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なぜぼくたちは[1on1]をやるのか

読んでいただきたい方
・安心安全なチームづくりに奮闘しているマネジャー
・よいチーム作りに効果的な[ 1 on 1 ]や「対話」って
 どんなものだろう?って思っている方

これを読んでどうなっていただきたいか
・みんなでチームづくりを楽しめるようになって欲しい
・他のメンバーと向き合うことについて考える発火点として欲しい

この記事のハイライト
・人は人の話を聞いてない
・「自分のために」きくのではなく、「相手のために」きく

■ はじめに _ どんな「やりとり」がチームを強くするのか

日頃のコミュニケーションをよく観察するようになった。
どんな「やりとり」がチームを強くするのか、という問いを持って。

ひとつめは、自分も含めたチームのマネジャーとそのチームのメンバーたちとのやり取りについて。
そしてまた、ぼくに話しかけてくる上席社員の話し方や聞き方について。
それぞれに目を凝らしている。

同時に、どのようにすればよいチームづくりができるのか、この自らの問いに答えるために、関連する本にあたったりセミナーに参加したりして体系的に理解すべく勉強しはじめた。

結論を得たり持論を形成したりするには、まだまだ勉強や洞察が必要だと思っているけど
気付きのひとつめとしては、日頃自分が身を置いているコミュニティにおいては、答えらしきものはなかった。言い換えれば、ぼくの勤め先では、効果的なチームづくりができていない。
それぞれのマネジャーが、自らの務めをプレイヤーの延長線上にあるものと捉えていて、また、これまでの自身の経験から形成した価値観をもとに、さまざまなことに条件反射的にリアクションしている。つまりはメンバーとのコミュニケーションにおいても、自分が聞きたいように聞き、言いたいことを言いたいように口にしているに留まっている。

■ 起点 _ 2つの観察結果

ぼくの勤め先を観察した結果について、
勉強したからこそメタ認知できた、最もまずいと思える状況は以下の2つ。
これらのことを認識できていないまま、自己流で「やりとり」してしまっている。

・人は人の話を聞いていない
 普段の会話の多くは、お互いに独り言を言い合っているだけ
 感想を伝えたり質問したりしているけれど、それは実は自分のため

・人は人のことを、往々にしてイライラしながら理解しようとしている
 言動にばかり焦点があたり、相手の本質を理解しようとしていない
 例:あの人はなんでお願いしたことをやってくれないんだろう?など

この気付きを起点にして、自己理解・他者理解、そして相互理解の方法などについても関心高く勉強している途中だ。そこまで学んだことから、ここでは、マネジャーとメンバーとの対話について、そのなかでも最近毎日のように見かける言葉である[ 1 on 1 ]について整理することにトライしたいと思っている。
※マネジャーさんに向けて、つまりは[ 1 on 1 ]で聞き手役の方に向けて書きますね。

■ マネジャーは、ボスからコーチへの変容が求められている

Gallup社の調査によると、チームやメンバーそれぞれのパフォーマンスに影響を及ぼすもののうち、70%がマネジャーに起因するものだそうだ。
労働者の働き方についての捉え方が大きく変容していて、職場とは「労働力を差し出して、対価を得る場」から「自己実現や社会に貢献するための場」と変わってきている。職場ごとの使い古された価値観や、おざなりに作られた目標や指針の押し付けでは、もはやメンバーたちはチームの成功に寄与してはくれないのだ、そんなふうにぼくは解釈した。
さまざまなマインドを持って集まっているチームのメンバーたちが、仕事にポジティブに向き合えるように、またそれぞれのチームに貢献的に関われるように、マネジャーがメンバーの思考を整理したり新たな動機付けを促したりすることが必要なのだと思う。

ぼく自身がコーチングの勉強を続けるなかで、人には考えを整理し発展させるプロセスにおいて「自問自答だけでは辿りつけない領域がある」ことを知った。自分の心地よい方法でのみ内省したり、結論に至る前に何か他のことに意識を持っていかれたりしてしまうからだ。また、他の価値観をもって当該の物事を見るとどうなるか、など必要な視点の欠如が起こったりもするためだ。

これは、メンバーのパフォーマンスを安定・向上させるためには、メンバーの自主的な内省だけに任せず、考えるべきことを余すところなく考えさせることも必要だと言い換えることができる。
[ 1 on 1 ]とは、情報共有や進捗確認などだけではなく、メンバーの思考の整理や発展を促進する役割もあることを認識しておきたい。

チームがよりよい成果を出し続けるためは、メンバーそれぞれが安心した状態で充実した仕事ぶりを発揮できている必要がある。そのために、自問自答ではたどり着けないところへ、マネジャーが「良質な問い」を投げかけることでメンバーを連れていく。そんな役割を首尾よく果たすため、マネジャーたちはコーチとしての立ち位置を意識して実践しなければならない。

