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妥協と堕落

今朝方一人枕を抱えティーシャツと下着だけで窓を開けて静かに空を見る。
やっと曇った。と、安堵し煙草を吸う。
仕合わせを求むる事はなく只過ぎ去る日々を過ごして。
過去の恋などはとうの昔に忘れてしまい、只一人女であると云う事を噛み締め生きる日々。
悲しみさえも忘れ、生きていても仕合わせがあるとも思わず静かに過ごすのでした。
人生と云うものに絶対と云うものは無く。
これもまた不思議な断言でございます。

もう春など来ないと思うし、来なくてもアタシは生きてゆけるのよ。
仕合わせ等噛み締めてしまうから、無くした時辛くて虚しくて痛くてたまらないのよ。

そう思い、繁華街夕方に一人ヒールを履いて気怠そうに死んだ魚の目をして歩くのでした。

欲張りですから、そうと決めているのに。
仕合わせを温もりを求めて生きてしまう。
女ですもの。

そんな折に偶然アタシの元に現れた貴方。

全て知りたい、全て知り尽くしたい。
柔らかい心に溶けそうに。艶やかな目と髪がアタシに触れるたび独り占めしたいと。

長い間餌を与えられなかった猛獣の様に。
アタシの目は貴方でいっぱいで
此の獰猛な心をどうするべくか。

己の欲を満たすために相手のことを知ってはならない。
全部知ってしまったって不幸に成るのは己。
知らなくていいこともあるのよ。
知って損をすることもあるのよ。
秘密というのは嘘というのは陰のもので悪いものの様なこともされているけれど、愛によっては秘密や嘘なんかは救いになることもあるのよね。
でもアタシは誠実でいたい。
貴方位には純でありたい。
粋でありたい。

さて、そんな事を考えていると一匹狼の癖が抜けずまた勝手に薄ら割れそうな氣持ちに成って。

馬鹿だねえ。

そう自分に言い聞かせて。

誰が悪い事もない。

アタシは自分の不幸と戦って居る。
そんなアタシを貴方は美しいと云う。

仕合わせは仕えを合わせるのです。
自分の舵を切って、生きるのです。

どうか、今はどうか
此の一人可哀想な女を抱きしめていてください。

そして、いつか
アタシは貴方の横で屹度何もかも痛い事を治して生きて眠りにつくのです。

堕落し切った心と、痩せ細った身体を。
どうか、不幸に思わないでください。
貴方に出会えたことが宝であり、人生の褒美なのです。

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