鳳来寺山 / ありをさんとの出会い

9月最後の土日、登山の予定を立てていた。
予定表の「ありちゃん登山」という文字を見るたびにワクワクするくらい楽しみな、今回の予定が立つまでの経緯は、遡ること今年の4月。

「柑橘登山娘ありちょんねる」という登山YouTuberが好きだった。
私と同年代の方言が可愛い女の子「ありちょん」の登山系チャンネル。

山の中で歌ったりふざけたりしていている様子から、純粋無垢に山が好きなんだなーっていうのと、
ありちょんの優しい言葉遣いや振る舞いから、きっと素敵な人なんだろうな、と想像しながら見ていた。

1本1本の動画の作りがとても丁寧で、彼女の描いた柔らかなイラストが散りばめられた世界観が好きだった。

登山YouTuberを見ることがなかったけど、彼女のチャンネルだけは例外でぽちぽち見ていたし、一視聴者として、心の奥で密かに応援していた。

なので、YouTube活動をやめると知った時は、「そうか、悲しいな」と思った。

ほどなくして、ありちょんが「ありを」という名前に変わり漫画家に転身したことを知った。そして、本を出版したことも。
すごい、と思った。もちろん次々に大きなことを成し遂げていること自体もすごいのだが、ありをさんのやりたいこと、やってきたことを自分の目標と重ねずにはいられなかった。


私は、自分の本を出したい。
そのためにYouTube活動をして、発信力をつけている。


すごく勝手に、自分の夢が叶った姿をありをさんに重ねていた。
この人が私の目標だ、と思い、密かであることは変わらないが、その応援の気持ちはムクムクと育っていった。

ありをさんが、漫画家として本を出すまでのストーリーを読んだ。
「相方が、自分の絵を好き、この絵をもっと広めて欲しいと言ってくれた。はじめの頃私は自分の絵にそんな価値があると思えず、「私なんて無理無理〜」とあしらっていたが、YouTube活動をやっていくにつれて、その思いがだんだん形になっていった」
みたいな内容だったと思う。(細かいところはちがうかも)
感動した。なんて素敵な関係なんだ、と思ったし、私もそうだ、と思った

私も、ずっと何かがしたくて、いろんなことに手を出しては続かない、失敗ばかりの人生の四半世紀だった。
漫画を描いたこともあるし、絵本を作ったこともあるし、動画編集やイラスト、ウェディングボードやロゴ制作の依頼など、創作意欲を満たすための方法をいつも探していた。
でもどれも中途半端に続かず、27歳にしてやっと辿り着いたのが、ジュンとはじめたYouTube「山歩きJP」
山歩きJPを続けていくにつれて、自分のやりたいことが形作られて言って、やっと「本が出したい」と言えるようになったのだ。
思いはずっとあって、口に出して言えるようになるまで、今自分の心が成長したのだと思ってる。
ありをさんも同じなんだ、と思った。

彼女の本がヒットすること、彼女が夢を叶えて幸せな人生を歩むことが、私にとってすごく重要なことのように思えた。
これって、応援の最上級の気持ちだと思うんだよな。


4月、「石井スポーツ吉祥寺店」にてありをさんのサイン会があることを知った。
今までだったら。今までの私だったら、お気に入りの人と会えるチャンスがあったとしても、わざわざ足を運ぼうなんてことはなかった。
一瞬会えたとしても、相手からしたら私は「名前のないファンの1人」でしかないことを知らしめられるだけで、むしろ切なくなりそうなんだよな、と思う派だからだ。

なので、行かない方を選択するどころか、行くことがそもそも選択肢に上がらないような価値観だったのだが。

この時は、珍しくも会いに行くことにした。
なぜか。私の中で、友達と決めたテーマがあったのだ。

それは「いつメンじゃない人と月に1回接点を持つ」というものだった。

ついつい閉鎖的な交友関係になりがちな自分がよくないよな、というメタ認知があり、
これの打ち手としてこの4月から設定していた目標だった。
もう4月20日。このタイミングを逃したらもう目標達成できないかもな。
うわ〜行かなきゃか……行かなきゃじゃん……と、おそらくサイン会に向かう人の中で一番義務感を持って向かったと思う。
私は自分で立てた目標に縛られることができるタイプの人間なんだ。

もちろんありをさんに会えるのは嬉しいのだけど、それだけ慣れてない行動をしたよってことね。

でもでも、行くと決めた後は持ち前の性格の前向きさが発動するので、
「行くからには、差し入れも渡すし、ちゃんと思いを伝えよう」と気合を入れて吉祥寺へ向かったのだった。


会場へは、1時間以上早めに着いた。
石井スポーツをぐるぐるまわりブースを探したが、探し物偏差値の低い私には会場っぽい場所を見つけることができなかった。
時間があるので、同じ館にあった無印良品で買い物をして時間を潰すことにした。

ふと時計を見たら時間が迫ってきていたので、そろそろかな?と思って石井スポーツに戻ったら、長蛇の列ができていた。

びっくりした。絶対に私の方が先に来ていたのに、全員に抜かされた気分だった。(並んでなかったから抜かされてはいない)
今日私は、この後彼氏と映画「パーフェクトデイズ」を見るためチケットを取っていた。
あと30分後の電車に乗らないと、映画には間に合わないんだ。

アセアセしながら、列の最後尾に並んだ。

そわそわしながら並んでいると、石井スポーツのお兄さんが「本を持ってないとサインできませんよ〜」というアナウンスをしてきた。
え、まじ?サイン会って本ないとダメなの?そこらへんの紙にはサインしてもらえないの?

