祖母への手紙その1
去年の夏にケアハウスに入った祖母。このコロナ禍で現在、面会をすることができないそう。お嬢様育ちで頑固で我慢することのできない性格の祖母、さぞかし退屈だろうとときどき手紙を書くことにしました。返事は来ませんが楽しみにしてくれているようです。書いている私のほうも、書くことで自分の日々を見直したり、ささくれだった気持ちが落ち着いたりするのを驚きとともに感じています。
おばあちゃん、元気ですか。あっという間に梅の花も開いて、冬がどこかに行ってしまったみたいですね。
この前ふきのとうの天ぷらを食べたと思ったら、菜の花になって今はもうそら豆がスーパーに並んでいます。今週はあさりの酒蒸しを作りました。春ですね。前回おばあちゃんに会ったときにはすごく寒がっていたけれど、最近はそっちも暖かでしょうね。窓から新幹線が見える景色も、春らしくなったことでしょう。衣替えはすすんでいますか。
今日、食器を洗って片付けていたらM(妹)ちゃんの結婚式の時の引き出物のお皿が出てきました。覚えていますか。Mちゃんが作った、白い、楕円形のお皿です。そういえばおばあちゃんも以前、陶芸をやっていたなあ、と思い出していたところです。夜通し交代で窯の番をしていたときもありましたね。子育てがひと段落したら、Mちゃんもきっとまた始めるでしょう。
未知のほうはもっぱら山登りを引き継ぎましたよ。冬の間はあまり登りませんでしたが、この前、鹿児島に出張したときにはついでに霧島に登ってきました。霧島というのはあの辺りの連山の総称で、一番高い山は韓国岳です。火山で、所々に噴煙が上がっていました。韓国岳のすぐ下にある大浪池は、火口湖としては日本で一番標高が高いそうです。お天気はあまり良くなかったのですが、素晴らしい青い色をしていました。たまたま同じ時に登っていた女性と友達になりましたよ。聞けば東京の病院で看護婦さんをされているとのこと。家も割と近くでした。最近、女性の間で登山が流行っています。おばあちゃんは山ガール(山登りする女性のこと)の先駆者ですね。
霧島の写真を何枚か送ります。登りませんでしたが、桜島の近くにも行きました。こちらはいいお天気でした。桜島の写真と、他にも最近の写真を合わせて送ります。いつか一緒に行けるといいですね。それまでどうか、元気で。ゴールデンウィークには帰ります。そのころには蕗が取れるでしょうね! 未知 令和2年3月12日