■ なぜ[ 1 on 1 ]をやるのか _ 目的はさまざまだが

[ 1 on 1 ]をやってどうなっていきたいだろうか?
その目的は組織によって、バリエーションがあっていいと思っている。

ただ、ぼくの組織では、残念なことになっていた。
手段の目的化が発生していて、[ 1 on 1 ]をやることで終わってしまい、何かに資するものとなっていない。しかも、マネジャーとメンバーが1対1で話す時間を設けてはいるのだが、どうしてやるのかとか、どうやったらいいかがあいまいになっていて、雑談や指示や進捗確認で終始して普段の会話とあまり変わらないものとなってしまっている。

とあるメンバーの感想では、「なんだか何かを強要されているような気がした」とのこと。普段と変わらないことを改まってやったところで、安心して対話することができなかったということだそうだ。

ぼくとしては、やはり強いチームを作りたい。
[ 1 on 1 ]は、そのための施策のひとつと位置付けていたい。

強いチームとは、ぼくにとって、[ 安定して成功し続けることができる組織 ]であり、[ メンバーが心身ともに健康で、みんなで安心して所属できる組織 ]だ。

そのために、ポジティブにチームと仕事に向き合えるようにメンバーの内面を整えたり、開発したりしていきたい。
そのための手段のひとつとして、[ 1 on 1 ]を用いることができればいいなと思っている。

■どのようにやればいいのか _ 最も大切なこと|期待値を一致させる

繰り返しになるけど、いろいろな目的や方法があっていいと思っている。でも、参加したメンバーが、「結局、何の時間だったんだろう?」と空しく振り返ったり、「結局、マネジャーばかり話していた・うなづくのに疲れた」と苦笑したりするような時間にはしたくない。

目的や組織の文化によって、方法はそれぞれ異なっていてよいのではないか。極論としてはどんな方法やアジェンダがあったっていい。仕事の進捗確認、知識やスキルの伝達、メンバーの身の上話なども含めて。

ただ、マネジャーとメンバーとの間で期待値を統一させておくことはマストだと思う。期待値とは、この時間でなにを話すか・そこから何を得ようとしているかという目的のこと。お互いに納得できるアジェンダ設定を毎回必ず行うことが必要だと思う。

何について、どこまで明確にしておきたいのか、対話の最初にマネジャーから質問して、理想としてはメンバー自身に考えさせて言語化させておきたい。時にはマネジャーが追加したり整えたりすることも有効だと思われる。

どんな時間であったっていいけど、何を得たいかという期待値をそろえておかないと、徐々にメンバーの心は離れていってしまうということだ。

■ 相手がチカラを得られる時間とするために _ 方法|相手のためにきく

相手がチカラを得ることができる「きき方」とはどんなものだろうか?
事務的な確認やティーチングではなく、メンバーの仕事ぶりを向上させるためのコーチングである場合、メンバー自身が自分の力で思考を整理して、さらには新しい気付きを持てると納得感をもって行動でき、ひいてはそれがチームへの貢献ともなり得る。

アジェンダ設定において納得感をもって定めたテーマや、現在地と目的地までのギャップの把握、どうやったら目的地までたどり着けそうか、など、決してマネジャーが考えを押し付けることなく、メンバーが自らが考えて気付き、きちんと腹落ちしたものが言葉として出てくるように導きたい。

そのために、メンバーの思考を整理すべく、また最低でも思考を妨げることがないようにリアクションし質問を繰り出していきたい。

>>> まずは、肯定も否定もしない・ただ相手を受容する
安易な返答はレッテル貼りとなってしまい、相手の思考・発言を停止させる可能性が高い。
相手の話に対して「すごい・すごくない」や「おもしろい・おもしろくない」など感想を伝えることは、普段の会話であればコミュニケーションを円滑にするのに有効であるかもしれない。しかし、何かの物事についてメンバー自身がどう受け止めて整理をつけようとしているか、その作業をこちらの安易に発した感想でせきとめてしまう。それは、気付きへの発展も止めてしまうことにもなる。
肯定や否定のジャッジはせず、まずはメンバーの話をすべて受容して、そこからどんな洞察がうまれたのかなどを引き出していきたい。

>>> そして、相手のために「きく」姿勢を持つ
この[ 1 on 1 ]は相手のための時間であるということを大切にしたい。
相手の思考を整理して向上させるために「きく」時間、つまりは相手のために問いを繰り出してその答えを受容する時間だ。
そのため、自分の興味を満たすための質問は避けたい。自分のための質問はレッテル貼りと同様に、聞き手の主観に大きく左右されるものであり、相手の話しの核心からそれてしまうこともあるためだ。
そして、相手の思考を整理するための問いかけをしていく。現在地をどう捉えているか、目的地についてはどのようなイメージを持っているか、そこまでのギャップはどんなものか。さらには、目的地にたどり着くためにはどうしたらよいと思っているか、活用できる自分の強みとはどんなものか、パートナーシップを結べたらいいなと思う他のメンバーはどんな人か、過去に成功したことで再現できることはあるか、などいずれも未来を見て考えを促していきたい。

