教えてあげない光の具合
昼の光がすきになった。
ああ馬鹿みたく夜などに焦がれることは、もうないだろう。
彼の部屋は暗かった。私の部屋も暗かった。
なのに無機質に浴びた光はどうしても同じに見えなくて、私は眩しくないそれが心地よくて好きだった。
彼らの部屋はあかるい。あたたかい平日午後、
薄暗いというには明るくて、
とても柔らかい日差しをいっぱいに含んでいた。
なんにもない時間だった。
なんでもないことを話して、
きっと外は暑いだろうからって、
漫画を読んでは昼寝をした。
「なんにもない・なんでもない」を使う人は、
その退屈をどこか誇らしげに思っているのだ。
愛おしくて、それが本当は羨まれることだと、
知っているのだ。
紛うことなき幸せはずるいと思う。
間違っているかもしれない幸せに、
淘汰されてしまうかもしれない空間に、
羨望も理解も共感も得ようとしてはいけないね。
今年は、なにもない夏を迎える。
なにもない夏には、苦悩も葛藤も、
確かめ合う感動もないのかもしれない。
無為にすぎる日々に何も残せない自分は怖いけど
それでも、ここで夏が馴染むんだ。
この柔らかい昼の光だけが残るんだと思うと、
幾分か落ち着くことができる。
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