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或るITエンジニアが『デッカイギ』に寄せるラブレター(もとい、参加レポート)
まえがき
『お疲れ様です!』(イベントの挨拶)
もっさんと申します。
本記事では、2025/01/10-11 に開催されたイベント『行政デジタル改革共創会議(以下:デッカイギ)』に参加した感想をレポートします。
……いえ、間違えました。感想レポートを書こうとしたのですが、実はあまりに熱量がこもりすぎて、最早レポートの体をなしていません。
世の中の文章の中で一番近い分類だと、『ラブレター』になりそう。とても真剣に書いてはいるものの、あまり誰かの学びになる内容ではありません。
そんな勢いの文章でもよろしければ、ティータイムや晩酌のお供にでもご笑覧ください。
この記事の前提
事実ベースではなく筆者の感想ベースで進行します
本イベントでは、オープニングで『チャタムハウスルール』に基づいた行動・情報発信を求められました。
このルールをざっくり説明すると「本イベントの場の参加者以外に対して、本イベントで得た情報を共有してもかまわない。ただし、情報の出所は内緒にしておかなければならない」ということです。調べてみると、このルールは本イベント以外にも、サイバーセキュリティ関連の会合などで適用されているケースがあるそうです。
イベントの行動指針としてチャタムハウスルールが提示されたことで、私は「誰が何を言ったか」よりも「(その発言を受けて)自分がどのように考えたか」を重要視するように、意識が切り替わりました。
そのため、本記事においても出来事やセッションの内容をうけて、「自分がどのように考えたか」を中心に執筆しております。あらかじめご了承ください。
イベント開催直前の筆者の立ち位置
クラウドインテグレーター(一般企業)で働くITエンジニア
より詳細な役割に分類するならば ITインストラクター・ITトレーナー
職場でお世話になった先輩がデッカイギの運営メンバーをしており、その先輩の紹介でイベントに参加
技術系ワークショップのファシリテーターと問題作成を担当
デッカイギ初参加
地方出身、地方在住
親族に公務員や福祉関連の職に就いている人が多く、行政や医療DXには関心アリ
ただし、関心があるだけで「具体的に何をすればいいのか」までは落とし込めていない
IT関連のコミュニティイベントの運営経験アリ
特撮オタク。特に土日朝のヒーロー番組を好む
興奮のまま書いている本記事にも、所々に特撮ネタが混じることをご容赦ください
そもそも『デッカイギ』とはなにか
デッカイギは、行政デジタル改革に関する非営利のカンファレンスです。2025年が3回目の開催となります。
プログラムでは、行政デジタルに関する幅広いセッションやワークショップが展開されていました。
なお、毎年異なるテーマが定められており、今年は「お疲れ様です2025」です。
開催前から感じていた、コンセプトの面白さ
……が、WEBサイトのデザインがどうみても日曜朝に放送されている、仲間と一緒に敵に立ち向かうアレです。特撮オタクの私、大歓喜。
わくわくしながらオープニングナレーション……じゃなかった、WEBサイトのアオリ文(?)を読んでみて納得。
「ああ、立場や住む場所の違う者たちが集まり、仲間として共に課題に立ち向かおうと決意を新たにするイベントにしたいのか。戦隊、ピッタリじゃん!」
最近の戦隊ヒーローは、それぞれ違う国の王様が集って共に戦っていたり、全員『⚪︎⚪︎屋』としてそれぞれ異なる得意・担当分野をもつ者がチームを組んでいたりしています。
そんなヒーロー番組のメッセージと、自治体・省庁・民間企業やアカデミア、その他さまざまなステークホルダーと仲間になり、『信頼』をより強固なものとしたい、という主催側の目的は、方向性がバッチリ一致しているように思えました。
つまりこのイベントは、開催前から今回のテーマもコンセプトも私の心にド・ストライクだったのです。
イベント1日目
イベント1日目は、オープニングの最初から参加しました。
オープニング
オープニングでは、イベントの主旨や主催側の想い、イベントの行動指針について案内がありました。
オープニングの段階から、飾らない言葉で真摯に「どういうイベントにしたいのか」という強い想いを伝えてもらえて、既に「とても良いイベントに参加することができたのだな」と感じていました。
たとえ他に大勢の参加者がいたとしても、壇上から真剣に気持ちをぶつけてもらうことで、自分を『仲間』として受け入れてくれたんだなあ、という気持ちが湧いてきました。
正直、オープニングの挨拶を聞くまでは「私の仕事は担当するワークショップを成功させることである」と、自分の持ち場のことばかりに一生懸命になっていた部分があったことは否めません。
しかし、今日一番大変であろう運営のみなさまからの「仲間になろう」という呼びかけによって、私の意識は『自分が担当するワークショップのみ』から『イベント全体の成功』に向いたことを、はっきりと自覚したことを覚えています。
また、もう1つ初参加の私にとってありがたかったご案内が、イベント内で適用される『チャタムハウスルール』についての説明です。
チャタムハウスルールは、どうやら毎年ご参加されている方にはお馴染みのルールだったようですが、私はこのイベントで初めて耳にしました。
