【推し活免許証】③翔の免許
日空は翔に、「興味あることとか何か無いの?」と訪ねた。
翔は眉間にシワを寄せて、長考する。
「それを今まで制限されてきたからなぁ……」
「だよねーわかる。でも最高だよ!『好き』のある世界って」
嬉しそうに話す日空に、翔は素朴な疑問を投げかける。
「日空は免許を取ってからたったの一年くらいなのに、どうしてそんなに推し? について熱量高く語れるの」
「それは、好きだからに決まってんじゃん! 好きになることに歴は関係ないのさ!」
「そういうもんかねぇ……」
「そういうもん!」
自慢気な日空と腑に落ちない翔。
自分のことでもないのにそんなに熱くなれることがかつてあっただろうか。
自分のことですら熱くなれたことがあるかも分からないというのに。
「ちなみにその免許証で好きになれるものって数に限りがあるんだっけ」
「あるよ、一年目はひとつ、そっから三年目まではみっつ、で、ペナルティがなければ一年に一つずつとれるものが増えていく。ぼくが持ってるのは『推し活免許証』だから、今のところはリアルの人を好きになったり趣味を作ることは禁止、そのためにはまた別の免許を取らないといけない。ちなみにガチ恋は規約違反で」
「ふーん、めんどくさいね」
「聞いてないな……。まぁ、お金のかかるもんじゃないから、意欲次第じゃない? あと時間」
「意欲……無いなぁ……」
「とりあえず取っとこ、身分証にもなるし」
「それは便利かも」
「何か好きになってからじゃ何かと面倒だよ」
「なるほどね、じゃあ暇なうちに取ろうかな」
日空に言われるがまま、翔はとっても流されやすい性格だった。
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