ありをさんの本は当然購入していた。
何度も読んだし、人生初のAmazonレビューも投稿した。
え、それでもだめ?持ってこないと?うそん…

お兄さんに聞いた。
「あの、本持ってるんですけど、今日持ってきてなくて、持ってないとダメですか」

お兄さんはすごくすごく申し訳なさそうな顔をしながら、
「ごめんなさい、本持ってなきゃダメなんです…ない方は、購入していただくことになります。」と言った。
「え、購入する場合には、一回この列抜けるってこと…ですよね?」
「…はい…そうですね…」

ガーーーーーン。もう絶対映画間に合わないよ。

正直悩んだ。もう帰っちゃおうかな。
ありをさんそこにいるけど。可愛いことはこの距離から確認できたからもういいかな。
1時間以上前からここにいるのにな。
映画私から誘ったし遅れたら申し訳ないしな。
やっぱ慣れないことするもんじゃなかったんだ。
私はサインをもらうことすらできないくらいポンコツなんだ。

と、気合を入れてきていた分なんだか必要以上に落ち込んでしまって、半泣きというかもう涙がそこまで出てくる〜という状態になりながら列から外れてズビズビしていた。

と、若干泣いてたら、視聴者さんに「山歩きJPさんですか?」と声をかけていただき、
私の赤ちゃんモードは終わった。ちゃんと社交的なメンタルに強制的に戻された。

列を外れた時点で、ぐずぐずと彼氏にラインでどうしようどうしようと言っていたのだけど、
「ちゃんとサイン貰ってきた方がいいよ」と言ってくれたので、
本はもう1冊購入して前のはジュンにプレゼントする!映画にどんなに遅れてもサインをもらう!と決めて最後尾に並んだ。

最後尾まで歩くまでの道、私が一度列を抜ける前に私の後ろに並んでいた方が、一部始終を見ていてくれたらしく、
「さっき私の前にいましたよね。ここどうぞ。」と列を譲ってくれた。
後ろの方にも「この方、さっきまで並んでいたのでいいですか?」と確認を取って。
…なんて優しいの。優しすぎる。大好き。
お言葉に甘えて、最初に並んでいた列の途中に入れていただいた。

列に並んでいて気づいたが、みんな自分の番はまだかまだかと心待ちにしていて、
本をぎゅっと握りしめて待っている姿がとても素敵だなと思った。
みんな、前の人とありをさんの会話を聞いている。
自分の時には何を話そうかな、何を言ってくれるのかな、と考えているのだろうな。
私は、登山口までのバスに乗り込む列とか、高尾山口駅の朝とか、みんなが一斉にワクワクしている姿を見るのが好き。


ありをさんは、ファンの方としっかりお話しする方だった。
一人一人、10分くらい話してたんじゃないかな?本当に丁寧に対応していて、サイン会ってこんな雰囲気なんだ、と温かい気持ちになった。
たっぷりお話しして、サインをもらって、最後には写真を何枚か撮る。
ありをさんと、その相方のリョータくんもいて、リョータくんのことをちゃんと見たのが初めてだったので、かっこいい方でびっくりした。(ありをさんの絵のリョータくんはどう見ても可愛い系なので)

私の番になった。
サインをもらうのに加えて、この本のどういうところが好きか具体的に話した。
私は曲がりなりにも一応創作をしている身なので、どういうふうに褒めてもらったら嬉しいかは自分なりの答えがあるため、自分が言われたら嬉しい言い方で、たくさん思いを伝えた。
それで最後に、「私も本を出したくて、YouTubeをやっていて」と自分の話をしたら、なんとリョータくんが山歩きJPのことを知っててくれた。嬉しかった。

山歩きJPをやっているからといって、私は特に何者でもないし、それがなんだって漢字なんだけど、
でも私は山歩きJPを自分の創作の集大成として誇りを持っているから、そこに関しては自信があるし堂々としていられる。
私の大事な山歩きJPを、リョータくんに知っててもらえたのがとても嬉しかった。


写真を撮るときに「今度もっとゆっくり話しましょう!」とリョータくんが言ってくれたのと、ありをさんがサインに「また会おう」と書いてくれたのを、私は思いっきりまに受けることにした。
こういう時は、多少の勢いがないとだめ。

終わったあとDMで会話して、私は持ち前の行動力と図々しさで、5日後には2人と名古屋でご飯を食べる約束を取り付けた。
もちろんその日も翌日も仕事だが、職場が静岡だったので、新幹線でひょいっと全然行ける。
こういう時の人生の優先順位は、間違わない方だ。


当日は、粗相のないようにすることと、自分の聞きたいことを聞ききること、自分の思いを伝えきることを成し遂げるため、新幹線の中でアジェンダを組んだ。
絶対に楽しい夜にしたかった。


そんなこんなで実現した2人との会食では、2人の人柄にも助けられてとても仲良くお話しでき、ありをさんとの出会い第一章を終えたのだ。
私は年上だろうが目上の人だろうが初対面だろうが、OKが出された(時にOKが出されていなくても)瞬間タメ口を使えるようになるという特殊能力を持っているので、初回から打ち解けているような雰囲気は出ていたと思う。私は打ち解けていた。(実際は相手に気を使わせていることが多いと想像はしている)

話せば話すほど2人が大好きになるし、話せば話すほど2人のことを尊敬する。
もっと2人と仲良くなりたいな、と思いながら、今回の特別な出会いに感謝した。



そのあとも、一度イベントにお邪魔したりなんだりと約半年の期間を経て、
ありをさんと登山に行くことが決定したのだった。


ありをさん、から、ありちゃんと呼ぶ仲になっていた。

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