旅館じゃないんだからさ

ダウ90000の第6回演劇公演「旅館じゃないんだからさ」
今日観てきた、9月27日、昼の追加公演。
平日の昼の時間で公演を行うのは今日だけらしい。
「大阪の人が多いのかな?」と聞かれたので、「東京から来た人?」という質問の時に、ここぞとばかりに手を上げた。
わざわざ休みを取って、東京から新幹線で往復料金をかけて、来る価値があった。
来てよかったライブだった。


私のダウ90000との出会いは、ほとんどのファンがおそらくそうであるように、今から3年前のM-1第一回戦。
TOP3の映像の中に現れた「ダウ90000」という漫才師。
真ん中に男性が1人、両脇に女性が2人ずつ、合計5人での出場。なんだこいつら。

1回戦のネタは大体流し見なのだが、手を止めた。目を見開いた。
何この人たち。めちゃくちゃ面白い。
たった1本のネタを見ただけで、この人たちの全てのネタが好きだということを確信できた。
そんな世界観と、構成力と、ワードチョイスとひとつまみの偏見と。

当時、M-1の1回戦を見ておりお笑いの話ができる同僚が2名いたので、
その2人に「やっばい面白い芸人見つけた」と意気揚々とダウのことを話した。

すると、驚くことにその先輩は
「えぇ!?こいつら何がおもろいのかわからんって思ったわ」
と言った。超超超驚いた。


ダウ90000は面白い。でもそれ面白い以上に、私の好みなんだ、と気づいた。
いやぁ、そんなことってあるんだね。
私が面白いと思うものは、全人類にとって面白いのだと思っていたよ。


ダウ90000の何が私のお笑い性癖にブッ刺さっているのか、考えてみる。
ロジックも何もない、私の好みの話で、夢の話くらい人に興味を抱かれないと思うが、それでも考える。

まず、私は劇場(演劇)が好き。
劇場の雰囲気というか、あの空気感が好き。
今日この場限りの限定なところもいいし、この場にいる人たちを楽しませるためだけに、何日も何日も稽古をしたと思うと、たまらなく良い。
真っ黒い会場から漂う、ひんやりとした無機質な静けさもいい。
水色がかった空気が霞のように漂うのが見える気がする。
一応マイクをつけているから当たり前なのだが、ほぼ自然に話しているように聞こえるくらい、違和感なく声が響く。
遠くで見ているのに、役者の息遣いが聞こえる耳の距離感。これが好き。

私はラーメンズが好き。
大学生の時にハマってから、すでに活動を終えている2人の動画をYouTubeで10周以上は見てきた。
「非日常の中の日常を描く」奇妙な2人の設定と、言葉遊びと、たまにゾワっとする世界観が大好き。
「非日常の中の」なので、実際には起こりえない設定の中のキャラクターたちが、「日常の」現実世界でのあるあるのような会話を話しているのがすごい。
受け手が違和感なく、キャラクターやコントの設定を受け入れられるところもすごい。
それを演じる2人の職人感が、たまらなくかっこいい。

私は邦画が好き。
共感性が強い私は、登場人物の気持ちの揺らぎと、その出来事から想起される自分の経験が簡単に強く結びついて、セリフと感情がぐんぐん心の中に流れ込んでくる。
ほとんどの場合、自我と結びつけることができ、その映画の存在自体を私の中で大きな意味のある物語に変えてしまう。

そして私は、お笑いが好き。
お笑いには何も勝てない。この世で唯一の最強の存在。

これら全てを兼ね備えた存在が、ダウ90000。
演劇とラーメンズと邦画とお笑い、全てを内包した最強の存在。
そして、男女ユニットであるが故に、テーマが「恋愛」になってくるのが特にいい。

恋愛って、やっぱおもろいんだよ。
当人たちは大真面目にやっているんだけど、あんなに滑稽なことないの。
そもそも理屈が叶わないし、恋愛だけにしか通用しない哲学がたくさんあるところも変すぎる。
そんな特殊なことなのに、この世界のほぼ全員がそれぞれ経験しているところも面白い。
ほぼ全員が経験しているせいで恋愛の理屈みたいなことも存在しているけど、
それ自体がものすごく面白いことだと思うんだ。

で、恋愛のあるある、みたいなことも散りばめつつ、
それをお笑いに昇華している。やってることすんごいぜ。
この年代で、この時代を生きている私たちしか笑えない、のスレスレをずっとやってるんだよ。
内輪ノリ、って最強におもろいよね、とこないだお笑い好きの先輩と話したけど、
時代と年代をおっきい輪で囲って、大きな大きな内輪ノリをやっている感じだよ。


とにかく、ダウ90000好きなんだけど。
私、本当に好きなものについては、言語化しないようにしているの。
なぜなら、自分の言葉だけで気持ちの全てを表すことができず、なんか違うなーってモヤモヤ苦しくなるから。

だから、本当に好きなものは、
好きと言わずに静かに楽しむのがいいかなって。
ダウ90000は、それに近いかもしれない。

もう2000字書いちゃったけど、ここで諦めて終わりにするのは、
私の性癖の根っこのようなところをダウが握っているからで、
何が好きかとか、人に話したくなくなるくらい、大事なものなんだよね。

でも私も、年々言葉にできることは増えているように感じるから、
30歳、人生レベル30の私の言語化現在地は、こんなもんということで、
ここに記しておくことにするよ。

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