チャタムハウスルールについては、概要だけではなくイベント終了後の『ルール違反あるある』事例についても紹介されており、大変わかりやすかったです。
この案内の何が嬉しかったかといえば、初参加の人に対する運営側の配慮が表面化したもの思えたからです。
コミュニティイベントを運営するにあたっては、コミュニティの成熟段階ごとに様々な壁があります。デッカイギのように大人数が集まるほど成熟したイベントでは、しばしば『古参メンバーの内輪感』が問題視されることがあります。
例えば、私が以前に参加したイベントでは、開始時の挨拶がコミュニティ独自の合言葉になっており、スタートからついていけないことがありました。周囲がノリノリで合言葉を叫ぶ中、「当然だけど、自分はまだ余所者なのだな」と居心地の悪さを感じたことを覚えています。
もちろん、新規参加者側もコミュニティのルールや行動規範を事前に知ろうとし、それらに従い、場に馴染む努力をすべきことは言うまでもありません。
しかし、デッカイギでは、ルールや行動規範・イベント内で大切にしている価値観をオープニングで説明し、全員が同じスタートラインでイベントを楽しめるようにしてくれました。
新規参加者がいることを前提として進められた説明は、まるで「はじめまして。今日から私たちの仲間にようこそ!」と語りかけられているように思えました。
私はIT関連のコミュニティに参加したり・運営メンバーとして活動することもあります。自分がいざ受け入れる側になった時には、デッカイギで受けとった温かなメッセージを発信できる人間になろう、と決心しました。
これまでの書きっぷりからお気づきかもしれませんが、私は1日目のオープニング時点で、すでにデッカイギのことが大好きになっています。
Special Session : トータルデザインはどこに行った?新しい未来はどんな世界? 〜ゆかいな仲間たちの語らいから探る〜
注目すべき最初のプログラムです。さっそく伝説が起こりました。
第3回 #デッカイギ の思い出。
— 庄司昌彦 / Masahiko SHOJI (@mshouji) January 12, 2025
今回のスペシャルセッションは、なんと歴代のデジタル大臣4名が揃い踏みでこれまでの行政デジタル改革とこれからの地方自治体を語る、というサプライズ企画。… pic.twitter.com/hd3thDf8zZ
歴代デジタル大臣 が 壇上に !? ( д) ゚ ゚
こちらの特別ゲスト、思いっきりサプライズです。事前にWEBで公開されたプログラムでは、登壇者として記載されていたのはモデレーターの庄司さんのお名前のみでした。
ディスカッションの内容も本当に素晴らしかったです。
ひとはお金を稼いで生きるため、または自分の使命に従うために働いている方が大半だと思います。その方向性は、他でもない自分が決めることです。
それでもやっぱり、誰かに「あなたが目指す方向は間違ってないよ」と言ってもらえないと、心が折れてしまいそうな時もありますよね。
行政DXを支える人々にとって、この『誰か』の部分に歴代デジタル大臣4名が立ったのだと思えるセッションでした。
ランチタイム
私自身が参加できなかったものの、ランチタイム中に行われていた素敵な取り組みについて語らせてください。
デッカイギのランチタイムでは、『ぼっち飯対策企画』という公式のイベントが準備されていました。
【今回もあります、ぼっち飯対策企画】
— 行政デジタル改革共創会議(デッカイギ) (@dekaigi) January 9, 2025
みんなでご飯を食べ、仲間を作り、情報交換をしてほしいというぼっち飯対策企画。今回もランチタイムやコーヒーブレイクなどに様々な企画がありますので、ぜひご参加くださいませ!
スケジュールは↓https://t.co/Rg2pHHikWO#デッカイギ#羽田デッカイギおつ pic.twitter.com/YsExY6PbEG
この企画があることを知った時、素直に「すごいな、このイベント!」と尊敬の気持ちがあふれたことを覚えています。
コミュニティイベントにおいては、懇親会などで参加者が自発的に他者とコミュニケーションを取るための行動が期待されることがほとんどです。
自発的なコミュニケーション行動が望まれる場で、運営側にできることといえば、休憩時間などのタイミングで、参加者に対し「ぜひ、登壇者に質問してみてくださいね!」や「周囲の人と会話してみてください!」と声をかけて回る程度ではないでしょうか。
参加者の方は最初は緊張するでしょうけれど、コミュニティイベントに来場された以上は、自分で殻を破って話しかけに行くべき……
……そう思っていました。デッカイギに行くまでは。
デッカイギではぼっち飯対策企画という『仕組み』をつくることで、交流のための行動に対するハードルをぐっと下げていました。
話しかけるきっかけがわからなくても、この企画に参加さえすれば、『住んでいる地域』や『いま、同じ景色を一緒に見た』などの共通点が生まれるようになっています。
こんなに気持ちがあたたかくなる仕組み化を、私は初めて見ました。
それから、実行委員の一部のメンバーが着用していた前掛けのメッセージもとっても好きでした。
実行委員長の今日の装い#デッカイギ pic.twitter.com/dM7VgBJJRJ
— Hal Seki ⿻ (@hal_sk) January 10, 2025
この前掛けには「あなたと食う飯はより美味い」って書いているんですよ。
めっちゃ良くないですか???
