短編【私だって傷つく】
梅雨どきより前に満開だった八重桜はとっくに散り、また来年と名残惜しそうに枝を揺らしている。
今年の梅雨は長い。
じめっとした湿気は耐え難く、頭痛が収まらない。
私が外出をすると、ここぞとばかりに雨が降る。
空に叫んでも虚しい。
頭が痛くたって、いつでも笑顔で歩いている。
元気に見えたらいいなと思って。
明るい声は雨の音にかき消されてしまう。
それでも私はいつも空気。
私だって凶器を向けられたら傷つく。
致命傷を負わなければ、痛みに気づいて貰うことはできないのだろうか。
帰り道