1月のお気に入り音楽
数年前に、毎月のお気に入り音楽、映画、ドラマについて記事を書いていたことがあったのですが、大変すぎてやめました。でも、個人的な記録としてちょっとだけ復活させて、お気に入り音楽だけサクッと記しておこうと思います。
SINGLE
Lucky - Erika de Casier
私が個人的に Erika de Casier を聴いたのは、2021年のLP『Sensational』だった。当時は洗練されたフロア寄りのオルタナティブR&Bという印象だったが、NewJeans への曲提供やY2Kリバイバルの流れ、サウンドの「フォムル」の時代の突入という文脈において、2024年の最重要人物に成るとは。イントロから漂うJ-Pop感と、R&Bジャーナリストの林剛さん(@hystys)が指摘していた Janet Jackson の「Empty」との近似感から、文字通り時代と国を超越するサウンドにまとまっているのがなによりも白眉。
One Night/All Night - Justice, Tame Impala
誰もが Daft Punk なきこの世界を満たそうとしている、と捉えるのは思い込みだろうか。この2組のコラボが発表された時点で想像していた音がそのまま鳴っている、なんの新鮮味のない音楽を作り続けることが Justice なりの正義なのかもしれない。そして、それを待っている人は確実にいる。
GOAT - Number_i
元 King & Prince の3人、平野紫耀、神宮寺勇太、岸優太から成る新グループのデビューシングル。Timbaland や Missy Elliot らの2000年代キチキチビートがまずボトムにあり、Pharrell Williams/The Neptunes や Skrillex のように Hip-Hop と EDM の枠組みを解放するかのようなプログレッシブなトラック。不思議とそれらがひとつにまとまっている。"GOAT" と繰り返されるフックはジャージークラブのリズムになっていて、昨今の流行にも目配せ。
yes, and? - Ariana Grande
文句なし。Madonna「Vogue」を下敷きにした最強のディーヴァソング。この「yes, and?」を含めた Ariana Grande のキャリアについては以下記事にまとめたのでよかったらどうぞ。
LP/EP/MIXTAPE
SUBMISSIVE2 - DESTIN CONRAD
DESTIN CONRAD の前作『SUBMISSIVE』は、コンパクトなアフロビートナンバー「SWITCH」を除いてそれほど響かなかった。しかしその続編にあたる今回の新作は、2000年代的な「歌声でもっていくR&B」の真髄が垣間見えた気がした。トラック自体は2010年代以降のR&Bで特質事項はないかもしれないが、ウェストコーストのフレイバー感じる「WAR!」など、聴き流しているだけでも面白い瞬間がいくつかある。
Sol María - Eladio Carrion
カンザス・シティ出身、プエルトリコオリジンのアーティスト。トラップとレゲトンのいいところをしていて、17曲もありながらサクッと聴ける48分間。キラーチューンはないかもしれないが、スキップチューンもない、ちょうどいいバランスで一貫したレコード。
ORQUÍDEAS - Kali Uchis
70年代ソウルやネオ・ソウルを下敷きにしたラテン・ポップの良作『Red Moon In Venus』を昨年リリースしたコロンビア出身の Kali Uchis。その前作は英語での歌唱に、今回の新作では(1曲を除いて)スペイン語での歌唱に焦点が当てられている。つまり新作は前作からの精神的続編と言うこともできる。一聴してまず出てくる印象は、音像の良さ。強いリバーブのかかった幻想的案なサウンドプロダクションで、聴いているだけで気持ちがいい。ボレロの「Te Mata」は、シュールレアリズムのアートフィルムを観ているように音像が広がっている。クンビアの「Labios Mordidos」にしても、その形式に則ってながらハイパーなポップスにもなっている。最高のハウスチューンだったシングル「NO HAY LEY」は、「No Hay Ley Parte 2」とタイトルとアレンジを変更してリミックスバージョンに。Rauw Alejandro を招いたプログレッシブなレゲトンになっていて、オリジナルのシングルバージョンをよく聴いていた耳には二度美味しい。ラテン・ポップの女王としてメインストリームに出てきた Kali Uchis は、今もなお、いや前にも増して器用に、スペイン語圏のビートを大胆に行き来している。それらをひとつにまとめているのは、今作を纏っている幻想的で官能的なエレクトロの音像と、Kali Uchis 本人の声色だ。