」と答えた。
そしたらまなぶが「え!!タイミング一緒じゃん!お前ら付き合ってる!?」と言い始めた。わかる、わかるよ。良いやつだなお前は。そこで2人は「いやいやそんなわけないじゃないですか〜」と答えた。ここからはもうお決まりの流れだ。私は2人が言って欲しそうなことがわかるので、ここからは黙っていた。
そして今日も、ゴウシとみさきちは2人で消えた。
私は「明日登山なので」という本当の話で早めに離脱した。今こうして振り返って、4人での飲み会は楽しかったのか、やっぱりよくわからない。特別仲が深まったとも思えないし。今後の仕事で活きてくるつながりができたとも思えない。
でもやっぱりみさきちはギャルの服を着てきたし、香水のいい匂いがした。まあ、なら、たまにならいいか。
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