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「#これからのインフルエンサー」イベントレポート【DAY2】 〜芸能人とインフルエンサーの垣根はあるのだろうか〜

「#これからのインフルエンサー」イベント概要

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ここ数年で、主にSNSを通じて企業の商品やサービスをPRするインフルエンサーと呼ばれる人々が次々と現れています。それに伴いインフルエンサーマーケティングという手法が生活者と企業を繋ぐ新たな架け橋となりました。一方で、インフルエンサー及びインフルエンサーマーケティングを取り巻く市場では様々な課題も生じています。単純にSNSのフォロワー数によりPR費用が決定される価格設定、PRであることを隠して行われるステルスマーケティング問題や、それらを扱うインフルエンサー専門プロダクションの在り方も問われています。
今、インフルエンサーの市場はどうなっているのか?そして、企業はインフルエンサーとどう向き合っていくべきなのか?モデレーター:テテマーチ株式会社 福間昌大が、インフルエンサー界隈のスペシャリストをお呼びし、5日間を通して紐解いていきます。

──本記事では、DAY2のイベントレポートをお届けします。DAY2のテーマは、「芸能人とインフルエンサーの垣根を考える」。

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タレントのマネジメント、メディア運営、トレンド調査事業などを行う株式会社N.D.Promotionの金丸雄一氏、テテマーチ株式会社からInstagram分析ツール・SINISのグロースに注力する取締役・松重秀平が登壇しました。

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4年前のインフルエンサーマーケティング

福間:本日はよろしくお願いします。

実は今日の登壇者のお二人は、4年前の2016年10月、インフルエンサーという言葉が出始めた頃に豪華登壇者と学ぶ!インフルエンサーマーケティング勉強会というイベントに一緒に登壇されていましたよね。

松重:そうですね。懐かしいですね。

これからのインフルエンサーDay2 (1)


福間:4年前と比べて、インフルエンサーマーケティングはどう変わったと思われますか?


松重:当時はインフルエンサーを使った施策に成功する企業が少しづつ出てきたタイミングでした。なのでイベントでは「インフルエンサー」とはこういう人たちです、などのお話をした記憶があります。
4年前のインフルエンサーを使ったPR施策といえばSNSに商品の投稿をしてもらったり、イベントに招待するくらいしかありませんでした。インフルエンサーにPRを依頼しているにも関わらず、PR表記をつけたがらない企業も多く、PR表記の必要性を説明するのも一苦労がありましたね。


福間:4年前と2020年の現在では、状況も変わってきているということですね。

インフルエンサーという枠組みの中に垣根はない

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福間:今回のテーマは「芸能人とインフルエンサーの垣根を超える」ですが、芸能人とインフルエンサーの違いとは何でしょうか?


金丸:そもそもインフルエンサーと芸能人は、対になる概念ではありません。強いて分けるなら、”芸能人””芸能人以外の人””メディアにでる人””メディアを視聴する人”だと思っています。しかしそれらの区分けもマスメディア時代の話です。ソーシャルメディアが登場したことにより、その中で影響力や認知度のある存在がインフルエンサーとなり、そこに一般人と芸能人の垣根はなくなった、と言えるでしょう。

数年前はメディアや芸能人、インフルエンサーについて「マスメディアなのか?ソーシャルメディアなのか?」という視点で考えることがあったと思います。現在では芸能人が当たり前にSNS上に登場し、一般の人もソーシャルメディアで認知度を得てからマスメディアに進出する流れが一般的にになったことが、垣根のなくなったポイントだと思います。
 
当社に所属しているメンバーはSNS上で情報発信を行うインフルエンサーでもあり、テレビなどのマスメディアに出演する芸能人でもあります。「ソーシャルで力をつけて、マスメディアで活躍する」がN.D.Promotionのスタンスなので、定義は曖昧であるものの総じてインフルエンサー発の芸能人であると言えますね。
 

インフルエンサーありきの企画を考える

──「SNSで力をつける」ことによってどのような効果が現れるのでしょうか?DAY1では、インフルエンサーキャスティングについて活発な議論が行われ、キャスティングの前の企画の重要性についても語られました。

金丸:現在も、当社に所属しているメンバーに対してフォロワー数が多いからという理由で依頼がくる場合もありますが、影響力が拡大するにつれて、インフルエンサーに合わせた企画の提案も増えていくことを実感しています。
 
企画のやり方には「企画キャスティング」(企画があり、それに合う人を探すという広告代理店がよく行う手法)、「キャスティング企画」(インフルエンサーがいて、その人に合った企画を考える手法)の2パターンありますが、後者の「キャスティング企画」を推進していくべきと考えています。企画を通してのインフルエンサーの見え方は重要なポイントなので、広告代理店の方やキャスティング会社が、インフルエンサーに合わせた企画提案をもっとしていってもらえるようになればいいですね。 


事務所はインフルエンサーに必要なのか?

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福間:最近だと、YouTubeをメインとしているインフルエンサーさんが事務所を脱退するニュースが多いように思えます。そもそも事務所は必要なんでしょうか?