>>> やってはいけないこと
「相手のための時間」は、あくまでも相手が自分自身で思考を整理して深めていくためのもの。決して、こちらの自慢話、昔話、説教をするためにあるのではない。どうしても普段の会話の習慣として、話を盛り上げようと無理に話題提供しようとしてしまうこともあるだろう。しかしそれは相手にはまったく届いてはおらず、相手の時間を搾取している行為だと心得ておくべきだと思う。
また、これは繰り返しになるが、こちらの主観的な感想や意見を含んだ返答は控えたい。自分の感想を伝えるだけでもレッテル貼りとなり、相手の話やを妨げることになるからだ。つまりは、相手の思考を止めてしまうことにつながる。

>>> まとめ
相手がチカラを得ることができる[ 1 on 1 ]としたいなら、その時間は相手のための時間と心得ることが不可欠だ。言い換えれば、マネジャーが話す時間ではなく、マネジャーは相手のために良い問いかけを繰り出す役目(=コーチ)であるということだ。

■ 知っておきたい認知バイアス

普段、ぼくたちは誰かからの呼びかけや問いかけに対して、条件反射的にリアクションしている。
実際に返答したり、言葉にはしなくても感想を抱いたりしているけれど、それらは次に書いたようなバイアスにまみれていると言っていいそうだ。

自分の中から自然に発生するものに身を任せていると、相手のことをまったく受容できないまま「やりとり」することになってしまう。誰かと会話していても、お互いに独り言を言いあっているのと同じことになるのだ。

以下に挙げたようなバイアスのすべてを脱ぎ捨てることは不可能なのかも知れない。でも最低でも、このような自然の力が働いているとメタ認知して、相手の言葉をニュートラルに受け止められるように努力を続けていきたい。

  • 確証バイアス

    • 自分が気になっていることばかりが目に入るというもの

    • きくときには、相手が何を話したいのかをキャッチできるように注意を払いたい 

  • 一貫性バイアス

    • 他者に対して、過去の言動や態度が現在も将来も一貫して変わらないと思ってしまう

    • 相手の一部分がすべてと思いこんでしまって、過度な期待を寄せたり的外れな非難を抱いたりしないように注意したい

  • 透明性の錯覚

    • 相手も自分と同じような気持ちだろうと思ってしまう

    • 安易な想像に身を任せずに「いまはどんな気持ち?」などと確認したい

  • 後知恵バイアス

    • 物事が起きた後で、それが予測可能だったと思ってしまう

    • 相手が課題や悩みを話し出すと、ついつい「○○したらよかったのに」というように捉えてしまうが、渦中にあっては当事者しか分からない困難さがあることに留意したい

  • 生存者バイアス

    • 失敗した例を見ずに成功した例だけを基準に判断してしまう

    • 相手が課題や失敗などを挙げ始めると、ついつい過去の成功事例を紹介したくなるが、それが相手にとって必ずしもよい情報となるということではないと留意したい

  • 根本的な帰属の誤り

    • 問題の原因を相手の性格や能力のせいだと考えてしまう

    • 実際は仕組みや運用に課題があることが多いにも拘わらず、相手だけに要因を求めてしまう。一段高い視座をもって向き合いたい

  • 同調バイアス 

    • 自分の意見とは異なっているものでも、相手や大勢の意見を支持してしまう

    • 相手が自分自身の意見を話していなかったり、周囲の意見に覆い隠されてそもそも相手自身も自分の考えに気づいていなかったりする。また聞き手との利害関係に影響されて話す内容が変容している可能性もある

    • 対話においては安全な雰囲気づくりや、対話の機会を継続させることで相手の核心部分に迫っていきたい

■ さいごに _ 何回も継続すると必ず変容を見出せる

これからメンバーとともに[ 1 on 1 ]にトライしていくなら、
何回も何回も継続してその機会を持ってほしい。
それだけの価値は絶対にある。

こういうと使い古された言葉みたいで、あまり響かないかも知れないけど、のべ数十人にコーチングしてきて、今ぼくが本当に思っていること。
それは、継続して対話していると相手は必ず変容していく、ということ。

ぜひとも、メンバーたちの変容を一番近いところで見ていてほしい。
心強い伴走者となってほしい。

メンバーたちは、[ 1 on 1 ]で得た気付きを持って日常に取り組んで、
そこからまた新たな学びや気付きを持って[ 1 on 1 ]に帰ってくる。

メンバーたちは、良質な問いを浴びて、また、その答えをきちんと受容してくれるマネジャーがいれば、それぞれ自分のチカラで思考を整理・深化させたり、新しい視点を得たりして、必ず、変容していく。

ぜひその様子に触れることを楽しみに、個々に向き合い、チームに向き合っていってほしい。

ぼくも、長い旅に出たものだと感じているけど、
みんなと一緒なら必ず遠くまで行けると信じている。

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以上です。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました!

マネジャーのみなさんにおかれましては
ぜひ、メンバーの変容をめざして、みなさんそれぞれの内省を発火させてあげてくださいね。




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