オンライン配信中に災害が起きたら?
※2024.08.08編集 災害対応について検討することが趣旨であるため、特定のイベントの運営体制に対する批判的な表現を不要と判断し削除しました。
夏の終わりが近づき、技術カンファレンスに脂がのって美味しくなる季節が近づいてきました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
だいぶ前ですが、福島県および東北・関東近辺にて最大震度6強の地震が発生した際、「配信に張り付いて避難が遅れる人が出る」可能性を考慮してすぐに避難を呼びかけ配信を終了させる対応を行った配信者が話題となっているのを観測しました。
私はこれを大変素晴らしい対応と捉えており、即座に対応を行った配信者に敬意を表します。自分の安全だけでなく、多くのファン・視聴者の安全を考えないとこの行動はできないと思います。
オンラインイベントでの災害時対応の想定は不十分なことが多い
私はイベントのスタッフのお手伝いをしていることが多く、特にCOVID-19の流行で様々なイベントがオンライン化しだした去年、私も例に漏れずオンライン化したイベントの配信を行うチームにいることが多々ありました。その中で、そもそも緊急時の対応をしっかりと定めているイベントがどれほどあったでしょうか。はっきり申し上げますと、私の関わった配信イベントで、そのようなことを考慮しているイベントは存在しませんでした。私の見聞きした範囲の中で、緊急時の対応に触れるやりとりや文書は見た記憶がありません。
イベントのオンライン開催を行う以上、(主に日本語での開催であれば)主に日本全域からの参加者が見込まれているわけであります。日本語での開催であれば、日本全国が「会場」として想定されている状況です。であれば、主催者側は、配信会場やスタッフ・スピーカーの自宅など、「配信・運営に支障のある範囲」に限らず、その外側、日本全域くらいには目を向けておく必要があると私は考えています。
オンサイトでのイベント開催の場合は多くのスタッフや関係者が設営時に当日の避難経路の確保や安全確認を入念に行うのが当然です。しかし、「配信拠点の地域にいるスタッフや、スピーカーに影響のない大規模災害が起きた時の対応」に意識がきちんと向いている組織はまだまだ少ないです。
実際、2020年暮れに開催された、東京を配信拠点とするイベント中に東北地方で最大震度5弱の地震が発生した際、ほとんどのスタッフが「遠くで地震あったんだねー」くらいの反応で、イベント自体で何か対応する、といったことを検討する姿は見られませんでした。全体の運営チャットに投げかけたものの、ほとんど議論されることなく「イベントに影響はない、対応は必要ない」という決定がされました。
オンライン開催のイベントにおいて、ターゲットは日本全国の方ですから、配信拠点の東京に影響がないからといって他地域の人を心配しない理由にはなりません。この時の地震は、幸い震源近くでもイベントの視聴を止める必要のあるほどの被害が出るものではありませんでしたが、それは一つの結果に過ぎませんし、またいつ大規模な災害が発生するかわかりません。もし今後、参加者の身に危険が及ぶ可能性がある災害が発生したことを検知した場合は、冒頭で述べた配信者の事例のように、「安全を確保してください」と伝え、中断する選択肢もあったのではないかと思います。
国内での災害発生時、イベントの主催者はどのように行動すべきか?
イベントは多くがタイトなタイムスケジュールとの勝負ですから、トラブルに対して十分に議論をできないまま結論を出さなければいけないことも多々あります。あらかじめ少しでも議題にあげていただき、緊急時の対応を考えてみてほしいと思っています。
オンラインでの開催となったことで、オンサイト時のように人員の誘導や避難経路の案内をする労力が不要となった一方、イベントの参加者が日本全国いろんな場所にいる状況となりました。見方によっては、全国に配信されているテレビ放送と全く同じと言えなくもありません。
「イベントの主催者」として、「イベントの参加者」の安全の確保をどのようにすべきか。イベントという特性などから、「配信の視聴を継続したい」という心理が働き、結果的に避難の遅れにつながることも考えられます。これに対しては、配信を一時的に中断し、再開の情報はしっかり他媒体(Twitterなど)でお知らせすることを呼びかけ、避難してもまた安心してイベントへの参加を再開できる環境を作ることが有効であると考えます。
これを踏まえて作成した、私が常にスニペットに仕込んであるトークスクリプトをご紹介します。必要に応じて順番を入れ替えたり削ったり繰り返したりして読み上げることを想定しています。
最後に:「対応しない」という意見や決定も尊重すべき
「報道機関ではないので、命に関わる誤った情報を発信する可能性のあることは一切しない。」というのも、組織や参加者を守るために正しい考え方です。組織としてこのように決定するのであれば、それは尊重されるべきであります。オンサイトでの運営と違い、現地にいない参加者に対する情報の発信・避難の呼びかけは、配信イベントの運営に課せられた義務ではありません。ましてや、何も行動を起こさなかったとして非難されるべきではありません。
どのような行動をとった場合にもリスクやデメリットはあります。イベント内容や性質、運営組織の特性などをよく理解し、どの選択が最も命を救うかを考えることが大切であると考えています。皆さんの組織でも、少しだけ時間をとって、イベント中の災害の対応について議論されてはいかがでしょうか。
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