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『青炎』一、初夏

一、初夏

2021年6月15日
俺の名前は、ひろゆき。
山梨在住のコーヒー、ガンダム、
ファイナルファンタジーを愛する21歳、
男子大学生。
小さい頃から、新体操を続け、
人々の笑顔をつくってきた。

朝雨があがり、土の匂いが風に乗って漂ってくる。
俺は、この6月の朝の空気感が好きだ。
町の木々や動物たちが、夏の始まりを感じ、
着々と、準備を始める。
6月は俺にとっても始まり月。
そして、これは俺による俺のための物語だ。

目が覚めて、俺は、俺に問いかける。
「俺は、何者なのか。」
そしてもう一人の俺が、その問いに答える。
「俺は、ひろゆき。」
「俺は、20代のうちにカフェを開く男。」
「俺は、コーヒーを通じた俺の全てを懸けて、
人々を笑顔にする男。」
俺は毎朝、決まった時間に決まった動作で
コーヒーを淹れる。
コーヒーは俺にとって俺の心を映す鏡であり、
他人と俺を結び付けてくれる絆、
そして、人生そのものだ。
また今日から始まる。

冷蔵庫を開け、俺は俺の今日の気分を尋ねる。
といっても直感だ。
豆の種類は3つ。
マンデリン、グァテマラ、タンザニアの中から
気分にあった豆を選ぶ。
そして、本日の一杯のための豆を挽く。
この間にポットのお湯が沸く。
銅ポットにお湯を移し、
サーバーと愛用のコーヒーカップにお湯を注ぐ。
愛用の青色のコーヒーカップ。
毎日このカップでコーヒーを飲む。
これは、俺の師匠から、
師匠と同じコーヒーの機材が揃った時に
もらったものだ。
そして、
俺が、この道に進む覚悟を決めたトリガーだ。

ドリッパーにペーパーをセットし、
挽いた豆を入れ、香りを味わう。
「はあ、今日もいいね。」
心が落ち着き、今日の喜びを実感する。
そして、
銅ポットを手に取り、ドリッパーにお湯を注ぐ。
銅ポットは俺の相棒。
相棒に俺の想いを込め、
ドリッパーに俺の想いを注ぐ。
この想いが味を決める。
今日の俺の味、一期一会の味。
失敗の許されない緊張の瞬間。
俺の想像通りの味になるのかという恐怖と、
その味が再現できた未来に対する胸の高鳴り。
相棒が手になじみ、無意識の領域に入る。
俺は、師匠の教えを忠実に従う。
コーヒーと対話する俺。
そしてコーヒーを通じて、
俺自身との対話が始まる。
この空間は、俺とコーヒーだけの空間。
誰にも邪魔ができない俺たちだけの世界。

お湯を注ぎ終わり、コーヒーをカップに移す。
香りを確認し、一口飲む。
この一口飲むまで緊張が続く。
「うん、うまい。」
師匠からもらった青いコーヒーカップを
眺めながら、
俺は、あの日のことを思い出した。
あの日は、たしか雨の日が続き、
暗いトンネルの中にいるような、そんな日だった。


『青炎』ニ、長雨、そして へつづく…


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↓この物語の主人公である「ひろゆき」について↓
「コーヒー」「ガンダム」「ファイナルファンタジー」を愛し、
3年後にカフェを開く男。

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