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イラクサをフランス風に食べると行方不明になった
春に色んな野草を食べてみた記事を公開したところ、「イラクサのスープについて書かれた本を思い出した」という声がありました。野草を食べたときもシンプルな調理しかしなかったので、今回フランス風の調理ということでイラクサでキッシュとスープをつくってみました。手袋をはめ、ペンチを使ってイラクサの若葉を近場でどっさり採集してきました。
イラクサのキッシュ
キッシュっていうのはフランスのアルザス地方の郷土料理なんですね。フランスは料理に乳製品が使われる事が多い。牛乳、クリーム、バター、チーズ・・・キッシュはこの全てが材料に含まれています。おいしいし私も好きですが、正直、ちょっと胃に重いし、手間もかかるし、量も作らないといけないし、普段あんまりキッシュを作りません。が、イラクサをキッシュにしたらどうなんだろう、という好奇心でつくりました。レシピは普通のキッシュと同じです。カロリーは知りません。材料はイラクサをほうれん草にしても大丈夫です。
材料 (4人くらい)
小麦粉 250g
バター 125g
水 50g
卵 3個
生クリーム 200ml
牛乳 200ml
チーズ 100-200g
イラクサ 200-500g
ベーコン(ラードン) 200g
塩コショウ 適量
ナツメグ 適量
作り方
生地:
バターを指でつぶしながら小麦粉と混ぜ合わせ、よく合わさったら水を加え、ひとかたまりにして冷蔵庫で寝かす。(最低30分)
アパレイユ:
卵、牛乳、クリーム、を混ぜ合わせ、塩コショウ、ナツメグを加える。イラクサは茹でるか炒める。ベーコンは小さくカットして炒める。
焼き上げ:
生地をのばして型に敷き、空気穴をフォークであける。生地にイラクサとベーコンを適当に散らす。そのうえから卵液を流し込み、そのうえにチーズを散らす。180°のオーブンで30分焼く。
キッシュは重めなのでサラダと一緒に食べるのがお勧めです。
さてお味は・・・
・・?・・ふむ・・・おいしいけど・・・イラクサどこ・・?
危惧していたとおり、チーズとかバターとかベーコンとか主張の強い材料に負けてる。イラクサの存在感がほとんどない。食感もほぼほぼない。ほんのり青っぽい味がするかな・・・量が少なすぎたのか、ベーコンを入れないほうがよかったのか・・・うーん・・・普通にキッシュおいしいですけど、あえてイラクサを入れる必要があるかといえば・・??
イラクサのスープ
フランスではスープといえば一般的にはポタージュの事を指します。野菜をブイヨンで煮込んでブレンダーやミキサーなどで攪拌したドロッとしたスープのことです。色んな野菜を角切りにしてコンソメで煮る野菜スープのようなものはフランスには無いです。ポトフやラタトゥイユという料理がありますが、あれはスープじゃなくて野菜の煮込みとして野菜を食べるもの。というわけでイラクサのポタージュスープをつくりました。
材料
イラクサ 200-500g
ブイヨンスープ 500ml
じゃがいも 1個
玉ねぎ 1個
生クリーム 適量
塩コショウ 適量
ブイヨンスープ(水にコンソメキューブやブイヨンを溶かしたもの)に薄切りにしたじゃがいもと玉ねぎを加え煮る。更にイラクサも加える。
ジャガイモが柔らかくなったら、火からおろし、ブレンダーやミキサーなどで攪拌する。仕上げに生クリームをたらし、塩コショウを適宜加える。
クリームを加える前はすごく濃い緑色でした。クリームをくわえると見た目がかなり抹茶にみえる。これは期待できるか・・・
・・うん・・・味はほとんどジャガイモのポタージュスープです。
ブレンダーで攪拌しちゃってるから食感も何もないし、色が緑なだけで、
イラクサの「味」ってやつがまったくしない。イラクサどこに行ってしまったんだ・・・姿は見えるのに、行方不明だ。
堀江敏幸 著『雪沼とその周辺』という本にイラクサのスープの描写があるとききました。どんな風に描かれているのか今度読んでみます。
イラクサは調理しすぎると行方不明になるが、とんでもない力を隠してもいる
今回、イラクサを堪能するぞと思って調理してみたものの、「存在感がない」、「行方不明」という結果になりました。フランスの野草の主な調理法、サラダはいいとして、オムレツ、キッシュ、ポタージュ、ペストは、野草の風味を生かしたものとは言えないのではないか、と薄々思っていましたが、今回料理してみて改めて思いました。(主張の強いギョウジャニンニクはペストなんかには向いてるとは思います。)そもそもイラクサはクセがほとんどない、という事もあった。
それでもなぜ人々はイラクサを食べたのか
なぜ人々が痛い思いをしてまで採集して、そんなに味もしないのに食べたのかといえば、それはイラクサには高い効能があるからです。
ビタミンA.B.C.K、βカロチン、鉄分、マグネシウム、ケイ素、ミネラル、ポリフェノールが含まれており、またヒスタミンが含まれている事から花粉症、アレルギー改善に有効、血行促進や血液浄化などの作用もあり、ケガの早期回復やリウマチ、痛風、関節炎などにも有効、とのこと。
えっ、すごい。
イラクサ、君は一体何者なんだ。味が無いとか食感が無いとか存在感が無いとか散々言ったけど、目には見えない効能がこんなにもあるのか!
だからトゲで身を守っていたのだね。
しかもスープにすれば大量に摂れるのだ。理にかなっている。
だけど私はやっぱりイラクサの存在感を確かめておいしく食べたい。
そんな私のおすすめの食べ方は、サラダやおひたしです。食感もあるし味も楽しめる。茹でたイラクサにベトラーブを合わせ、レモンやバルサミコ酢で味付けしたサラダは色がきれい。茹でたイラクサにだしや醤油を合わせたおひたしもいいね。あとごまが合いますよ。
日本の野草の調理法である、天ぷらやおひたしや和えものっていうのは、素材を生かした料理なんだなとあらためて思いました。
(2019.5.16 加筆・修正を加えています)
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