ただ好きな仲間と楽しいことをしたい。“WORK”と“PLAY”の曖昧な境界が生み出す新しい仕事
SNS時代のプロモーション企画集団「餅屋」の発起人・ふくま まさひろは、社員から“遊ぶように仕事をしている”と評される人物。
自身が朗らかに、好きな人たちとワクワクすることに取り組む──そのふくまの無邪気な心意気の原点を尋ねます。
ふくま まさひろ
テテマーチ株式会社 CCO(Chief Communication Officer)
Social Contents Studio『餅屋』代表
企業のSNSコミュニケーションの企画提案、及び自社のマーケティング企画等を兼務。アドテック東京2019・2020公式スピーカー
仕事じゃなかったとしてもやりたいと思えることを仕事にした
── ふくまさんと一緒に働く方に「ふくまさんってどんな方なんですか?」と聞いてみたんです。そうしたら「仕事がプライベートみたいな人だよ」って。今日はそういった“仕事の価値観”をふくまさんとお話したいなと思っています。
なるほど……僕、ワークライフバランスって言葉、あんまりしっくりこなくて。
── そうなんですね……。ちなみにその心は?
“ライフ”と“ワーク”が境界線で分断されているのって変な感じがしませんか? 本来、ライフの中に“ワーク(仕事)”と“プレイ(遊び)”があって、それらは明確な境界線が設けられているものではないと思うんです。
── ワークとプレイ、それらが折り重なって「ライフ」を作るということでしょうか。
そうですね。仕事も遊びも、自分がやりたいことじゃないと前向きに楽しくなんて取り組めないタイプなんです。
── 普段の仕事も、ふくまさん自身が「やりたい」と望むことを実現しているんですか?
もちろん。たとえば、餅屋では秋頃にとある企画を開催しようとしているんです。それは、会社のイベントとして実施しますが、もし会社からOKが出なかったら個人の活動でもやろうかなって思うくらい思い入れがあるもので。
僕自身、その企画を実施するにあたって「会社のためになるかどうか」はもちろん判断軸としてありますが、それとは別に「自分自身が本当にやりたいか、熱量を持てるか」という観点をとても大切にしているんです。
── それってすごいですね。お金のためとか、組織のためだけではなく、自分がやりたいことを重視しながらやる……。
自分の心からやりたいことが、給料をもらいながらできる。すごく嬉しいことですよね。そして、やりたいと心から望むことを続けているうちに、だんだんと仕事やプライベートの境界線ってなくなってきたんです。
── 気がついたらその境界線はグラデーションのようなものになっていたんですね。
そうですね。僕自身はそれらを分断しようとか、意識しようとか、考えていないように感じます。
プライベートで生まれた輪が循環する世界
── その曖昧な境界線を持っているのって、ふくまさんの元来のスタンスなんですか? それとも、転機があってだんだんと変化していた……?
う〜ん、どうでしょう。おそらく、前職のWeb広告代理店に転職した頃が変化のタイミングだったんじゃないかと思います。前職に入社した当時、僕の周りには業界の友人がほとんどいなかったんですよ。それがすごく寂しいなって思って。
── 情報交換したり、仕事の話が気軽にできる同世代ってたしかに重要ですね。
そこで、ひとりだけいた同世代の友人と一緒に「WebAd飲み会」を企画したんです。友人づてで参加してくれたり、人が人を呼ぶ形で、だんだんと横のつながりが増えていき……これ、すごく楽しいなと。
── そういったイベントで繋がる人とは、どのような関係になっていくんですか?
最初はプライベートで遊んだりお酒を飲むような仲間なんですが、しばらくすると仕事の相談もするようになりました。今の僕のスタイルは、そういった遊びの上に成り立っているものなんだと思います。
── 腹を割って話せる関係性だからこそ、困ったことがあるときは相談できるし、人となりを知っているから仕事の話もスムーズに進みそうですよね。
特に、僕たちが携わっている広告やマーケティング領域の仕事は、生活に密接したものなんですよね。企業と生活者のコミュニケーションに関わるものなので。そう考えると、日常で積み上げてきた人間関係やその中で生まれる何気ない対話から日常に息づく企画を考えたり、それをフランクに話して実現できたりと、巡り巡って仕事に活きることも珍しくないんです。
「こいつとなら仕事しても良いかも」と思われたい
── 普段、クリエイターさんと一緒になにかを企画する機会が多いと思うんですが、親しい間柄の人にお願いすることで感じる進めやすさ、楽しさってどんなことですか?
