十六式・デート
10月9日、高校への定期が切れる。
改札機に宣告された朝だった。
14を思って思い出すのが白と灰の曇り空なら
16に思い出すのは青い秋晴れだろうな。
蝉の代わりに鈴虫が泣いて、
光みたいな明るい風が吹く日々だった。
夜の学校に赤い街灯がブレる様な日々だった。
加害者になった月曜日だった。
傷付けられてきた何倍も、傷を付けることは苦しかった。鮮血みたいな赤いドロっとした苦しさが喉を通っていった。
青春の色を全部ぐちゃぐちゃにしてきた何十倍も、愛する人を傷付けることは苦しいことと知った。
被害者だったはずの月曜日だった。
あんなにも苦しかった全て、
あんなにも辛かった2年半、
あんなに愛しかった地獄が、全て惨めな言い訳に感じた。
初めて逃げ出したい放り出したい諦めたいと思った。
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