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スペシャル7つ星、スパルタと寛大の双極

鹿児島県って伝統的に教育熱心なのかな。わかんないけど、私が通ってた小学校はとにかくスパルタだった。
当時(昭和後期)は私も小学生だったし、おかしいとも思わず受け入れていたスパルタシステムが、給食時間に給食を食べ終わらなかったら算数準備室に移動して、食べ終わるまで閉じ込められるってやつ。
机とかないので、おぼんごと運んで床で食べる。
今やったら事件?
学校じゃなくて担任の定めたルール。
ちゃんと食べ終わったか確認するため、同じクラスの子供が扉の向こうで番をしていてズルはできなかった。

算数準備室常連だった私。
どうしてもぜんざいが食べられなかったから、その日は床に座ってぜんざいとずっと睨めっこしていた。目の前のぜんざいを食べるかどうか自問自答は長く続いて、昼休み終わって掃除の時間になっても答えは出なかったが、「食べる線はないわ」って思った。
私は初めて自分より大なるものが定めたルールに歯向かうことにしたんだけど、正面切って食べられませんって言う度胸はなかったので、壁に立てかけられた算数用の線が引かれたミニ黒板の裏に、同じく居残っているH野くんがうつむいてるのを確認してサクッと捨てた。
何食わぬ顔で算数準備室を出て、脱獄成功。
そこまでで精一杯で、ぜんざいを後始末する頭は全くなかった。
悪さした子供特有のソワソワ感がどうにも落ち着かなかったのを覚えてる。

帰りのホームルーム、担任は顔色ひとつ変えずに子供たちに「算数準備室で食べた人は集まるように」と言い放った。
ちびりそうになりながらガクブルで準備室へ向かう私とH野くん。
「全部食べずに捨てたやつがいる」と担任。
H野くん巻き込んじゃって悪いなぁって思いつつ、私がやりましたとは言い出せず、怖くて下を向いて固まってしまった。どうしよう・・・

「誰だこれをここに捨てたのは?」と神経質に黒板を退けながら詰め寄る担任Y田。
下を向いてる私の横で、H野くんが手を挙げた。
え?なんで?と驚く私。
見ると、私が捨てたぜんざいの上にH野くんが最後まで睨めっこしてたなますが捨ててあった。当時、なぜかぜんざいにはなますが必ずくっついて出てきてた。
(そういえばぜんざいとなますとパンがセットだったような?)
私はぜんざい、H野くんはなますが食べられなくてこんなことに。

H野くんをめちゃギレで怒ってる担任を見たら尚更私「も」やりましたと言い出せなかった。
H野くんごめん・・・・涙

説教のあと解放された私たちは、今までほとんど話したことないクラスメートだったけど、なぜかその日はどっちからともなく待ち合わせて一緒に帰った。怖くて縮こまってた筋肉が、一緒に歩き出して学校から離れるごとにゆるまっていくのを感じた。

家までの帰り道、くすんだオレンジ色の9つ星のてんとう虫がたくさんいる草むらがあって(今思うと害虫でてんとう虫じゃないかも?)、ここにてんとう虫たくさんいるよねみたいな話をH野くんにしてたら、その時に限って、珍しく7つ星の綺麗な赤い色のてんとう虫がいた。7つ星はレアキャラだったので、わーついてるな〜って思った記憶。

その日だけH野くんと一緒に帰って、バイバイして、結局私は最後まで謝れなかったんだけど、H野くんが私を責めることはなかった。
今も7つ星のてんとう虫を見ると耳の大きな優しかったH野くんを思い出す。
「一緒に謝れなくてごめんね」、言えなかったんだけど、なんかいい思い出。

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