【推し活免許証】①配送料取るよ
翔は18歳になった。
成人か、想像したより味気ないなと少し息を吐き、スニーカーを履いた。
母が後ろで「日空くんに会うなら、やえちゃんにこれ渡しといて」と言って、紙袋の音をゴソゴソと鳴らしている。
日空は翔のおさななじみ、やえちゃんとは、日空の母である。
二人の母は仲が良く、趣味が合うためよく一緒に出かけている。
「なにこれ」
「『あおスプ』の」
「あ、いつものオタグッズか」
「何よその言い方〜いいでしょ〜。無免許なわけでも無いんだから」
「別に……どうでも……」
いい。
と言ってしまうと、また面倒くさい小言が始まりそうなため、翔は口をつぐんで紙袋を受け取った。
「こんな家近いんだから直接渡しなよ」
「ママもやえちゃんも忙しいの」
「あっそ」
20:00ごろ帰る、とだけ伝えて翔は玄関を出た。
履きかけのスニーカーが敷居につっかかってコケた。
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