いつも街から出たかった。
毎日、この小さな田舎町から出ることを夢に見てた。
「こんなクソみたいな街、さっさと出て、
もっと素敵なところに行きたい。」
18歳の時、大阪に行った。
家に帰りたくなった。
次に実家に帰れる日まで、日を数えるくらい帰りたかった。
21歳で、日本と9ヶ月間のさよならをして、
イギリスに来た。
世界を見て回った。
ケンブリッジ、ニューヨーク、ロンドン、ツェルマット、パリ、ストックホルム。
ますます家に帰りたくなった。
早く大切な人に、わたしが見たものを伝えたくて帰りたくなった。
いつもあの街に戻りたい。
あの綺麗な夕日と、綺麗な海と、緑の生い茂る山が見える街に。
春になればそこらじゅうに桜が咲いて、街がピンクと黄色で埋め尽くされる。
夏になれば緑が生い茂って、夕日がいっそう黄金色で街を照らす。
秋になれば、金色の絨毯で街が覆われる。
雪が降れば、一面銀世界が広がるあの小さな街に。
あの街のことがいつも恋しい。