害虫視点社会
ここ数年、蝶モチーフのデザインをよく見かける。
アクセサリー 服のプリント ガチャガチャでも最近は見かける。
どれも素敵なデザインで個人的には普通に好き。
そもそも蝶という生き物は羽の柄や飛び方も綺麗で、ヒラヒラとどこか儚く飛ぶ様がデザインにした時に若者に刺さる。
数年前、趣味を通して仲良くなった女の子が居た。
その子はいつもふざけた事ばかり言っていて周囲の人を笑わせてくれるけど、心の奥底で自分は笑えていない みたいな子。
当時彼女は20歳くらいで、"人生に悩んでいた"という表現だと適切じゃない。もっと繊細に言葉を選んだ上であえて言うと、"人生を大切にしていなかった"という表現になるような子に見えた。
いつも生きていたく無さそうで、いつも何か"死ぬ理由"を探していた。
感性の奥底まで考えない人達はきっとメンヘラという言葉で済ませる。その方が言葉として楽に形容出来るから でもそれも適切じゃない 僕は彼女の中身をよく知っていたから、その死にたさがファッションじゃない事もよく知っていた。
周囲に何の前触れも無く死のうと思い外に出て、橋まで行ったらそこにいたカメムシが気持ち悪くて飛び降りるのを辞めるような そんな変な感覚も持ち合わせてる変な人間
人の死にたい気持ちを共感の一言で済ませるのは好きじゃ無いけど、僕も20歳になるくらいの頃毎日生きていたくなかった 死のうとは思わなかったけど、生きていたくはなかった 適当に生きている。みたいな感じ
その経験もあってか彼女には死んでほしくなかった
彼女の死にたい気持ちを尊重するなら肯定してあげたい。だけど個人的には生きていて欲しい。でも生きたその先で幸せになるという約束は僕には出来ない。だから言葉に詰まる 電波越しでしか延命処置が出来ない。
僕がなんとなく生きていた20歳前後の時の過ごし方は、
普通に仕事をしながら休みの前日の夜になると友達と繁華街に飲みに出てお酒を飲みながら他愛も無い話をして、夜更けに店を出たらまた灯りのついた店を探して彷徨う を繰り返して朝になると帰って死んだ様に寝る。起きたらまた仕事に行って生気の無い顔で一日が終わるのを待つ この繰り返し。
彼女の死にたさと僕の過去の死にたさを重ねる
絶対に同じ気持ちでは無いけど、形容するなら同じ言葉になる。彼女の生き方は模範的では無かったかもしれないけど、じゃあ模範的な生き方ってなんだろう?蝶みたいに凛として美しく、たくましく生きれていたら模範的?違和感だらけな考え方。
僕は彼女のこと、過去の自分の事を"蛾"みたいだ。と思った
明るい時間は生きてるのか死んでるのかも分からない でも暗闇だと生き生きとしている。毒々しく、醜くても自分なりの飛び方でいつも灯を探して彷徨っている。
僕は物事を俯瞰的に見る癖がある
自分が選んだものに対して、"本当に自分で選んだのかな?"とか 簡単に言うと余計な事を考える癖
彼女は僕にも、その他の仲良い人にも何も言わずにある日自殺未遂をした。致死量の錠剤を飲んでOD
意識を失って、それでも死ねなかった。
死ねなかった彼女は泣いていた。
死ねなかったから泣いていたのか、死ななかった安心感で泣いていたのか分からないけど、とにかくその時は泣いていた。
今、彼女は普通に仕事に悩みながら、趣味もプライベートも自分なりに楽しみながら先の予定を立てて生きている。生き生きとしているかどうかは分からないけど、生き生きとしながら生きることが正解とも思わない。
今の彼女にとって、前述の話が過去の話になっているかどうかも分からないけど 今生きてくれている事だけでも僕にとっては希望だからそれでいいやと思う
羽根の伸ばし方、休め方は人それぞれだから
生きている今のことを彼女は"羽根を休めている"と言うかもしれない。
分かりづらい表現だし、理解出来ない人には理解されなくて良いけど 僕は彼女や自分を含めた、生きづらさを大切に抱え、自分の生きやすい暗闇で羽を伸ばす人達を"害虫"みたいだ と思う。
知った様な口を聞いてはいけないかもしれない
僕はまだ何も知らないかもしれないし、逆に知りすぎているかもしれないし。
僕の目に映る彼女は、蝶と呼ぶには飛び方が下手くそで、不器用に羽根を広げている。
僕にとって蛾は美しい。見た目こそ毒々しくて人に勘違いされやすい 羽根の広げ方も不器用で何の前触れも無く飛び立つし、止まったかと思ったら生きているのか死んでいるのかも分からない。他人に理解されたく無さそう。ぜんぶ自分の思い込みだけど、都合の良い解釈で良い ぜんぶそれに助けられて生きているし。
僕も、彼女も、その他の生きづらい人も
もっと自分の都合の良い羽根の広げ方を出来たら良い
羽根を広げて飛んだ先が幸せな場所でも、生きづらい場所でも、橋の下でも それで自分が救われるなら羽根を広げた甲斐があるはず。
暗闇の中でしか気付けない灯がある様に、
害虫視点でしか見えない世界がある。
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