自分を知る作業
お芝居だけで生きていけるようになりたいと本気で思い始めてから、苦手を克服するべく、あちこちのWSに通っている。
この半年間ほど、数々のワークを通して
自分に向き合う時間が格段に増えたのだが
そこで気がついたのは、
「私はいま何を感じているのか?」
と、丁寧に自分自身に聞くことは
日常生活ではあまりない、ということである。
私たちは、日常生活で出来るだけストレスを感じないように鈍くなり、忙しない日常に置いていかれないように必死に走り続け、生きている。見ざる、聞かざる状態の私たちは、当然心の声を聞く暇もない。
そんな取りこぼしてしまいそうな自分に
数々のワークを通して再び出会えることは
喜びであり、救いでもある。
今回は、私が感じたことのいくつかを、
【感情】と【感覚】のふたつに分けて、
ここに留めておこうと思う。
あくまで私の話で、ためになることは書いていないので悪しからず。
✿ 感情とわたし
私は、常日頃からコントロールの効かない感情たちに振り回され、支配されながら生きている、非常に感情的な人間である。
たとえば、気がついたら涙が溢れていたり、怒りで抑えきれない圧をだしていたり、癇癪をおこしてしまったり。
「もっと感情を押さえて生きられないのか」と言われることもあり、「感じないように感じないように」と自分を押さえつけていた。
が、どうやらそれは演劇においてはあまり良くないことらしい、と知ってやめた。
いまとなっては、瞬発的に、瞬間的に溢れ出す感情の行き場がなく、完全に悩まされ、持て余している日々である。
こんなに感情的に生きていて、感じているんだから、取りこぼしている私なんていないじゃないか?と一瞬思うが、ワークを経て向き合うと、やはり取りこぼしまくっていることに気づくのであった。
✿ 感情に触れるワーク
さて。
先日、「特定の感情が充満する空気に入る」というワークをした。その空気に触れると自分の内面が刺激され、触れた空気と同様の感情がフツフツと身体の中心に湧き出てきた。しかし、驚いたことに、フツフツと湧き出てくる感情は滾ることはなく、ただ大人しく、フツフツと生まれ続け、そこにあるだけだったのだ。つまり、私が日頃から悩まされている激情や衝動は全て外部からの影響によって、初めて生まれるものなのだと気付かされた。
さらに、ワーク中にあらゆる感情に触れる中で、感情の中でも、自分がよく使う感情が存在していることを知った。たとえば「悲しみは浸っていられるから好きだ」とか「怒りはパワーとカロリーを使うけど割と居心地がいい」とか。自分の癖を知ることかできるのだった。
❀ 感覚とわたし
続いて、感覚の話。
コロナ禍になり、マスク着用が日常的になったことは私の五感にかなりの影響を及ぼしたといえるだろう。
マスクは、私にとって自分と世界の間に何か一つ遮断できるものがある状態だ。
自分をさらけ出さなくていい感覚が、見られていないような感覚が、自分を守ってくれているようで安心した。圧倒的に楽だ。そう、楽をして生きていたのだ。
❀ 感覚を丁寧に探るワーク
そんな、遮断された私。
「丁寧に五感ひとつひとつの感覚を開き、味わう」ただそれだけというワークに出会った。
視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚
ひとつひとつを丁寧に感じる作業。
その中で感じたことを、ここに留めておく。
【 視覚 】
視覚が1番感じるのが苦手だ。何度も見ることで、そうだったのかと気づくことが多く、普段どれほど見逃しているのかと思う。
日頃から、人と目を合わせるのがストレスで、嫌なものを見ないようにしているからそのせいなのだろうなと思う。コミュニケーションをはかろうと思うとみれるのだが、1番情報を得られるツールだから、極力使わないようにして逃げている自分がいることにハッとさせられる。
【 聴覚 】
聴覚が1番好きだ。研ぎ澄まされていくうちに、音が増えていくのが楽しい。心が踊る感じがする。足音や息で人を感じられる。皆と繋がっている気がする。
【 触覚 】
触覚が1番嫌いだ。いろんなものが纏わりついて、身体が重くなって心がモゾモゾする感覚が気持ち悪い。もしかしたら、纏わりつく中に他者からの視線も含まれるのかもしれない。ワーク中は自分と向き合う作業なのであまり感じないが、普段から私を縛る「人に見られている」という自意識もここに付随するのかもしれない。
【 嗅覚 】
嗅覚は結構敏感な方だ。日常的にも匂いで頭が痛くなってしまうほど。日頃から匂いに触れることで、色んな感情を得る。いつも天気の匂いや季節の匂いを感じる。懐かしい匂いに触れると急に思い出が降ってきて、ノスタルジーな気分になる。嗅覚は、もしかしたら、私にとって1番味方になってくれる感覚かもしれない。
【 味覚 】
美味しいものが好きだし、日頃からコーヒーの風味のテイスティングをしたりするので、味覚は冴えている方なのだが、ワーク中に実際にものを食べる訳では無いときは、やはり感じにくさもある。空気から味覚を感じると、ここの空気は甘いな、とか苦いなもか、感じるものもあるのだが、実際に食べている訳では無いので正解はわからなかったりする。空気の味は不思議な感覚だ。
このように、普段から鈍らせてしまっている感覚を、ワークを経て、開いていく。
感情にも感覚にも
丁寧に耳を傾けてあげる。
そうする中で、ようやく研ぎ澄まされて、ここにいる実感が強くなり、世界が変わっていく。
そんな気がした。そんな感覚を知れた、
非常に有意義な
自分を知る作業。