🌿『ガーデン・ガーデン』🌿稲葉真弓
最高の時間を過ごさせていただいた、出会えて幸せすぎる本🤤視線の物語。
夫婦交換専門雑誌で、妻や夫たちの投稿写真の性器を消す仕事をしている"私"が、1枚の投稿写真の女に惹かれながら"消す女"として過ごした日々。彼女は、普通ならば黒塗りで消す部分を様々な種類の花のシールで消していく🌹
彼女と、その女の距離感が好きだ。
決して明るくはないけれど、ずっとこの世界を見ていたいと思ってしまう。
粗野でヒリヒリしてて、角度を変えてみると、見るに耐えないようなプリミティブなものを、文章が沸点を上げずに静かに昇華していくさまが厳かで、凄まじいや。大好きな一冊になってしまった🫖
標題の「ガーデン・ガーデン」の他、もう2つの物語「クリア・ゾーン」、「春の亡霊」が収録されているのだけど、その2つも本当に好きだった。
主人公たちが皆寂しげで、ありったけの孤独を持て余してる。そして常に誰か何かに執着して観察している。そう、ストーカーのよう👣
はじめ、覗き見る快感にやられたかと思っていたけど、そんなありふれた表現で表せるものではない気がしてる。
もしかすると人は、他人の生きる肉体や生活を通じて、自分自身を手繰り寄せようとするのではないか?そしてそれはほぼ、人間の本能のようなものなのでは?
だとすると、人生はなんと想像力の世界で、自らを探り当てるために他人の人生や他人を身体を介した生活を夢想する、その想像力と現実の狭間でバランスをとっている彼らがまともに見えてくる👁🗨
私たちは思ったよりも遥かにイメージの中を生きているのかもしれないな。あるいは、幸福な妄想に沈むことであらゆる出来事を回避しているのかもしれない。
「6月12日。C、読書。V、猫。初めて声を聞く。猫を呼ぶ声。ロビー、あるいはロビン?白い服、雨、猫◎、AM・1:15。オヤスミ。K」
他人の生活を記す夜が、なぜだか自分の一部になっていくように感じた。
一体何が欲しい?どうなりたい?
そんな問いすら愚問でしかないというように時間は全てを内包しながら突き進んでいく。
私たちはそんな時間のベールを、突っ走った勢いで破るのか、もしくは側から聞こえるバンド演奏の爆音で破られるのか。
破られたその先には何があろうとも、底なしの日常を掻き分けながら時折覗く闇に敏感でありたいと思う。
かなり前に購入したものの、ずっと開いていなかったこの本。はじめての稲葉真弓さんだったけど、何回でも読み返したい作品になりました。ストックを少しずつ読んでいくのが楽しみ😳📚
読書することもまた、一種の快楽かもしれない🔥