第29回 信じていること【朽羊歯ゾーンのWoundTube】
【朽羊歯ゾーンのWoundTubeとは】 朽羊歯ゾーンが一日一回何かを書くシリーズです。しょうもない発見や考えを真面目くさった文章で書く、1000~1500文字程度のエッセイくずれの文章が多いですが、そうではないときも多いです。どこから読んでも構いません。WoundTubeとは「巻かれた管」=「くだを巻く」という意味です。
信じた方が面白いし、裏切られたところで害はない、というものが世の中には存在する。占いやおとぎ話などがそれだ。
科学的な面では、根拠がないのだろう。ただ、それを頭の片隅に置いた上で、まずいことになったらいつでも引き返せる状態で、がっつり信じる。というより、深みに入らないようにしつつ、浅い部分にいる限りは一切の疑いを捨てる。
今回は、そんなものの中から、かなり個人的でささいなものを紹介したいと思う。
1.「な」にはファンデルワールス力がはたらいている
高校の化学の時間に、「ファンデルワールス力」という力を習った。それが何なのかは忘れたが(原子の間にはたらく力だった気がする)、覚えていることが2つある。
先生が「瞬間チラチラ型引力」と言っていたこと
説明を聞いた自分は、当時持ち歩いていたネタ帳に大きく「な」と書いて、「それぞれのパーツにはファンデルワールス力がはたらいている」と図解したこと
「な」のそれぞれのパーツのように、完全にくっつかない状態の原子で一つの構造を成すことがある、という話だったのかもしれない(あえて調べずに書いています)。
なんだかよくわからないが、とにかくそれ以来「『な』のそれぞれのパーツを結び付けているのはファンデルワールス力と呼ばれる力だ」と思っている。
2.トイレのスリッパを揃えると勇者になれる
子供のとき読んだ本に書いてあった。
生まれて初めてハマった小説家の本だが、名前が思い出せない。「二分間の冒険」などを書いた人だったはずだ。
子供すぎて漢字が読めなかった、ということはないにしても(それだったら本文も読めていないはずである)、作者という概念が薄かったのかもしれない。作者名で本を探すことすらしていなかった可能性もある。同じ作者の本は同じ棚にあると理解していたかどうかも怪しい。
トイレのスリッパを揃えていた主人公に、関西弁の勇者が話しかけてくる。覚えているのはそれだけだ。いや、「トイレのスリッパを揃えなかったから話しかけられた」のだったか。
とりあえず、いつか関西弁の勇者が話しかけてくることを祈って、私はトイレのスリッパを揃えるようにしている。
トイレ掃除をするとべっぴんさんになる、という話は、あいにく信じていない。べっぴんさんより勇者になりたいからだ。おかげでトイレのカビがひどく、この前は放置するだけの洗浄剤を使った。
ちなみに、うちのトイレにスリッパはない。
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