金丸:正直、インフルエンサーにとって事務が必要かどうかは人によって違っていてどちらが正しいという事はないと思っています。セルフマネジメント・セルフ・プロデュースが得意でない人であれば、事務所に所属するメリットは大きいと思いますね。
 
インフルエンサーは人であるけれど、流通している商品と同じです。

フリーのインフルエンサーは自分でやりたいこと・作りたいものを中心に展開していくプロダクトアウト型で、自分という商材が良いので勝手に売れていくパターンが多いです。そういうインフルエンサーでも、後々マーケティングの視点を取り入れることや、インフルエンサー自身やコンテンツのアップデートは必要です。しかし、第三者による客観的視点がないと自身のアップデートのハードルは高く、その際に戦略を立てる事務所の存在意義は大きいと思います。
 
松重:商品やサービスの内容を問わず、なんでもかんでもPRの依頼を受けてしまうインフルエンサーさんもいますよね。そういった点ではインフルエンサー側もリテラシーが育っておらず、フォロワーの不信を買ってしまう場合もあるのではないでしょうか?

金丸:インフルエンサー業界の作法はオープンにされていたり知見が共有されているものではないので、フリーで活動しているインフルエンサーが受けた案件の適切な進行ができずに、地雷を踏んでしまうパターンもあります…。それが原因で再起できなくなったインフルエンサーもいます。

インフルエンサーの価格設定

福間:広告代理店側の立場にいる人間としては「インフルエンサーの価格設定」が気になっています。そのあたりのシステムなどはどうなっているのでしょうか?

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金丸:出演に関するタレントの料金メニュー表といったものは基本的に存在しません。タレントの出演費は各々の事務所や代理店の方が決めて、金額を出すことが多いですね。

事務所がインフルエンサーの出演費を設定する際のポイントは「クリエイティブ」「露出」「(クライアントから提示された)金額」ですね。

「クリエイティブ」はその名の通り、良いクリエイティブを作ってくれそうかというポイントです。まずここを一番最初に気にします。

次に「露出」。案件でありながらも、インフルエンサーのリーチが拡大すれば一番いいですね。

そして最後に「金額」。正直、金額だけで仕事を選ぶ事はしません。
N.D.Promotionでは、この3つのバランスを依頼を受けるかどうかの基準にして、吟味の上受ける依頼を決めています

クリエイティブ自体が良くないと費用対効果は下がることがあります。なので、広告費にお金を割いて、コンテンツにお金を割いていない企画は嫌厭します。企画全体の費用の中でリーチを伸ばす運用にばかり予算を割いて、コンテンツ制作にお金を全くかけないような杜撰な企画は受け入れづらいですね。逆に、出演費が高額でなかったとしても、コンテンツのクオリティに期待できるのであれば受けることもあります。
 
企画に参加するクリエイターさんが良いクリエイターさんであったり、ロケ地が良い場所だったりすると、インフルエンサーも企画への気持ちが乗りやすくなり、「自然と企画に関するSNS投稿を頻繁に行う流れ」が起きます。(例:インフルエンサー自身が実際に旅行をする観光地のPR案件など)

コンテンツ制作にお金を割くことで、制作する側にとってもインフルエンサーにとっても結果的にハッピーな企画になると思います。

芸能人のSNS進出

福間:最近は、テレビに出る芸能人がYouTubeに進出するケースがとても増えていますよね。その一方で、SNSで活躍していたインフルエンサーがテレビやラジオなどのマスメディアに出演する機会も増えていますね。

金丸:確かにマスメディアに出演していた芸能人の方がYouTubeなどのSNSに進出する例が増えていますが、芸能人だからといって、必ずしも成功するとは限らないのが難しいところです。

そもそも、マスメディアとソーシャルメディアは作り方に違いがあります。マスメディアの番組には多くの場合、構成作家がいて、番組を盛り上げる為の芸能人のふるまい方も決まっており、そこに演出が加わります。一方で、ソーシャルメディアは、基本的に発信者の素のキャラクターになるので、向いているかどうかがはっきり出ます。ポテンシャルがあって、ソーシャルメディアに向いている人は自然と伸びますが、ソーシャル向きでない人は伸びません。

素質があるかどうかに左右される、という点においては芸能人がSNSに進出して成功するか否かは、一般人がインフルエンサーなれるかどうかとあまり変わらない気がします。

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松重:「素のキャラクターの魅力」は重要なキーワードですね。SNSではフォロワー数などの数値が見えすぎるがゆえに、そこに囚われてしまいがちです。広告代理店の立場の人間として、クライアントにはフォロワー数だけではなく、エンゲージメント(SNSの投稿にいいね、RTなどの反応すること)やコミュニケーションの量の方が重要だと説明する機会も多々あります。
 
「エンゲージメントをKPI(目標)に据えた結果、フォロワー数も増加する」という流れが自然であるにもかかわらず、適切な数値を見ることができず、フリーのインフルエンサーは自分が持っているフォロワー数しか見てないこともあります。しかし、フォロワー数だけを捉えることは本質的にはズレていると感じます。

