うらみつらみがとまらない
父が異国で突然手術をした。
定年間近の54歳でタイへ赴任し、2021年帰任の予定だったが本人と会社の意向で絶賛延長中だ。
母から知らせが来たのは手術直前。
母もあまりなにごとか理解できていなかったようで、ラインには一言。
「脳に血が溜まったとかでこのあと緊急手術するみたい」
恐らく職場でなにかが起きて、母に知らせが行ったのもギリギリだったのだろう。もしくは母のことなので連絡に気づいていなかったか。
すぐに父に連絡を入れたが手術開始15分前。
とにかく無事であってほしい、きっと全身麻酔だろうな、もしなにかあったらどうしようとか余計なことを考えてしまいその日はあまり眠れなかった。
父は病院が大嫌いだ。注射が嫌いとか痛いのが嫌とかではなく、ただただ病院にかかる時間が惜しいとかなんとかいつも言う。
つまり、父が病院に行く時というのは毎回大学病院レベルの場所で診察が必要な事案が起きていたのだ。
病院で3時間も4時間も待つことや、入院させられて何日も自分の時間を奪われるのは受け入れられないというのが毎回の父の言い分。
肩を痛めて手術が必要と言われた時も無視をし、酔って転んで顔の骨を折った時も先生に文句を行って退院を繰り上げた。
昔、頭が痛いと何日も言うから母が病院に行けというのにそれを散々無視したあと高熱が出てしまった。頭に何かの菌が入ったとかでそれはそれは大変だった。
その父が手術をする。
「こんなんほっときゃ治るわ」とか言っていつも先生の言うことを無視する父が、緊急手術をするといって大人しく従ったのだ。
送ったラインに既読がついたのは翌朝。
いつもならすぐに返信をくれる父なのになかなか返信はこず、やっと連絡がついたのは手術からまるっと24時間後だった。
脳に血が溜まり歩行障害を起こして転んでしまった。自分では普通の速度で歩いているつもりが早歩きになってしまい脳と体が疎通せずバグが起きた、と。
さすがにヤバいと思い自ら病院へ出向いたら即手術となったらしい。
父の声が聞けてとにかく安心した。
しかし
緊急手術、歩行障害、脳に血が溜まった
この3つはワタシにとってかなりのパワーワードだった。
【父がいなくなるかもしれない。】
34年生きて来て味わう初めての感情に電話が終わってから数分泣いた。
例え血縁関係のない親子でも、過ごした時間がものを言うのかと思い知った瞬間。
だってワタシ、もう人生の半分以上を父の子として過ごしてる。
こんな事態になって、父がワタシの父だとやっとちゃんと実感した。
親とは本当に身勝手な生き物だ。
頼んでもないのに生んでくれて、そのくせ「早く親を安心させろ」だの言い放ち、しまいには置いていく。(ワタシにハプニングがない限り)
ワタシの場合はここに自分を押し殺して生きた時間も追加される。
本当、なんなの?って感じ。
なのにいざ弱る父を感じるとこんな思いになってしまう。
本当に本当に腹が立つくらい勝手な生き物だ。
だからワタシは子供を生まない選択をした。
自分の子供にこんな苦くて複雑な思いはさせたくないのだ。
12歳のワタシがした人生最大の失敗と挫折
苦い思いをしながら過ごした10代
歪な形をしたワタシと父・ワタシと母の関係
昔を思い出すとこんなのばっかりだ。
自分の選択を誤ったせいというのは大前提として、普通の家の子なら味わわなくていい思いばかりさせられてきた。
なのに涙が止まらない。
ワタシはこの両親といると苦い思いしかさせられないのか?
そう思うと余計にあの日に帰って人生やり直したくなる。
やっと自分のペースで生きられるようになって来たのに本当なんなの。
あんた達、ワタシにいらん感情を引き出させる天才かよ。
もうなんでもいいけどとにかく無事で、これからも健康に不健康な暮らしをしてくれればそれでいい。
親とは本当に身勝手な生き物だ。