祖父に会うため祖父のようになる
わたしのじいちゃんは大正生まれの九州男子。妻(わたしのばあちゃん)を「おい!」と呼び、あれしろこれしろと命令をする。酒が入ると、ほろ酔いの段階では機嫌がよいが、それを超えると自分の言うことを聞かない人間全員に怒鳴り散らし、それはもう手の施しようのない絡み方をしてくるような人だった。
だが、普段は非常に物静かで多趣味な人でもあった。読書と酒、相撲、写生、散歩、料理…。興味の幅が広く、気になったらなんでも黙々とやっているような感じだった。
最近わたしは、本読んだり歴史の勉強をしたり、日本酒を飲むようになったりしていている。じいちゃんの趣味を受け継いでいるような具合だ。子どもの頃、じいちゃんが趣味を楽しんでいる姿を近くで見ていたから、同じような趣味を自分も持つようになったのかも知れない。
今思えば、わたしがこれはなに?と質問すれば、お前にはまだ分からないだろうとなどと子供扱いせずに仲間に入れて一緒に楽しんでくれる人でもあった。その文化の小さいかけらが今のわたしの人生の楽しみになっているのだと思うととても感慨深い気持ちにもなるし、ありがたく感じる。
そんなわたしのじいちゃんは10年も前に死んでいる。脳梗塞からの肺癌で、それでも91歳まで生きた。大往生だ。秋から冬の季節はとくにじいちゃんを思い出してしまう。こんな本を読んだ、こんな酒を飲んだと、一緒に話がしたい気持ちになる。お互い酔っ払っていたら大喧嘩をするかも知れない。それでもいいから大人同士として話がしたかったと、ないものをねだってしまうときだってたくさんある。
仕方がないので、こういうときじいちゃんはこうしてたなって思い出しながら、じいちゃんみたいに趣味を楽しんで生きようと思う。ただ、わたしは酒はほどほどにするし、人にも怒鳴り散らしたりはしないと誓う。(笑)