【推し活免許証】④かっこよさの根拠

飲み干したアイスコーヒーの氷を食べながら、しょうはふと体勢を整えて、日空ひそらに気になっていたことを聞いた。
「推し活ばっかりしてて、大学は大丈夫なの? 俺は今日、あんたに履修の方法について聞こうと思ってたんだけど」
「ママみたいなこと言わないでよ」
あの人自分のことは棚に上げて ぼくの行動に目ざとくケチつけてくるんだから、と小さく文句を垂れながら、日空はノートパソコンを取り出して履修の組み方を説明した。
「大学は大丈夫かということへの回答だけど、とりあえず進級はできてるよ。ぼく、翔の先輩だからな」
「トリアエズ……?」
「さっきも説明したけど うちの大学の授業科目には、必修科目と選択科目があって、その年の必修全部と選択のうちの何単位かが取れてれば進級できるの」
「おお~。ってことは必修は?」
「全クリ」
「選択は?」
「……」
「選択は??」
「……4単位落とした」
「理由は?」
「……」
「その心は?」
「翔ちゃん、『推しは推せるときに推せ』っていう名言があってね」
「ほらやっぱり本分を忘れてるじゃん」
はぁ、しょーもな。
日空みたいになるくらいだったら免許とっても無駄かななんて考える。
「受験生の頃の日空はかっこよかったんだよ。それがこんな……」
「なんじゃそれ。人が無理してるところ見てかっこいいってちょっと酷じゃない?」
「無理してたの?」
「勉強嫌いだからね」
「なんで大学行ったの」
「そりゃ親を安心させるためでしょうよ」
「今度は卒業できるかどうかで親のこと心配にさせてるじゃん」
「……たしかに」
んー深いな……などともにょもにょつぶやきながらうなる日空。
考え込むように黙ってしまった。
翔は困惑しつつも手持ち無沙汰になって、五杯目のコーヒーを取りに立った。

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