「交流しないと勿体ない」という、ある意味マイナス面を突きつけて相手の行動を促す言葉ではなく、「あなたと一緒にご飯を食べることで、私も幸せになる」という、あくまで私が好きだからやってるんだー!!!私があなたと飯を一緒に食べたいんだー!!!スタンスなのですよね。特撮番組だったら間違いなく仲間が増えるシーンですよ。
デッカイギでは、どうしてこんなにも優しい言葉が飛び交っているんだろう。ランチタイムの企画で、ますますこのイベントのことが好きになりました。
なお、私がぼっち飯対策企画に参加できていなかった理由は、15:30からの自分が登壇するセッションの最終確認に時間を割いたことです。自分がもう少し喋ることに自信を持てていたら、行きたかったなぁ……
【コラボ】BDX連携セッション:能登半島地震・豪雨で防災DXは何ができたのか
現業務とは関連が薄いものの、個人的に関心があり聴講したセッションです。
災害は突然やってきます。しかし、DXやシステムは事前に準備を進めておかないと機能しません。予告なく襲いくる災害から可能な限り多くの命を救うために、ひとりのITエンジニアとして何ができるのかを考え続けるために聴講しました。
聴講してみて、やはり報道だけでは推しはかることのできない、さまざまな障壁が立ちはだかっていることを知ることができました。
登壇者の皆様が「当時何ができたか」だけではなく「これからどうするべきか」といった点に軸足を置いて話していたことが印象的です。
登壇者メンバーの1人である岡本さんが、当日の発表スライドの一部を公開しています。少しでもセッションのタイトルに心を惹かれた方は、ぜひご覧ください。
【パネル】(デッカイギ:行政デジタル改革共創会議)「BDX連携セッション:能登半島地震・豪雨で防災DXは何ができたのか」 | 弁護士 岡本正 Attorney at law
https://www.law-okamoto.jp/activity/15607.html
また、デッカイギの運営メンバーの方から、SNS上で防災DXに関するイベント開催の予告がありました。こちらも今後の動きを要チェックですね。
予告)チッカイギ(地域行政デジタル改革共創会議:防災DX編)やります。#デッカイギ
— 江口清貴 / Kiyotaka EGUCHI (@kiyotakaeguchi) January 19, 2025
ガバクラ標準化をみんなで一緒に考え学び、相談し合える仲間を作ろうワークショップ
WS②ゼロからわかる!!AWSの構成図を書いてみようワークショップ&クラウド相談会
私がファシリテーター&問題の作成を担当したワークショップです。
ファシリーテーターはGovTech東京のすぎいさん、AWS の八手又さん、椨木さんと一緒に担当いたしました。
私がスピーカーを担当した後半部分 & ワークショップで使用した問題と解答例・解説は、以下のブログに掲載しております。よろしければご覧ください。
また、セッションを企画した背景やセッションオーナーの想いについては、すぎいさんのブログで語られています。こちらもぜひご覧くださいませ。
AWS やガバメントクラウドにすでに詳しい方から、これから本格的に学ぼうとしている方まで、幅広いご経験の方にご参加いただきました。
ワークショップでは1グループ3〜4名に分かれて、ディスカッションしながら問題を解いていただきました。お互いの持っている情報をもとに1つの解を紡ごうとする様子は、まさに「共創」そのものでした。
本ワークショップにご参加いただいた皆様には、「今日学んだ知識を自分の組織に持ち帰って展開し、新しい『仲間』をつくってほしい」とお願いをしました。
ご参加いただいた皆様がそれぞれ自分の近くの方と手をつなぐことで、どこまでも届く仲間の輪となるはずです。その輪が、皆様の前に立ちはだかる壁を壊す必殺技となることを、心から願っています。
もちろん、その輪に私も入っているつもりです!お困りの際は、すぎいさんや私にお声掛けください。お待ちしています。
イベント2日目
Keynote Session : 自治体DXは住民、自治体職員、事業者をどう幸せにするのか?
