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2022ヒグマフォーラムin旭川「街に出るヒグマ アーバンベアと向き合うグランドデザイン」の一部を要約
二年前のものになりますが、こちらは北海道におけるヒグマの状況について専門家集団によるフォーラムが行われた際の動画です。
科学的知見に基づき、あらゆる角度から解説がなされています。
私は通常速度で見ながらメモを取ったのち、1.2倍速でもう一度視聴していますが、全部で3時間半にもおよぶため中々全部見きれないという方もいるかな、と思います。本当は全部視聴して!と言いたい所ですが、一番手の釣賀氏(北海道立総合研究機構)の部分だけでも良いのでぜひ見て欲しいです。ヒグマ問題がどうしてこうなっているのか、その背景に触れることができます。この部分だけなら20分程度です。
これを見れば、山に餌がないとばかり報道するマスコミがいかに偏った(時に誤った)情報を流し続けているかが感じ取れるかと思います。
以下に冒頭の釣賀氏の部分を要約したものを載せておきます。何度も言いますが、動画を視聴する方が正確でかつ深く理解することができます。以下は参考程度にお読みください。
「ヒグマ情報増加の背景 」
北海道におけるヒグマの分布拡大と個体数増加について、調査結果と背景を説明しておられます。
ヒグマの分布と個体数の変化(12:20~)
・ 1978年から1991年にかけて、特に日本海側でヒグマの分布が大幅に減少
・ この減少は、積極的な春熊駆除が主な原因。
・ 個体数の減少が懸念されたため、春熊駆除は1990年に廃止。
・ 2002年以降、分布が急速に回復し、2017年には札幌市や帯広市といった
都市の市街地にまで分布が拡大
・ 生息数は1990年の約5,200頭から2020年には1万頭以上に倍増
・ 特に、かつて絶滅の危機にあった積丹・恵庭、天塩・増毛地域で顕著な個
体数の回復
農業被害と捕獲の変化(23:00~)
・ 農業被害額は1950年代から継続的に増加、捕獲数も増加
・ 近年は春熊駆除をして個体数を減らしていた時よりも多く捕獲している
が、ヒグマの分布も生息数も拡大している
・ 捕獲方法と戦略の変化:
- 春熊駆除期:メスとオスがほぼ同数(1:1)の割合で捕獲されていた
- 近年:オスの捕獲が圧倒的に多く、メスの捕獲は大幅に減少
・ メスの捕獲減少が、個体数回復と分布拡大の重要な要因
土地利用の変化(24:20~)
・ 農地の森林化:住宅地と森林の間にあった果樹園や農耕地が放棄され徐々
に森林に変遷
・ 耕作放棄地の増加:農地面積に対する放棄地の割合が継続的に上昇
・ デントコーンの栽培拡大:
- 品種改良により栽培可能地域が拡大
- 2020年では農作物被害の約半分以上がデントコーンに集中
・ デントコーン畑の特徴:
- 高さ2mで、熊が隠れやすい
- 農地の集約(大規模化、機械化)により人の目が届きにくくなっている
都市部への侵入(28:05~)
・ 河川(札幌の場合は石狩川、茨戸川、伏古川)や河畔林、防風林を好都合
な移動経路として利用
・ 具体的な都市侵入事例:
- 札幌市(2021年)、 旭川市、新十津川町、砂川市
・ 侵入の特徴:
- 川沿いの茂みを利用して移動
- 森林から都市部までつながる環境を活用
・ 遺伝子分析による個体追跡:
- 特に札幌市では長期的な個体識別調査を実施
-メスの個体数が徐々に増加、特に以前分布が減少した地域で顕著
-こうしたメスから生まれてくる若い熊が市街地に出没し色々な問題を起
こしているのが今の状況(札幌の場合)
世界的な特殊性
・ 北海道は、高人口密度地域でヒグマが安定して生息する世界的に見ても稀
有な地域
・ 中国の黒竜江省と対比(どちらも高人口密度):
- 北海道:安定した生息
- 黒竜江省:絶滅危惧状態
- 限られた面積で人口密度が高いにもかかわらず、ヒグマの生息を維持
今後の課題
・ ヒグマと人間の共存に向けた総合的な戦略の必要性
・ 札幌では古くからの調査データがあるが他地域はない、各地域での詳細な
生息状況の調査が必要
・ 若年個体による市街地への侵入対策
・ 土地利用の変化に伴う対策
・ 継続的な遺伝子分析と個体追跡