インフルエンサーが人格や個性を活かしてコンテンツを作る。それが魅力的なコンテンツであるからこそ、結果として後からフォロワー数がついてくる。これが自然の流れです。あまりフォロワー数に囚われてはいけないなと思います。

 
金丸:SNSは人格が表れるがゆえに、テレビなどマスメディアでのキャラクターとの乖離が起き、芸能人のブランディングに悪影響を与えてしまうことを各事務所は気を付けています。
事務所によってはSNS使用のルールが設定されている場合もあります。
 
特にTwitterは人格がそのまま表れるSNSなので、大手の芸能事務所だとInstagramはOKでも、Twitterは禁止しているところもあります。

インフルエンサーが今後生き残るには

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福間:SNS利用人口とメディアの選択肢の増加、芸能人のSNS進出などにより…インフルエンサーは日に日に増えていきます。

インフルエンサーとして長く、フォロワー(ファン)と友好な関係を構築し、クライアントと仕事をしていくためには何が必要とされているのでしょうか?


松重:先程の話でも出ましたが、「フォロワーの数」だけ追っている人は長期的に生き残ることは難しいと思います。
インフルエンサーとして長く活躍するのは、「コンテンツを作れる人」であることです。

いままでのインフルエンサーは憧れの存在という側面が大きかったのですが、今後は求められているコンテンツを提供できるインフルエンサーが影響力を増していくのではないでしょうか。

ファンやクライアントの期待を汲み、魅力的なコンテンツを発信していく人は強いですよね。

金丸:SNSは、いままで得られなかった情報が得られるメディアです。

「専門性を掘り下げていく」ことが生き残るポイントだと考えています。
また、いままでは例えば「顔が可愛い」というだけでフォロワーが増えていましたが、いまは「人気が出て支持を得られる過程とストーリー」が重要になってきます。

美に気をつけている人は普段どんな努力を行っているのか。その過程をうまく見せられる人が今後は伸びていくでしょう。

素の自分がさらけ出せるSNSだからこそ、完成形のインフルエンサー像ではなく、フォロワー(ファン)と一緒にイメージを形成していくインフルエンサーこそ、成長し続けます。
 
芸能人やインフルエンサーという枠組みに囚われず、自分のキャラクターと、そこから展開されるストーリーこそがインフルエンスにつながるのだと思います。 

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DAY2では、芸能人とインフルエンサーの垣根が消えつつある現状をもとに、インフルエンサーと事務所の関係性や、今後伸びる存在、芸能人のSNS進出についてお話いただきました。

DAY3では、「インフルエンサーマーケティングの新潮流『ネオインフルエンサー』の出現」をテーマに、インフルエンサーの最新のトレンドについてトークを展開します。


スピーカー:金丸雄一

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株式会社N.D.Promotion 代表取締役
1987年北海道生まれ。大学卒業後、2012年株式会社N.D.Promotionを設立。ソーシャルメディア黎明期よりSNSを活用したタレント育成・開発や、 女性向けwebマガジン「Nom de plume」の創刊を行う。現在は、博報堂グループとZ世代(1995年以降生まれの若年層)を対象としたシンクタンク組織「Z総研」の発足や、TikTok広告クリエイティブの提案・制作・キャスティングなどスマホネイティブ世代へのアプローチや行動分析・コンテンツ開発などに従事している。

スピーカー:松重秀平

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テテマーチ株式会社 取締役(COO)
2015年6月に創業したテテマーチ株式会社にてSNS事業を立ち上げる。SNSのマーケティング活用支援を行いながら、Instagramのビジネス活用メディア「インスタアンテナ」、Instagramキャンペーンツール「CAMPiN」などのサービスをリリース。 2020年は、サブスクリプション型のSaaSである「SINIS(サイニス)」の立ち上げとグロースを行う。 


モデレーター:福間昌大

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テテマーチ株式会社 コミュニケーションデザイン室
1990年生まれ。学生時代、クラブイベントやファッションショーの運営を経験。大学卒業後、2社を経てテテマーチ株式会社に入社。同社にて、企業のSNSコミュニケーションの企画提案、及び自社のマーケティング企画等を兼務。アドテック2019・2020公式スピーカー、個人の活動としては、20代のマーケターイベントの企画や、chill outをコンセプトにした200人規模のイベント等を開催している。趣味は囲碁とファッションとTwitter。
 
レポート執筆:野里のどか(ブログ / Twitter

ソーシャルコンテンツスタジオ『餅屋』

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テテマーチ社では、SNS時代のプロモーションに特化した企画集団『餅屋』を設立いたしました。

餅屋は、インフルエンサーを単なる拡声器としてではなく、コンテンツを共に創り上げるクリエイターとして考えています。多くの実績を持つプランナーとチームを組み、SNS時代にあわせたコンテンツを「創る」から「広げる」までプランニングいたします。

餅屋へのお問い合わせはこちら↓

公式サイト:https://tetemarche.co.jp/mochiya/

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