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Harmony

無事に終演しました。
こんな風に、終演後の想いを綴るのは初めてで、いささか緊張します。

書いた文字はふた晩くらい寝かせろ、と大学時代によく言われたものですが、今日はこの熱量のまま出してしまいます。


さて、1年ぶりの舞台出演でした。
いつもなら、レッスンに行って、自分にない発想をお借りしたり、声を調整したりもするのですが、今回はそうもいかず…。
現場で、たくさんの先輩方に見てもらい、アドバイスを貰い、相談し、なんとか辿り着けました。

本当にこれで大丈夫なのかと考えながら、ぐちゃぐちゃになった地図を手に持って、稽古場で初めて試した日(本当に稽古場終盤の止め通しでギリギリだった)、皆が笑ってくれてほっとしました。

それでも、2回目はもう笑って貰えなくて、体感としてダメだったり、役としても上手くいかない要素なんかもあったりして、でもそれを上手く言語化出来なくて、どうしたらいいのかと、ものすごく悩みました。


その時に、自分の憧れる俳優が、

「表現という仕事はきっと、
勇気づける、とか元気づける、というのとは違う。相手に特定の感情を喚起させることを目論むことではない。自分が「いま」「ここ」で生きていることを実感すること。日常で取りこぼした「自己」と自分自身がそこで出会うこと。行為を通して「思い出す」こと。その様を臆面もなくみてもらうこと。その結果として、繋がること。繋がるかも知れない、と願うこと。」

とブログに書いていたのを思い出して


ああ、私は笑いを取りに行こうと思って人の目を気にしていたダサい状態だったんだなあと反省したのでした。

面白いって、演劇って、難しいです。

その後、演出家と稽古場に残って、スポ根みたいに歌い上げて、怒鳴り散らす機会を貰って、必死に生きること、必死に訴えることしか相手に伝わらない面白さがあると知りました。


まったく私という人間は、客観視する能力がない上に、小心者なので、ギリギリまでモゾモゾ芝居を変えてみたりしながら、えーん怖いよぉ、合ってるのかなあ、大丈夫かなあと思いながら、進みました。

今できることを全力でやったのですが、本番ではお客さまの温かさ、笑い声に救われてなんとか乗り切れたなと思いました。

特に、初日の笑い声が聞こえてからは、
安心して伸び伸びやれました。
(伸び伸びしすぎてトラブルを起こした日もあった🙂‍↔️妖怪歌詞飛ばしがいました)


それがいいのかは分からないけれど、
自分の役が作品のスパイスとしてしっかり機能しているんだという発見にもなったり、ここのシーンを目いっぱいやればやるだけ最後が面白くなるんだと言うことがわかったり。自分のお芝居やキャラクターどうこうよりも、台本の構造に救われたのでした。

なんて、自分の役割についてはそう書いてしまいますが、今回はトリガーアラートを出したりと、皆で話し合い、向き合い、取り組んだ作品でもありました。

タイミングがなく、自分の発言を公にしたことはないけれど、稽古場で演出家にしっかり自分の気持ちを伝え、話し合えたことは、とても大きかったです。

言葉に出さない人も、皆が作品のあり方について考えていた作品だったと思います。


これも、受け売りにはなりますが、
古代ギリシャの時代から、演劇は祝祭(日常を忘れて楽しむ)と議論(考え、意見を交換する)の2つの役割を持ち、続いてきたそうです。

国や文化を問わず、人々は演劇を見て非日常性を味わいながら、共同体の問題について考え、議論してきたといいます。

今回も一人一人が自ら考え、問題に向き合い、話し合い議論したことは、「演劇は議論である」という、はからずも演劇の原点だったのだろうなと思います。

そうして、役者が手放してお客様に提供されたものが、どんな風に受け取られるのか、どんな風に感じられるのか、どんな風に議論されていくのか、それも含めて、コメディとしてお見せしていながらも、そういう演劇だったのかなと今では思います。

とはいえ、誰かを傷つけることは極力なくしたい、辛いという人を助けたい、心がモゾモゾするような違和感を感じたことは伝えたい、そういう部分を大切にして未来へ進んでいきたい、と思うのでした。

自分がどうして演劇をやりたいのか、楽しいからとか、生きている実感が得られるからという以外に、どういう演劇に立ち合いたいのか、演劇を通して自分の何に向き合いたいのか、という自分の中の指針も見えた気がしました。

そんな、締めくくりで終わりたいと思います。この度は、本当にありがとうございました。


⟡.·*.

余談:)
稽古場や劇場入りしてのアップの時間で先輩方とお話する機会があって、予想外なことに自分のポテンシャルは面白いところだと何人かから言って頂けて嬉しかった。

でも、どこがなんだ?と自覚がない。
正直に「デ、デカいとこですか🥲?」と聞くとみんな違うと言う。「痩せてもいいですか?」と聞くと、勿体ないけど、いいよと言う。ますます分からない。自覚をもてたら強いねなんて言われて、えー?ますます、わからない!

私の面白さってなんなんだ
自分のいい所は、素直さしか自覚がないけど、それなのか?
うーん、やっぱり演劇は難しい。


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