星降る渓谷(エルキ渓谷/チリ)
今日は海の街ラ・セレナから車で内陸側に1時間半ほどにあるエルキ渓谷へ。
バスは出ていないのでコレクティーボ(乗合タクシー)を乗り継いで移動した。
エルキ渓谷はニューヨーク・タイムズの「世界の旅先52選」になんと5位に輝いたこともある景勝地。
しかし秘境である上に特に大きな観光名所があるわけでもない。
なにがそんなにも魅了するんだ?と疑問に思いつつ、私たちの目的はひとつ、星空を観ること。
エルキ渓谷は南半球で1番星が綺麗な場所と言われている。
1年を通して晴れの日が多く空気が澄んでいて著名な展望台もいくつかあるそう。
エルキ渓谷には小さい村が点在していて、中でもビクーニャという街が1番有名。
ビクーニャは小さいが栄えている街なのでさらに田舎へいくほうが街の明かりが届かず綺麗な星空が見えるのでは?と思った。
ということで、コレクティーボを乗り継いてビクーニャのさらに奥、ディアギータスという村のさらにそのはずれにあるポツンと一軒家へ。
エアビーで予約した宿。
おばあちゃんが1人で住んでいるようで、家の横に増設されたプレハブのようなところで寝泊まりした。
雲一つない抜けるような青空、透き通った空気、雄大なアルプス山脈。
日中、とにかく暑くてたまらなかった。
トタンの屋根なので熱がこもり、窓がないのでドアを開けるだけじゃ風も通らない。
横になると、ベッドも熱々になっていた。
後から知ったがこの日の気温は42°まで上がったらしい。
朝から移動して到着したのが夕方。
移動距離は大したことないがなんせ秘境なのでコレクティーボがなかなか捕まらず手こずった。
もう夕方といえど日が落ちるのは21時を過ぎてからなのであと数時間は灼熱の中で過ごすことになる。
とりあえず水シャワーを浴びて、濡らしたタオルを身体にかけて歩いて30分くらいにあるプール付きホテルに突撃した。
「お金払うんで、プール入らせて?お願い!」
ダメ元だったがすんなりOK。2人で800円くらいだった。
しかも部屋も使っていいよ言われ、トイレやシャワーも借りた。
そして夜、目当ての星。
とても綺麗だった。
観光客はおろか地元民すらほとんどいない辺鄙な場所だけあってウユニやアタカマよりも綺麗だった。
それにツアーじゃないのでいつまでもゆっくりぼーっと眺めていられた。
星の数が多くて一つ一つが濃く強く輝いている。
無数の星に囲まれるとわたし達は今、天の川銀河の中にいるということがよくわかる。
そしてご近所の星灯りだけを頼りに夜を過ごしている。
周りに他人の気配はなく、聞こえるのは囁かな虫の声。
星の渓谷に2人っきり、なんて。
この瞬間は至極のロマンスかなんかなのだろうか。
またたく星に包まれて眠りにつこう。
今夜は夢の中で待ち合わせしようね。
....なんてことはなく、
部屋に戻ると大量の蚊。
甘いムードなんてものはなく「オラァ!」とか「どりゃ!」とか言いながら蚊をひたすら叩き潰した。
夜中、蚊は絶えず湧いてきて痒すぎるのとプーンという音で何回も起きた。
長袖とレギンスで寝てたのでまだましだったけれど、手や顔は刺されてボコボコになった。
エルキ渓谷、星よりも蚊の数のが多かったのでは?
翌朝、ビクーニャへ移動。目当てはピスコ工場。
自転車を借りて街から15分くらいで到着。
暑かったけれど濡れたタオルを地肌に巻く方法に気づいたので余裕だった。とてもおすすめです。
さすが有名なピスコ工場があるだけあって、渓谷内にはいくつものぶどう畑が広がっている。
ピスコはぶどうの皮とタネをとってジュースにしてから発酵させるらしい。
発酵はステンレスの樽に入れた後、木の樽に移してさらに熟成させているものもある。
そのためピスコからは仄かにウッディな落ち着く香りがする。
一通り説明を聞きながら工場を巡った後は試飲。
グラスに注がれたピスコは油分が目に見えるぐらいある。
この油はぶどうやアルコール、あとは樽由来のものらしい。
グラスに注がれたお酒をこんなにもじろじろと見たことはなかったけれど、制作の過程が目に見えておもしろい。
お酒に詳しくない人間の感想なので参考にしないでほしいけれど、ピスコは白ワインとブランデーの間みたいだなと思った。
重くなく滑らかで飲みやすい。
特に香りがよくて、美味しいお酒って喉の奥と鼻の奥で同時に感じれるものが違うと思った。
しかも飲んだ瞬間だけじゃなくてプロローグとエピローグ的な部分がある。
味や香りを感じる瞬間が圧倒的に長いし多い。
口に含む瞬間から飲み終わるまで、お酒のエンターテイメント性を強く感じる瞬間だった。
偉そうに感想を述べてるいるけれど、わたしは基本的にお酒は飲めない。すぐに酔ってしまう。
お酒って歴史も製法も興味深いけど深く知る気になれないのはすぐ酔うからだった。
こうやって飲み物としてじゃなくて体験として味わえる機会がいちばん楽しいかもしれない。
これからも世界のお酒を大さじ1ぐらいずつ楽しんでいけたらいいな。