冷めきった重たい心に、 彼女は、そっと温かい光(あい)を灯す。 彼女の穏やかな光に包まれて、僕は夢を見る。 目が覚めると、彼女は、僕に、いつも優しく微笑みかける。これは、僕が出会った彼女との物語。 最初でとわの僕と天使との物語。 * カッ、カッ、カッ ザーザーザー リリリリリリリリリリr… 慌ただしい雑音の中、僕はまっすぐ会社に向かう。すれ違う人なんて、いちいち見向きもしない。 新しくできたカフェなんぞに一切、興味がない。 いつもの通勤ルートで、決まった時間に入社する
四、初恋2026年6月3日 「はぁ〜疲れた…」 業務に追われた目まぐるしい一日を 何とか終えて帰路に着く。 ヒールでパンパンの脹脛をひきずりながら、 ふと灯の灯ったカフェが目に入った。 今日はなんだか贅沢をしたい気分だった。 カフェから漂うコーヒーの香りに誘われて、 私はカフェの扉を開けた。 「…ん?」 店頭で中の様子を伺いながら、 私は違和感を覚えた。 「いらっしゃいませ」がない? オーディオから流れる耳心地の良い音楽が そっと私を包み込む。 そして、私の目は、 店の中央の
三、青葉眺めていたコーヒーカップに陽が降り注いだ。 太陽の熱が俺の手を伝い、俺は我に返った。 この道に進む覚悟を決めたトリガー。 忘れかけていた過去の葛藤と覚悟に浸りながら、 俺は、ゆっくりと二口目を飲む。 今日は6月15日。 『この道を選んだのは自分。 誰のためでもない、自分のために選んだ。』 どんな未来が待っているか、わからない。 先の見えない暗いトンネルの中。 止むことのない雨の中。 でも、それでも俺は進み続ける。 人の笑顔を求めて。 その先にある自分の願いを求めて
二、長雨、そして、2021年6月2日 俺は、一人、孤独を感じていた。 想いを持つことの怖さ、 夢を持ち続けることの辛さ。 挑戦すること、頑張り続けることが、 もう嫌だ、苦しい… 自分が自分でないような感覚。 自分の全てを否定し、放棄したくなる感覚。 みんなの笑い声がどこか遠くの方で聞こえてくる。 俺は独り… この道を進み続けた、もがき走り続けた先に、 俺の望む未来はあるのだろうか。 進んでも、進んでも、進んだ気がしない。 先の見えない不安、不確実な道を進む疲労。 よくわから
一、初夏2021年6月15日 俺の名前は、ひろゆき。 山梨在住のコーヒー、ガンダム、 ファイナルファンタジーを愛する21歳、 男子大学生。 小さい頃から、新体操を続け、 人々の笑顔をつくってきた。 朝雨があがり、土の匂いが風に乗って漂ってくる。 俺は、この6月の朝の空気感が好きだ。 町の木々や動物たちが、夏の始まりを感じ、 着々と、準備を始める。 6月は俺にとっても始まり月。 そして、これは俺による俺のための物語だ。 目が覚めて、俺は、俺に問いかける。 「俺は、何者なのか
零、暁2026年6月13日 いつもより一時間早く目が覚めた。 カーテンを開けて、私はゆっくりと深呼吸をする。 月と太陽が互いに美しさを讃えあっているような、尊く儚い時間が流れる。 空が明るくなり始める未明の時間。 もう二度と見ることのない、 この瞬間きりの空の変容を味わいながら、 私は大きく伸びをする。 素敵な今日が、今、ここから始まる。 あのカフェのマスターは今日も変わらず、 コーヒーを淹れているのだろうか。 ふと、 あの店のコーヒーの香りに包まれた感覚がして、 私は小