2日目はキーノートセッションからのスタートです。
地方自治体やベンダー、デジタル庁などさまざまな立場から見た自治体DXについて議論がされていました。
これに尽きる!というセッション終了直後の感想をSNSに呟いていましたので引用します。
わたしたちがやっていること、やろうとしていることは正しいし、正しくなるし、正しくするのだ
— もっさん (@_mossann_t) January 11, 2025
という強いエールを受け取れるセッションだった#デッカイギ #羽田デッカイギおつ
民間のITエンジニアの立場から、自治体DXという取り組みが将来的に『当たり前』の『正しい行い』にするには何ができるのか、泥臭く考え続けていきたいです。
世の中が変わるにつれて正解もきっと変容し続けるけれど、それでも考えながら先へ進もうとすることは無駄になんかならない、と信じています。
そもそも僕らはどうなったら楽になるのだろう?
今の現状どう? みんなしんどいよねえ〜〜〜。という共感からスタートしたセッション&ワークショップでした。
とはいえ共感からスタートしたとしても、デジタル改革らしく(?)状況の分析などはアンケートで取得したデータを根拠にお話されている部分は流石でした。データに基づいた会話がなされていたおかげで、私のような民間の参加者にとっても解像度が高まったのではないでしょうか。
また、お話を聞くだけで終わらないのが本セッションの良いところです。
スピーカーのお話を聴講するフェーズでも、絶え間なく質疑&感想投稿用のSli.doにはコメントが沢山流れていました。
しかしそれだけでは終わらず、ワークショップではさらに小さなグループに分かれてディスカッションを行い、現状の課題と「どうなったら楽になるか?」を一緒に考えていきました。
ワークショップでは、話したい事柄をどんどん付箋に書き出し、それを模造紙に貼って話を進めていくスタイルでした。このスタイルだと、初対面の方に対しても
「私、この付箋が気になるのですが、書いた人は誰ですか?詳しく聞きたいです」
と声をかけて話を深掘りしやすいため、限られた時間の中でもたくさんの意見を伺えて良かったです。
コーヒーブレイク
コーヒーブレイクの時間で、デッカイジャーイエローとゼンレイナーイ(悪者っぽい方)とのグリーティング(?)に参加しました。
デッカイジャーイエローと悪の組織メンバー(?)と写真撮ってもらいました!!
— もっさん (@_mossann_t) January 11, 2025
PioParkでデッカイジャーと握手🤝#デッカイギ #羽田デッカイギおつ pic.twitter.com/MFVttKlGTs
ゼンレイナーイに「AWSに詳しい」と褒められた!!!!(歓喜)
褒められたからには、今後もずっと詳しい人であらねばなりませんね。知識のキャッチアップを怠らず、行政デジタル改革の力になれるように努力します。
どうなる?標準化後の自治体業務とシステム 〜地方のシステムベンダーにそっと訊いてみる〜
最後に参加したセッションがこちらでした。
一般には競合他社と呼ばれる方々が登壇者として集まっていたので、お互いの腹の探り合いが始まったらどうしよう……と半分本気で心配していましたが(笑)、完全に杞憂でした。
パネルディスカッション形式なので意見が別れることはもちろんありましたが、1名が話しているときに他の登壇者の皆様は深く頷いていることが多く、やはり課題を感じるところは共通しているのだな、と思いました。
他の方が話しているときに大体相槌を打つ空気感から、所属組織は違えど同じ課題をもつ仲間であることが感じられました。このイベントならではの素敵な空気感だと思います。
エンディング
エンディングで印象に残ったのは、「来年はデッカイギが開催できないかもしれない」という言葉でした。
特にガバメント・クラウドの関係者にとっては、2025年はシステムのクラウドへの移行完了期限の年であり、すでに多忙にも関わらず更に忙しくなることが目に見えています。
それでも、今回のイベントに参加された方、また当日の参加は叶わなかったものの、何らかの形でイベントを応援していた方の全員が、 2026年のデッカイギの場で
「お疲れ様です!去年どうだった?」
「いや〜大変だったのよ。っていうか、今も大変なんだけどさ……笑」
と、仲間たちと讃えあえることを願ってやみません。
いいえ、違いますね。
願うだけではなく、そういう未来を作れるように私たち民間側も尽力すべきですし、そうありたい、と決心したイベントになりました。
2026年のデッカイギ、そして行政デジタルの未来は、これからの私たちの行動にかかっています。
さいごに
デッカイギの運営・実行委員の皆様、登壇者の皆様、ご参加者の皆様、その他関係者のすべてのみなさまへ。
本当に素敵なイベントに参加させていただき、ありがとうございました。
今回の参加で、私はこのデッカイギの場が本当に大好きになりました。
次回も参加の機会をいただけるのであれば、今回出会った素敵な仲間たちへ、今回以上に恩を返せるように、この一年で研鑽を積んでまいります。