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【絶対写真論】アフターワード

このあとがきは本書のみであり、修士論文時には記していない内容である。それは、本書を書くに至った「動機」の部分を書いておきたいと思い、書籍化するにあたって追加した章だ。

いまでこそ、写真は撮る必要はないとまで言い切るまでになっているが、実のところかつて私は写真専門学校に通っていたことがある。


時は2005年。就職する気もなくとりあえず当時の学部(理学部)→大学院へと進んではみたものの、また1年後には同じように就活がやってくるのかと進級と同時に思ってはいた。

しかも、この研究を是が非でもしたいと思って進級した訳ではなかったため、次第にこの問いに悩まされることになる。「将来なにをやりたいのか」。

もちろん、やりたいことだけで生活できるのはほんの一握りではあるが、それでもやりたいこと:仕事や進路などを考えては悶々としていた。

ずーっと考えていて、きっかけはなにか忘れてしまったがどこかで吹っ切れた。学部4回生頃からなんとなく始めていた「写真」。そうだ、どうせだったらやりたいことやってからでもいいんじゃないか。

そうなると決断は早い。修士1年の夏休み時点で早々に大学院を退学し、実家に戻って仕事を始める。写真専門学校へいくための資金を貯めるためである。

いやー、こんな子ども、親の立場からすれば絶対勘当されるに違いない(笑)。


3年間働いて貯めた軍資金をもって、いざ東京の写真専門学校へと進学した。なぜその学校を選択したかというと、当時したいと思っていた写真の第一人者ともいうべき先生がいらっしゃったから。

いざ入ると、フィルムカメラで撮影&暗室作業に明け暮れる学生生活。1年次はフィルムで300本は撮ったはず。なお軍資金は早々に底をつき、割と早い段階からバイトで生計を立てることに。結構貯めたのに、なくなるのは本当に早かった。。

学んでいくうちに入学当初と方向性は変わっていく。はじめは風景写真家になりたいと意気込んでいたものの、次第に違うなーと思いアートへと傾倒していく。写真家とも違う、当時は写真作家と称していた。

とはいえ、アート系の写真といっても具体的な方向性(なにをどうしたらいいのか、など)はまったく見えていなかったので、とりあえず一般職で働きながら制作をするスタンスへ。

ちなみに在学中から撮影の仕事やフリーでアシスタントなどをやっていた時期もあったが、ずっと苦痛であった。仕事(商業的)として写真を撮ることに対して全く興味がなかったのだ。そのため、専門学校にもかかわらず、ここでも就活はしなかった。


それからは海外のコンペに応募したりグループ展などに出展したりなど、細々と活動していたが、やがて転機はやってくる。

2017年、長女が誕生したのを機に子ども中心の生活となり、それまで撮影中心の生活から一変し全く撮影することがなくなった。

やりたいことのベクトルの先に「写真」が常にあったのに、急に写真と距離を置く状況に陥ったのだ。しかし、結果的にはそれでよかったのはまた別の話し。


そして2020年。コロナが世界的な流行を見せ始めた折に、私は京都芸術大学の通信制大学院に進学することを決めた。それは、コロナによって経済活動が鈍化すると直感し、だったら学ぶのであれば今しかないと思った&実は前々からMFA(芸術学修士)は取得したいという思惑とが、ちょうどこのタイミングで重なったのだ。

何を学ぼうか、美術史でもいいけど歴史だけ学んでもなー、通信だけでMFA取得できるがやりたい内容ではないしなー、ということで現代アートを専門とする後藤ゼミを選択した。

なお、後藤ラボは来年度より受講方法などは社会人向けのままに、新たに通学部の大学院「アートプロデュース(後藤ラボ)」として開講されます。


本書は大学院で学んできたことを制作×修士論文として綴った、ひとつの研究成果である。これまで漠然とした説明でしか自身の作品を言語化できなかったのが、研究という形で自身の作品と向き合うことによって、より明確に言語化できるようになったことが、一番の収穫である。

そして、大学院の先輩が今年開廊したギャラリーaaploitで、本書の実践の場でもある個展『Absolute Photographs』を開催するという、「ご縁」によって開催することになった展示でもある。


元来しゃべること、とくに自身のことを語るということは非常に苦手であった。しかし、大学院での学びや対話を重ねてきたことで、作品について「語る」ことはだいぶ自然な行為となってきた実感はある。


今でも作品として写真を「撮る」ことはほぼない状態ではあるが、写真となるためには「撮る」行為が必須ではない。

撮るという行為から一旦距離をおくことによって、写真とはなにか、何が写真となるのか、なにをもってして写真となるのか、といったこれからの写真の方向を示唆するのとともに、本書は主に大学院時に制作した作品の解説書でもある。

そして本書の実践の場がギャラリーでの個展なのだ。


会期も早いもので、当初の会期(9/23〜10/16)は終了し、延長戦へと突入しています。最終は10/23(日)となりましたが、土曜日(10/22)には在廊を予定しておりますので、お時間ございましたらご高覧頂ければ幸いでございます。

どうぞ、よろしくお願いします!


本記事にて、本書『絶対写真論』の解説編は終了です。しかし、制作は今後も続いていくので、また別の展開があるかもしれません。

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masahiro ito
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