自分の輪郭
AirPodsを買った。
今まで使っていたBOSEのイヤホンが随分と古くなったので、互換性も考えて軽率に乗り換えてみた。
耳にフィットするし、音質もいい。
しかも、今まで使ったことがないノイズキャンセリング機能までついてるらしい。
よし、作業する時に使おう。
そう思い、大好きなスタバへと歩みをすすめる。
アイスコーヒーを片手に着席し、
AirPodsを耳に差し込む。
周りの音が聞こえなくなる。
なるほど、これはすごい。
たしかに集中力がアップする気がする。
でも、作業していて、途中で思う。
静か、
静かすぎる。
ふと、イヤホンを外す。
人の話し声、ミルクをスチームする音、モバイルオーダーの通知音、BGM。
当たり前すぎて、すっかり忘れていたけれど、私たちの周りは音に溢れている。
そんな当たり前を実感してから、
もう一度、イヤホンをつける。
静か。
なんとなく、自分の輪郭が、なくなっていく気がした。
しばらくノイズキャンセリングはやめて、電車移動する時にもう一度だけ、ノイズキャンセリングしてみた。
真空管の中に閉じ込められたような気分になった。世界が自分1人になったみたいだった。自分の輪郭がどんどん失われていく。周りと溶けて同化してしまいそうだった。それが怖くて、イヤホンを外した。
そうして、電車を降りる時、また感じる。
人の声、アナウンス、発車音、ICカードをタッチする音。色んな音が混ざりあった世界。
そういう色んな音に自分を保たせてもらっているんだと気づいた。自分には輪郭があるんだと知った、そんな話。