まず、人となりをよく知っているから企画が立てやすいことです。「あの人となら、こんな風に商品を紹介できるかも」のように、具体的な仕事のイメージが膨らみやすいと思います。
──好きなものや興味関心などを日頃から対話しているからですね。
そうですね。あとは、企画の進むスピードが段違いなこと。仕事が生まれたタイミングで、ラフにメッセージを送れる関係性を培っていると、進行スピードも早いし、企画の精度も上がるしで良いことが多いです。
── メッセンジャーやLINEなどで相談するイメージですか?
まさしく。「〇〇さん〜今相談いいですか?」「いいっすよ!」みたいな感じで会話が始まり、雑談を交えつつ仕事の話を進めるんです。そうすると、楽しいアイデアがお互いから生まれていく。結果として、双方にとって良い仕事ができるんですよね。
── ちなみに、初めて仕事をお願いするクリエイターさんってあんまりいないんですか……?
いやいや、もちろんいますよ。SNSを見ていて、すごく好きだなと思うクリエイターさんはたくさんいるので、雰囲気が合いそうだなと思うときにはご連絡してお仕事の相談をさせてもらっています。でも、堅苦しいメールとかではなく初めてでも比較的ラフに連絡しちゃうかも。
── よく見るのは、挨拶→案件詳細→金額感みたいな流れかなと思いますが……どんな風に連絡を送っているんですか?
基本的に、最初の連絡では仕事の詳細には触れないです。仕事の細かな情報を書いちゃうと、途端にテンプレ感が増して不特定多数に送る連絡のようになってしまう気がして、あんまり好きじゃないんです。
だから僕は、自己紹介→普段SNSで作品を見ていることや惹かれた作品の話→一緒に取り組みたい仕事があることという流れで連絡を送って「興味があれば連絡ください!」で締めちゃいます。
── 連絡の方法を問わず、チャット文化らしいコミュニケーションの取り方なのかもしれないですよね。一往復ですべてを語りすぎない点が特に。
あとは、なるべく堅い雰囲気にならないように末尾は「!!!」「。。。」にしてみたり、顔文字や絵文字を交えたり……LINEのクリエイタースタンプを作っている方と連絡を取るなら、そのスタンプを購入してみたり。とにかく「この人と仕事をしてみてもいいか」と思ってもらえるような人間でありたいなって考えています。
ワクワクの行く末は未来の自分次第
── 改めて話を聞いていると、本当に仕事もプライベートも関係なく「人と接すること」そのものにふくまさんが楽しさや喜びを見出しているように感じます。
え〜そうなんですかね(笑)。まあたしかに、仲間と一緒に楽しいものを作りたいという動機はすごく強いのかもしれません。餅屋に関わるメンバーはみんな、人と関わり合いながらワクワクしたいと思っているのかなって感じますね。
── これからふくまさんが挑戦したいことってなにかありますか?
クライアントワークだけではなく、餅屋主催のイベントをどんどんやっていきたい。その一つとして、リアルでのイベントを今考えています。
あとは、僕、お笑い芸人になりたいなって思っているんですよ。友人と二人で漫才のネタを作っているので、今年はM-1グランプリの一回戦に出場しようと思っていて。その動向も応援してもらえたら嬉しいです。
── ほう……楽しみに……しています……(笑)。
「将来はこうなりたい」みたいな目指す人物像がないんですよ、僕。だからその瞬間にやりたいこと全部やる。二足、三足以上のわらじを履いて楽しいことに全力で向かう人生を歩みたいですね。
取材・文:詩乃(Photoli)
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