猫のいない庭⑤
第八話『超音波』
私は花岡さんには聞こえて金子さん達には聞こえなかった超音波について調べることにした。都内に住んでいた時に所々施設の前を通るとプチプチっと耳を刺すような感覚をみなさんは味わったことがあるだろうか。
そう、超音波だ。一般的には若者避けに使われたりする。屯したり非行を避けるためだろう。
そこで何歳までが聞こえるのかを検証すべく色々な資料をみて調べてみた。二〜三年前に某企業が実験をした。『耳年齢』についてだ。とても興味深いので引用させていただく。
以下が企業のサイトより引用した意見である。
「子どもたちが聞こえると言っている『20代』の音が、私には聞こえない」とSNS上で確認された意見を元に我々は耳年齢を調査した。
現在二十代前半の記者が試してみると、PCでは『耳年齢20代』(19kHz)まで全ての音が聞こえたが、スマートフォンでは『耳年齢40代』(15kHz)からしか聞こえなかった。機械や音量によってばらつきが見られた。
との記述があった。
実際に花岡さんは60代なので図によると10,000Hzが一般的だと言える。だが20代半ばの私と同じ音が聞こえると言うことは花岡さんは19,000Hzまでの音が聞こえてもおかしくないと言うことだ。
このことから私と花岡さんが聞こえた音は10,000〜19,000Hzと考えられるが金子さんや近隣住民50〜60代には聞こえていないことから推測するに、15,000Hzと言える(40代まで)。これで花岡さんが神経質と言われる理由もよくわかった。この話を花岡さんにしてみようと思ったがもう夜なので明日にする。
翌日、昼間に私は再度花岡さんの家に行った。ベルを押すのもなんだか億劫なほど嫌な反応をされる。が、押す。''ピンポーン''30秒くらいして花岡さんが出てきて『またお前か。なんだ今度は』相変わらず文句垂れながらだが、そんなに悪い人だとは思っていない。『今日は、なんか、ないのか』少し遠慮気味でせがんでくる。おそらく土産はないのかという話だろう。すっかり忘れていた。直ぐに伝えたくて仕方なく忘れてしまった。これは、これは矢場(やばい)だと思いながらも『花岡さんが話してたうるさい音っていうのはこの町でおそらく、私と花岡さんと近隣の子供にしか聞こえないことがわかりました。』『それはなんでだ。』『超音波で私が前話したじゃないですか。まさにそれでして金子さんたちには失礼ですがご高齢の方には聞こえない音なんですけど、何故か花岡さんには聞こえてしまっているということです。』『俺はすごく気になるんだよ一つ一つ細かいことまでが。お前らには何も感じなくても俺は敏感なんだよ。』『そうですね。仰る通りだと思います。でもごく一部のご高齢の方はたまに聞こえることもあるそうなので間違えではないのです。』『そうか。そのうるさい音はどこから流れてるんだ。』『わたしもまだはっきりとはしませんがおそらく我々の直ぐ近くにいる人だということは確かになります。仮に若者避け猫よけの超音波だとしたらそんなに遠くまで届かないと思うんです。』『厳密にはどこくらいなんだ』『えっとー調べますね。』わたしはスマホで「超音波 聞こえる距離」で検索をかけてみました。
するとこう出ました『超音波はその伝わり方において、音や電波とは異なる性質を持っています。空気中よりも、むしろ水や金属などの物質中で強い伝播力を発揮するという特徴があります。真空状態の中では、まったく伝わりません』『なんだ、これは関係あるのか』花岡さんがいい始まりました。矢場です。『いや、もうちょい調べます!』すると更に『一般的に人間の可聴範囲(可聴域)は20Hzから20,000Hzまでと言われています。この可聴域をこえる周波数の音、つまり20kHz(=20,000Hz)を超える音が一般に超音波と呼ばれています。ただ、可聴域を超えているからといって絶対に聞こえないわけではありません。』私が調べた通りそれはわかっている。では距離はわからないのか?『一方で「高周波音」に明確な定義はありませんが、可聴域の中でも周波数が高いおおむね15kHzから20kHz程度の音が高周波音と呼ばれています。』とのことだ。そして我々が聞こえているモスキート音というのは『蚊が飛ぶ時の様な高い音というのがモスキート音の名前の由縁です。モスキート音発生装置はおおむね15kHz~18kHzの高周波を発生させる装置であり、「およそ若者にしか聞こえない」という高周波音』だ。とすると人によって、更にその家の周辺にあるガスや金属、水辺によっても差があるから厳密的な距離というものはないということらしい。『ということなので花岡さん。私たちの近所の人っていうのは明確なんですよ。花岡さんの中で怪しいご近隣の方いらっしゃいますか?』『前話した新しいやつだと思うな。そいつが引っ越して暫くしてからこれが始まったんだ。』『それまではなかったってこと?』『ああ、なかったよ。これは確かなんだ。』
花岡さんが確信している。私は信じてみることにした。
明日、その新しい人の人に会ってみることにする。
(続)